
オープンAIの直接決済システム「インスタント・チェックアウト(Instant Checkout)」(左)から速攻撤退し、自社AIアシスタント「スパーキー(Sparky)」による決済管理(右)へと「したたかな方向転換」を遂げたウォルマート。
ウォルマートがOpenAIの直接決済から撤退 自社AIシステムへ方向転換

オープンAIの直接決済システム「インスタント・チェックアウト(Instant Checkout)」(左)から速攻撤退し、自社AIアシスタント「スパーキー(Sparky)」による決済管理(右)へと「したたかな方向転換」を遂げたウォルマート。

鳴り物入りで始まったチャットGPT(ChatGPT)内での直接決済
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2025年10月、ウォルマートはオープンAIと提携し、画期的な取り組みを発表した。
チャットGPTの画面内で直接買い物と決済が完了する「インスタント・チェックアウト(Instant Checkout)」と呼ばれる機能である。
ブラウザのタブを切り替えたり、別のサイトへリダイレクトされたりすることなく買い物が完結するため、次世代のEコマースの形として大いに期待を集めた。
コンバージョン率は3分の1という手痛い失敗
なんと、この野心的な試みはわずか5ヶ月で頓挫することになる。ウォルマートは先週、この機能からの撤退を明らかにしたのだ。
チャットGPT(ChatGPT)内で直接販売された商品のコンバージョン率が、ウォルマートの自社サイトへ遷移させる場合に比べて3分の1という低水準に留まったからだ。
失敗の最大の原因は、そのシステム構造にあった。
オープンAIは、提携する小売業者のウェブサイトを外部から巡回し、画面の表面上に表示されている商品データをプログラムで自動的にかき集めていた。いわゆる「スクレイピング(Scraping)」だ。
そのため、システムの裏側にある正確な在庫状況や、時々刻々と変わる配送時間をリアルタイムで把握することができなかった。
さらに致命的だったのは、複数の商品をまとめて決済できず、既存のウォルマートのカートと同期する機能が欠けていたことである。
買い物客は「商品を一つずつ個別に買わされ、別々に5つの箱が届いてしまうのではないか」と恐れ、この不便な決済体験を避けたのである。
ウォルマートの逆襲!自社AIスパーキー(Sparky)の埋め込みへ
この失敗を受けてウォルマートは早速、方針転換を見せた。
オープンAIの決済インフラを使うのをやめ、自社のAIショッピングアシスタントであるスパーキー(Sparky)をチャットGPTやグーグルのジェミニの内部に直接埋め込むという強硬手段に出たのだ。
この新たな仕組みでは、チャットGPTの画面内でウォルマートの自社AIが起動し、ウォルマートのウェブサイトやアプリのカートと完全に同期される。
つまり、プラットフォームの集客力を利用しながらも、決済を含むショッピング体験の主導権と貴重な顧客データは、ウォルマートがしっかりと握り続けるのである。
この戦略の初期テスト結果は非常に良好だ。スパーキーを利用してチャットGPT経由でアクセスしたユーザーの購入完了率は、ウォルマートの自社サイトに直接訪れたユーザーの約70%に達している。
さらに驚くべきことに、現在**チャットGPTは検索エンジンの2倍のペースでウォルマートに新規顧客をもたらしており、スパーキー利用者の注文単価は他の買い物客よりも約35%高いというデータも出ている。
ウォルマートのグローバル広告事業は前年比46%増の64億ドル(約9600億円)に達しており、カート単価の向上はこうした広告ビジネスの成長にも直結する。
主導権を握るウォルマート、対照的なアマゾン
この「AIプラットフォームの流通網を借りつつ、顧客との直接的な関係とトランザクションは自社で囲い込む」という動きは、小売業界全体のトレンドになりつつある。
ターゲットやインスタカートも同様に、チャットGPT内に自社の専用アプリを組み込む方向へ動いている。
一方で、最大手のアマゾンは全く異なる戦略をとっている。
アマゾンは自社の検索機能や広告ビジネスの圧倒的優位性を守るため、外部のAIプラットフォームとの連携を拒絶し、パープレキシティ(Perplexity)などのAIエージェントによる自社サイトへのアクセスをブロックしているのだ。
Eコマース市場を独占するアマゾンはAIエージェントをブロックする余裕があるが、それを追う立場の企業にその選択肢はない。
昨年12月にナスダックに移行したウォルマートは、もはや単なる巨大な老舗小売チェーンではない。シリコンバレーのスタートアップのように「早く失敗し、より早く学ぶ(Fail fast, learn faster)」を恐るべきスピードで実践しているのだ。
AIを単なる決済ツールから「最強の集客・商品発見チャネル」へと再定義したこのしたたかな戦略は、今後のアメリカ小売業におけるAI活用の新たなスタンダードとなるに違いない。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です!
ウォルマートとオープンAIが始めたチャットGPT内での直接決済機能が、コンバージョン率の低迷によりわずか数ヶ月で頓挫しました。
表面的なデータ取得による在庫の不一致や、既存カートとの連携欠如が致命傷となったのです。
しかし、ウォルマートはここからが見事でした。決済インフラをオープンAIに任せるのをやめ、自社のAIアシスタント「スパーキー」をチャットGPTの内部に直接埋め込む戦略へ大転換したのです。
人の集まる巨大なテーマパークに、自前の精鋭スタッフを揃えた特設ブースを丸ごと送り込む陣形です。
プラットフォームの圧倒的な集客力はちゃっかり借りつつ、レジ打ち!?と貴重な顧客データは絶対に相手に渡しません。
最強のライバルであるアマゾンが外部AIを全力でブロックして「鎖国」を貫く中、ウォルマートは相手の懐に飛び込む「開国」で新規顧客を稼いでいます。
このしたたかすぎる動きに、今頃オープンAIの担当者は「こんなはずじゃなかった…」と自社のチャットGPTに愚痴をこぼして慰めてもらっているかもしれませんね(笑)。
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