
Image by: LES SIX
川西遼平率いる「レシス(LES SIX)」が、新宿・歌舞伎町の王城ビルを舞台に2025年秋冬コレクションをランウェイショー形式で発表した。
コレクションのタイトルは、“全能の神キリスト”を意味する「パントクラトール(PANTOKRATOR)」。全体としてミリタリーやバイカー、スケーター、グランジ、ワークウェアなど、アメリカのファッションを象徴するオーセンティックなスタイルやアイテムをベースに、ルーズでオーバーサイズなシルエットや、クロップド丈のトップスやパンツ、ダーティーなウォッシュ加工、シャツやアウターが片側の腰や肩に纏わりついたようなデザインなど、多様な捻りやアレンジを加えることで現代的に昇華した。
なかでも特徴的なのは、コレクション全体に柄やディテール、アクセサリーとして散りばめられた、アメリカンフラッグやキリスト教にまつわるモチーフの数々だ。星条旗は首元のバンダナやベルトのバックルとして、キリスト教モチーフはロザリオや十字架のチャーム、イエス・キリストの肖像画プリントなどとして取り入れられ、デニムやスーベニアジャケット、フーディー、チェック柄のネルシャツ、カモフラージュ柄のカーゴパンツといった“ザ・アメリカ”なアイテムと組み合わされた様は、一見愛国的な印象を与える。
しかし、ショー終了後に川西が語った「現代のアメリカの現状に対する一つのアンサーを表現した」という言葉と、発表されたステートメントの最後にひっそりと綴られた英語でのメッセージを読んだ時、その意味が変貌し始めた。
“僕らが生きている醜い世界について正直になろう。僕らがいかに物事を捻じ曲げてきたか、いかに汚れたものや腐ったものを美しく見せてきたかを訴えよう。それが真実なのだから。そして、もしかしたら、声を大にして言うことが、それを変える第一歩なのかもしれない”(編集部訳)
川西の言葉を念頭に置いて改めてコレクションを眺めてみると、そこには不穏で混沌とした、大きな矛盾を孕んだアメリカの在り様が浮かび上がってくる。クラシックなテーラードセットアップの上から無理矢理重ねられたボロボロでシミの目立つTシャツや、ミリタリーウェアに合わされた「アイアンクロス」のモチーフ、「HOW TO GET RICH FOR ISRAEL」とプリントされたスウェットを着たホームレス風の白髪の老人の姿などからは、アメリカが過去から現在に至るまで関わってきた戦争とその向き合い方が想起される。
テーラードジャケットの内側から不自然に飛び出し捩れたシャツは、“偉大なアメリカ”という美しい理想や建前と、実際に行ってきたこととの間にある、矛盾やねじれを表しているようにも見える。そう捉えた時、“全能の神キリスト”を意味するコレクションタイトルに川西が込めた、皮肉的なメッセージが伝わってくる。
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