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「ミキオサカベ」が観客に問いかける、“全体”としてのファッションがもたらす新たな視点

IMAGE by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)

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「ミキオサカベ」が観客に問いかける、“全体”としてのファッションがもたらす新たな視点

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 ファッションデザイナーやファッションブランドには、いくつかのタイプが存在する。例えば、新たな流行を生み出すもの、独自の世界観を打ち出すもの、プロダクトとしての機能性や品質を追求するもの、顧客の要望や需要に寄り添うもの、大衆に向けて「売る」ことを目指すもの。その中で、「ミキオサカベ(MIKIOSAKABE)」とそれを手掛けるデザイナー坂部三樹郎の立ち位置は、少し特殊であるように思える。坂部は、“ファッション”という常に多くの人の目を惹きつけ、全ての人の身体や日常に関わりのあるプロダクトやフィールドを通して表現し、それが人々や社会にどう作用するのかということを常に実験している——ファッションというものの本質を、ファッションショーというものの本質を抉るように。

 これまでも、「流動的なファッションに固定的なプロダクトを融合させる」「アイテム単体ではなく全体性に着目する」「肩やウエストから背中へとデザインの重点を移動させる」「シューズを起点に全身をデザインする」など、毎シーズン独自の視点やアプローチを探求してきた坂部が2024年秋冬コレクションでテーマとして提示したのは、「ファッションと物語性」だった。

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 ここで言う「物語性」とは、元々神様や土着的なものと人間との関係から生まれたという民族衣装などをはじめとした、「個人の思い出や心とファッションとの関係性」を表すような物語のことを指す。2024年秋冬コレクションでは、「白無垢」や「産着」といった神社や神道にゆかりのある神聖な装束を連想させるような、純白のジャケットやドレスのルックが豊富に登場したほか、1970〜80年代の不良少女たちの間で流行した「スケバン」スタイルなど、今の時代というよりは、日本という土地の歴史や文化をより長いスパンで見たときの記憶や思い出を取り入れているように見えた。

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 近年のファッショントレンドとして長らく「ストリート」や「ミニマル」が台頭してきた中で、ここ数シーズンは「プロダクト」自体のクオリティや機能性、価値といった部分に興味があったという坂部。しかし、今再び90年代のマルタン・マルジェラ(Martin Margiela)による「ディコンストラクション」をはじめ、「物語性」や「装飾性」などが少しずつ回帰している流れを感じたといい、「今はファッションにおける物語性というものが、新たに生まれ変わるきっかけになる時期なのかもしれない。物語性を取り入れることで、ファッションに対してまた違う角度から愛着が湧くのではないかと思った」と語る。

 デザイン面では、過剰な丈やボリュームをはじめ、シャツやジャケット、パンツといったアイテムが、通常の着方とは全く異なる形で装飾として用いられているドレスやパンツ、内側が半分表に出たようなデザインのバッグなど、敢えて「人間の身体にぴったり合わないもの」を取り入れることで、違和感を生み出すことを意識したという。

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 今回坂部がもう一つ重点を置いたのは、ルックやショーの「全体性」だ。今回のコレクションでは、ほぼ全ルックで統一された、目元が全く見えないほど長く大きくせり出した幽霊のようにもスケバンのようにも見える前髪や、まるでミラーボールのように顔面に塗りたくられたラメなど、「顔」の演出が非常に特徴的だった。坂部は、「目元まで隠すことによってモデルの“顔”という個性を消し、顔ではなく身体全体に目が行くようにしたかった」とその意図を説明する。時代が変わればおしゃれとされていたアイテムが変わるファッションの流動性を、着る人や空間でおしゃれかどうかが左右されるファッションを成立させる関係性という本質を捉えるためには、プロダクトのクオリティだけで評価する近視眼ではなく、全体感で見る必要があると考えたのではないか。そのため「東京クリエイティブサロン2024」の支援のもと、だだっ広い代々木第一体育館を舞台にした背景には、観客に遠くから俯瞰してショーを見て欲しいという想いがあったのだと思う。

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 今回のショーには、事前募集で募った一般客も多数来場。開演前の会場外には、平日の夜にもかかわらず大勢の若者たちが行列を作り、坂部が手掛けるフットウェアブランド「grounds」のスニーカーを履くファンの姿も多く見受けられた。このように通常ではあまりない規模感でのショー開催となったため、観客はスタンド席からアリーナを縦に走るランウェイを肉眼で遠目に見つつ、前方頭上のスクリーンを通してディテールを見るという鑑賞スタイルとなった。

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