【2016春夏東コレ総括①】初参加ブランドが続々、次代を担う若手が台頭

◆tenbo(テンボ)

平和への願いを込めて、終戦の年を示す「1945」をテーマに選んだ「tenbo(テンボ)」は「ピープルデザイン」を掲げるブランド。「みんなが分け隔てなくオシャレを楽しめる服」「年齢、国籍、性別を問わず、全ての人が笑顔になれる服」を目指していて、ランウェイには車椅子に乗ったモデルが何人も登場。会場には乙武洋匡氏も姿を見せた。磁石で留めるボタンや、点字をモチーフにした柄などを、鶴田能史デザイナーが提案している。ダイバーシティ(多様性)をファッションのフィールドで実現する試みとして、「tenbo」の取り組みは広く関心を集める。ランウェイにはルー大柴氏も登場した。

機能面の磨き上げには、実際に不自由を感じる人たちの声が生かされていて、目配りが細やかだ。たとえば、車椅子に乗った男性モデルがはいていたパンツのポケットは、一般的な位置よりずっと低い膝下あたりに付けられている。車椅子に座った状態でも出し入れしやすいからだ。ショーではこのポケットからiPhoneを取り出して話す演出もあった。エシカル(倫理的)ファッションが支持を受ける中、従来のファッションが置き去りにしてきた課題に向き合う動きも広がりつつある。

>>tenbo 2016年春夏コレクション 全ルック

◆TSUKASA MIKAMI(ツカサ ミカミ)

電通の営業担当から転じた三上司デザイナーの「TSUKASA MIKAMI(ツカサ ミカミ)」も東コレに加わった。「新しい日常着。」をコンセプトに、2014年秋に立ち上げたばかりのまだ若いブランドだ。渋谷と青山のギャラリースペースを会場に、プレゼンテーション(展示会)形式でコレクションを発表した。来場者にはNY流にスパークリングワインも振る舞われるという、小粋な演出で新作が披露された。

立ち上げ当時はシャツ主体のブランドだったが、1年を経てラインが広がってきた。シャツのほかに、総花柄のワンピースや、ケープ風の羽織り物などを発表。フロントの裾丈が短い前上がりのトップスや、たすき掛け状のワンピースといった、ダイナミックなフォルムも登場した。真っ赤な花が燃え上がるかのような柄がプリントされたスカート・セットアップには、戦後70年の節目に抱く、広島県生まれのデザイナーならではの思いがうかがえた。

>>TSUKASA MIKAMI 2016年春夏コレクション 全ルック

◆Higa(ヒガ)

沖縄発のブランド「Higa(ヒガ)」が東コレデビューを飾った。東コレのグローバル発信力が高まるにつれ、首都圏以外の地域からも東コレに参加する動きが出てきた。旧ブランド名「COVER」を改め、比嘉一成デザイナーの名前に由来する新ブランドとしてリスタートした。ランウェイをダークブルーに染め上げたのは、沖縄伝統の琉球藍染め。少し黒みがかった、深瀬のマリンブルーを写し取ったような深い青がミステリアスなムードを全体にまとわせていた。

主役のワンピースはシンプルなカッティングが藍色の深みを引き出し、ボディーラインをすっきり見せている。涼やかな青から藍色、群青、そしてほとんど黒に近いブルーまで、青のバリエーションを示した。ジャケットはウエストシェイプしたテイラードや、バイカー風、ミリタリーライクなど、様々な形を提案。琉球ガラスを思わせる民俗的な印象のネックレスが着姿に透明感とリズムを添えていた。

>>Higa 2016年春夏コレクション 全ルック

◆ACE CREATION(エースクリエーション)

2シーズン目となった「ACE CREATION(エースクリエーション)」の澤柳直志と糀泰佑の両デザイナーはクチュールをコンセプトに掲げながら、ドレス一辺倒ではなく、普段使いしやすそうなジャケットやパンツをそろえた。本格的なドレスは点数を絞り込んで、日常的に着られる「デイリークチュール」に接近。やりすぎない装飾にとどめたシンプルなシルエットだが、カッティングや素材には目配りが行き届いていた。

ブルーをキーカラーに据えて、涼やかでノーブルな装いに整えた。異なるトーンの青を重ねたり、透ける生地でレイヤードを組み立てた。トレンチコートは軽やかに仕立てサマールックに溶け込ませ、ティアード(段々)風のパンツ・セットアップで動きを演出していた。

>>ACE CREATION 2016年春夏コレクション 全ルック

◆YOSHIKIMONO(ヨシキモノ)

ロックバンド「X JAPAN」のリーダー、YOSHIKIがプロデュースする着物ブランド「YOSHIKIMONO(ヨシキモノ)」が東コレでデビューした。ショーが始まって、着物姿のモデルが登場すると、そのうちの1人がランウェイ中央に置かれたグランドピアノに歩み寄った。それがYOSHIKI。以後はピアノの生演奏をバックにショーが進んだ。ショーが終わってYOSHIKIは「僕は呉服屋の生まれ。日常的に着物があった」「日本の文化って素敵だと、外国に住んで再発見した」と語った。

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ランウェイ中央でピアノを演奏したYOSHIKI

伝統的な着物の枠組みにとらわれず、ミニ丈や網タイツ、サイハイ・ブーツなどと組み合わせたロックと着物の融合スタイルを提案。巨大かんざしやチョーカー風ネックレスにもパンキッシュな風情を宿した。肩をはだけてランジェリーをのぞかせたり、レオパード柄をあしらったりといった、セクシーでグラマラスなアレンジが光った。着替えが難しい着物でありながら、約40ルックを披露。本人が「実験」と謙遜する以上の完成度で、東コレを締めくくった。

xYOSHIKIMONO_2016ss_067-.jpgYOSHIKIMONO ショーのフィナーレ

>>YOSHIKIMONO コレクション全ルック

過去10年ほどのうちにブランドを立ち上げた若手・中堅のクリエーションは次代を担うパワーを感じさせた。トレンドフォローに終わらない、固有の「軸」を意識した取り組みも興味深く映った。国外からの参加がここ数シーズン、話題を集めてきたが、国内の若い才能が相次いでデビューしたことは、発表の舞台としての東コレ自体の価値と存在感があらためて認知されてきたことも示しているようだ。

(文:ファッションジャーナリスト 宮田理江

宮田理江 - ファッションジャーナリスト -

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 複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスを経験後、ファッションジャーナリストへ。新聞や雑誌、テレビなど数々のメディアでコレクションのリポート、トレンドの解説などを手掛ける。コメント提供や記事執筆のほかに、企業・商品ブランディング、広告、イベント出演、セミナーなどを幅広くこなす。著書にファッション指南書『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』がある(共に学研)。  http://fashionbible.cocolog-nifty.com/blog/

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