原宿・新宿から消えた?ロリータは今どこにいるのか

 ロリータとヤンキーという組み合わせの妙から生まれるストーリーで高い評判を得た「下妻物語」。当時はまだマイナーだったロリータファッションをメジャーな存在にし、社会現象を巻き起こした。公開から12年が経ち、気がつけば"聖地"とされる原宿や新宿でロリータファッションを目にする機会はほとんどなくなった。彼女たちは今どこにいるのか?

たむろする場所がなくなった

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 取材を始めるに当たってまず最初に訪れたのが新宿マルイ アネックス。もともとは聖地とも言われた「マルイヤング新宿(通称:ヤング館)」に多く集まっていたブランドが新宿マルイ ワン5〜8階に移動し、マルイ ワンの閉館に伴い移ってきた場所だ。ヤング館当時は、入り口付近でロリータ、ゴスロリファッションに身を包んだファンが交流を深めるのを見かけることも多かったが、近年はその光景もあまり見られなくなっている。同じく聖地としてあげられる「ラフォーレ原宿」も同様の状況。ラフォーレ原宿は、近年を「店舗数という意味では入れ替わりはありながら横ばいだと思う」が新興ブランドが誕生していない傾向もあるという。

 新宿、原宿で見かける機会が少なくなった理由として、多くの人が挙げるのが「たむろする場所の消滅」。ラフォーレ前にあった原宿GAPのような踊り場がなくなり、なんとなく座ってお喋りする場所が減ってしまったことが影響しているという。また、表参道のように全体的にシックな服にトレンドがシフトするにつれて、前のように様々なジャンルトレンドと混ざり合う「若者の街」から「大人の街」への変貌も彼女たちの足を遠ざけてしまった理由のひとつだろう。

 月に1度お茶会dolly girlsを主催するLadyさんは、ロリータ友達が欲しかったのがきっかけでお茶会を企画したという。「初めは携帯サイトでサークルがあったのでそこの掲示板を通して話していて、そのうちお茶会をすることになりました。最初はこのスタイルではなく、街中ショッピングみたいな"遊ぶ"という感じで集まっていました」。回数を重ねるにつれて、次第にショッピングからカフェでお喋りが中心になり現在は10数人集まるようになったという。今では食事会がメジャーになっていると語る。気をつけているのは安心感。そのため男性の参加には気をつけているという。「ロリータは男性に対して苦手意識の強い人が多い。だから私の友達の紹介や2回以上参加したことのある方の紹介でしか男性は参加できないようにしています」。

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 お茶会に参加していた絢人さん(仮名)に原宿に行くかと聞くと、「原宿に行くというよりは、"このカフェに集合"みたいな感じですね。年齢層も上がっていて収入も増えているので、ちょっと良いカフェやホテルで集合する人が増えていると思います。みんなそこに直行で行っちゃうことが多いですね」と答えてくれた。また、一緒にいたマナティさん(仮名)は「原宿はまず混んでいる。外国人がすごいし、私たちを撮るのはいいんですけど、無断で撮られるのがちょっと嫌ですね。あと1人に『いいですよ』って答えちゃうとみんなが撮りはじめるから、通行の迷惑にもなるし」と教えてくれた。

主役が海外にシフト

 ファッション誌「ケラ!(KERA)」などで活躍し、日本ロリータ協会会長を務める青木美沙子さんは、国内のロリータファッション人口が圧倒的に減ったと語る。

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 近年は109ブランドなど様々なブランドがロリータ要素がある商品を展開しているため、その上(ロリータファッション)まで行かずともそこで満足してしまうことが多いと分析する。またトータルで10万円はするなど、高額なところもネック。安価な価格にすると目に見えてクオリティが下がるため、ビジネスとしても難しい舵取りを迫られているブランドも多いという。カルト的な人気を博した「エイチナオト(h.NAOTO)」の全店閉鎖についても「すごくショックでした。ゴスロリブランドの中でも代表格。私も一緒にお仕事をさせていただいたことがあるだけにとても残念でした」と語る。

 ただラフォーレ原宿では「B1.5Fの今年4月〜9月は昨年同期比約120%」とロリータファッションのビジネスは伸びているという。主役は訪日外国人。青木さんも国外ロリータ層の増加を感じているといい、「中国やアメリカの方が活発な気がする。特に中国の人の爆買いは顕著で、ゴシックではなくロリータ服のほうが人気です」と語る。これまでの「日本で買って日本で着る」から「日本で買って日本以外で着る」という流れにシフトしだしている。また最近では、各国で多数ブランドが生まれており、カルチャーとして根付き始めているという。これからは中国で買ってフランスで着るというジャパンパッシング以外にも、日本のファンが国外にアイテムを買いに行くということもメジャーになるのかもしれない。

非日常から日常への変化

 「下妻物語」で主人公の桃子がのめり込むブランド「ベイビー、ザ スターズ シャインブライト(BABY, THE STARS SHINE BRIGHT)」デザイナーの加納万須美さんはこう語る。「日本国内、海外ではロリータファッションの楽しみ方が異なっているという印象を受けることがございます。日本国内ではかつて、特に『下妻物語』の頃にはグループで楽しむ機会が多く見受けられたと思うのですが、現在では個人個人の楽しみ方が出来るファッションですし、日常化しているものが"普通"であり、"当然"のものという認識があると思います」。つまり、同好の士で非日常性を楽しむものから日常で着る普通の服としてロリータファッションの変化が起きたということだろう。実際、お茶会に来ていたマナティさん(仮名)も「ロリータ7割、それ以外3割くらいなのでロリータが普段着ですね」と語っている。

 ただ日常性を獲得したとはいえ、趣味性が強いロリータを共有したい気持ちは消えない。そんなファンたちが愛用するのがインスタグラムやツイッターなどのSNSだ。ハッシュタグを利用し、日々自身のセルフィーを投稿する人が多くインスタグラムの「#lolitafashion」では約32万件の投稿が行われている。

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 特に驚くのが海外勢の多さだ。そのためか、日本人の投稿でも英語が多く使われており国外のロリータファンとの交流が多く行われている。「ゴスロリカルチャーの拡散が急速に海外に広まっているのは感じております。消費行動と関連しているかわかりませんが、ゴスロリファッションを嗜好する方のオピニオンリーダーにあたる存在は変化をしてきていると思います」とラフォーレ原宿がコメントするように、トレンドを牽引するオピニオン達の誕生がストリートからウェブ上に移ってきているということだろう。


 今回取材をしていてわかったのは、現代のロリータ達が誰かの考えに依存せず自立してファッションを楽しんでいるということだ。加納さんが語っていたように集団から個という変化は確実に起こっており、SNSに上げるためだけに着る人もいれば様々な交流を楽しむ人もいる。ただ、各々が自身の価値観に基づいた表現をしているのを感じた。

「人間は一人なの、一人で生まれて一人で考えて、一人で死んでいくの。人は一人じゃ生きられないなんて、だったら私は人じゃなくていい、ミジンコでいい。寄り添わなきゃ生きられない人間よりもずっとずっと自立してるもの」

 劇中で桃子はこう語る。
 集団から個へとシフトし、自立を選んだロリータ達はどこへ向かうのか。