【トップ対談】三越伊勢丹HD 大西洋×ビームス 設楽洋「新しいカルチャーを生み出す」

三越伊勢丹ホールディングス大西洋とビームス設楽洋 Photo by: FASHIONSNAP

 旨いビールには"コクとキレ"がある。三越伊勢丹がコクだとすれば、ビームスはキレ。そう語り合うのは両社の代表を務める、大西洋氏と設楽洋氏だ。それぞれ日本を代表する企業のトップだが、顔を合わせれば軽快な会話が飛び出してくる旧知の仲。新宿にある「ビームス ジャパン」地下で行われたトップ対談は、互いの印象から初の協業プロジェクト、そしてファッションの未来まで多岐にわたり、笑いを交えながら和やかに進んだ。

・三越伊勢丹ホールディングスとビームスがコラボレーション
「日本のいいもの、いいことを通して地域活性に貢献する」という両社の理念が共鳴し、日本各地のポップな文化を再発見し国内外に発信する新プロジェクト「STAND FORTY SEVEN(スタンド フォーティセブン)」が立ち上がった。12月末〜1月のプレイベント「大縁起物市」に続き、3月に本格スタートを切る。

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■百貨店とセレクトショップの出会い

FASHIONSNAP(以下、F):まずはおふたりについてですが、お名前の読み方は違いますが同じ「洋」なんですね。

三越伊勢丹ホールディングス 大西洋(以下、大西)・ビームス 設楽洋(以下、設楽):そうなんですよ(笑)。

F:交流は以前からありましたか?

大西:伊勢丹の入社時から紳士服を担当していたのですが、当時からメンズファッションといえばビームスで、特に設楽さんをはじめとするトップの方々は、我々からすると雲の上の人。簡単にはお会いできませんでしたね。

設楽:いやいやそんな(笑)。大西さんこそ、僕にとってこの業界の尊敬できる経営者です。就職活動の時に実は電通と伊勢丹しか受けなかったんですよね。新宿生まれの新宿育ちなので、小さい頃から何かというと伊勢丹に来ていて、買い物したり屋上で遊んだり、楽しくてしようがなかった。それくらい伊勢丹が好きでした。

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F:設楽さんが電通に就職していなかったら、同じ職場でトップの座を争ったという可能性も・・・

設楽:それはないですよ(笑)。でも今こうして三越伊勢丹グループのトップを務められている大西さんと協業について話せるのは、とても嬉しいですね。

大西:ビームスと最初の関わりは30年ほど前で、伊勢丹吉祥寺店(2010年3月に閉店)にどうしても出店していただきたくて、お声がけさせてもらったことです。当時は百貨店にセレクトショップが入店するという概念がなかったのですが。残念ながら叶いませんでした。

F:それほどビームスにこだわったのはなぜだったのでしょう。

大西:ビームスは我々からすると憧れの企業であり業態です。小売業に多様性がなかった時代にセレクトショップとして先進的な業態を作ったことはすごい。「ファッションの伊勢丹」といっても、やはり百貨店なので薄く広くにならざるを得ない部分があります。ある意味でビームスは専門性も高く、我々が目指していた形でもありましたから。

■匠からオタクまで

F:今日は新宿「ビームス ジャパン」の地下階にある日光金谷ホテル クラフトグリルで収録していますが、この館は他のビームス店舗とはだいぶ趣が異なりますよね。設楽さんはなぜ新宿に、丸ごと「日本」がテーマのビームスを作ったのでしょうか。

設楽:新宿は"日本"が凝縮されている一番面白い街で、未来の形を提案するにはここしかないと思ったんです。銀座や青山のようにファッショナブルな街ではないですが、「人種のるつぼ」というのが魅かれますね。すごくオシャレな方もいれば、官僚の方も、LGBTの方も、ちょっと怖い方も、ホームレスの方もいる。こういった場でカルチャーを表現して勝負できたら「本物」だと思っていて。"匠からオタクまで"をコンセプトに、日本の未来の姿をここに描きたいと感じました。

大西:エリアで考えると渋谷はすごい勢いで変わっていますから、多様性があると言われている新宿も色々なものを取り入れて、ある意味で渋谷と戦っていかないといけない。そういう時に「ビームス ジャパン」のようなお店の存在は意味が大きいと思います。当社や街を含めてイベントなどで連動していけたらと考えています。

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F:伊勢丹とビームスは徒歩数分の圏内なので、競合同士に見られることは?

大西:扱いが違いますから、良い意味で競合ではありませんね。

設楽:良い形でお客様が分かれていますからね。でも百貨店は、昔から今も変わらず流通の王様。ビームスがサブカルチャーだとすると、伊勢丹は王道というだけではない"とんがり"の部分も持っているように感じます。

F:では、おふたりはライバルではない。で、大丈夫ですよね?(笑)。

設楽:それはもう全然違います(笑)。ライバルというより、いつも気になっている男女関係のような(笑)。

F:今回の新プロジェクトでカップルが成立したんですね。

■新しいカルチャーを生み出せる時代

F:協業プロジェクトの「STAND FORTY SEVEN」はどういったきっかけから始まったのでしょうか。

大西:数年前から設楽さんとお会いすると「何か一緒にやりましょう」という話は常にあったんです。でも、今の時代にビームスの店舗をそのまま当社に入れるだけでは面白くないし、何かいい形ができないかと模索していました。

設楽:今回はビームスの方から大西さんにお声がけして「日本をもっと楽しくするプロジェクト」というアイデアや企画を快諾していただきました。

F:百貨店とセレクトショップのトップ企業同士が一緒になるということで、業界に驚きを与えたかと思います。

大西:これまでになかった概念で新しいことに踏み出せば、新しいカルチャーを生み出せる時代です。我々も次のステップへと進化しなくてはいけないので、今回とても良いタイミングで良いお話を頂いたと思っています。

設楽:時代が「変化」の方向に動いていますよね。日本の都市や、社会や、世界情勢も。今回は「日本を世界に」という共通の思いがありました。伊勢丹は日本の文化や物を発信する「ジャパン センスィズ」の取り組みを続けていて、ビームスもまた違った形でその思いを強くしています。お互いに独自で変えていこうとしても、できないこともありますから。

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