「人と被りたくない」と思った瞬間に欲しくなる、ヴィンテージファッションの今

 "極めて普通"な没個性的ファッション「ノームコア(normcore)」の反動か、他人と被らないスタイルが支持されはじめている。その究極とも言えるのがヴィンテージファッションだ。近年では古着を取り扱うセレクトショップも増えた。今最も価値のあるヴィンテージと支持されている理由から、1990年代の古着ブームとは異なる傾向が見えてきた。

ヴィンテージ、古着、アンティークの線引き

 「ヴィンテージ」とは何を指し「古着」や「アンティーク」とどのように線引きされているのか。神宮前のクラフト&カルチャーショップ「シー・ピー・シー・エム(CPCM)」、地下1階フロアではヴィンテージデニムのみ展開している原宿の「ベルベルジン(BerBerJin)」、そして欧米やアジア各国で買い付けたウィメンズヴィンテージを中心に扱う「グリモワール(Grimoire)」の3店舗によると、以下の解釈が一般的のようだ。

アンティーク:100年以上前に作られたもの
ヴィンテージ:製造から100年未満のもの
古着(業界では通称レギュラー):誰かが一度着用した90年代以降のもの

 しかしヴィンテージには明確な定義がなく、80年代ものをヴィンテージに含むかどうかが微妙なラインだった。また、時計業界や家具業界、デニム業界など業界によって表現が変わり、例えば「100年以上前のジーンズはアンティークという括りだが、アンティークジーンズという表現はほとんどしない」(ベルベルジン藤原氏)という。

 それでは今、どのようなヴィンテージアイテムが売れているのか。3店舗に聞いた。

スタイルのある大人の男女に人気、アパレルから家具まで

 熊谷隆志氏がディレクションする「CPCM」は、クラフトから家具、メンズ・ウィメンズのアパレル、アクセサリーなど幅広く展開し、リーズナブルなものから100万円超えのヴィンテージアイテムまでそろえている。客層は20代後半〜40代が中心で、芸能人やスタイリストなど感度の高い人が多く訪れているという。

 家具や雑貨、ジュエリーなどは一点物の珍しいアイテム、アパレルでは軍モノや民族物が人気で、全体的に50年代〜70年代のものが売れているという。この時期には新しく生み出されたデザインやスタイルが多く、状態や価格帯などを含めてお勧めだそうだ。トレンドの元ネタになったアイテムを探しに来る客も少なくない。

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 ウィメンズでは、中東アフガニスタンをはじめとする地域で作られたアフガンドレスやバルーチドレス、トレンドのレースを用いたヴィクトリアンドレスやファーコートが人気。年代やメゾンに関係なく、自分のスタイルに合ったものを求める高感度な大人の女性から注目を集めている。

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 メンズ、ウィメンズともに継続的に人気なのはインディアンジュエリー。「CPCM」では、1880年代から1990年代のシンプルで手に取りやすいアイテムから、珍しいデザインや希少性の高い、中には100万円超のアイテムまで都内屈指の品揃えにインディアンジュエリーファンが訪れている。

根強い人気のヴィンテージデニム

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 1998年にオープンした「ベルベルジン」は1階ではレギュラー(古着)、地下1階では数万円〜250万円までのヴィンテージデニムを展開しているが、オープン当初からデニムが売れ続けている。客層は90年代のヴィンテージブーム時に20代だった現在30代後半〜40代の人が中心で、ここ数年でファッションデザイナーの来店が増えているという。しかし「今の若い子たちはヴィンテージにそこまで興味がない」(藤原氏)。その背景として、ヴィンテージを伝える教科書のような存在だった雑誌を始めとするメディアが減り、価値を知る若者が少なくなっていると考える。

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 ここ2〜3年で人気のアイテムはジージャンで、特に「リーバイス(Levi's)」のファーストモデルが売れている。15年前と比べて約3倍の価値がつく。藤原氏によると、近年ではこれまでとは異なるヴィンテージ市場の流れが起きているという。それまでは古着屋が発信したものがストリートで流行し、後にブランドが同じようなアイテムを作って新品が売れるという傾向だったが、ここ10年はブランドが時代性や古着をモチーフにした新作を発表し、翌年その元ネタとなったアイテムが古着屋で売れるといった逆転した流れがあるという。今ジージャンが売れているのは、数年前に真紺のジーパンとジージャンをセットアップで着るファッションを作った「テンダーロイン(TENDERLOIN)」の影響ではないかと話した。

 数あるデニムブランドの中でも絶大な人気が続いているのが「リーバイス」だ。その理由の一つとして「1950年代にTシャツをジーパンにインするスタイルが流行した。それまで股上が浅かったパンツが深くなったことで生まれた新しいファッションだが、それを最初に打ち出したのはマリリン・モンローが履いていたことで知られる『リーバイス』の701モデル。新しいスタイルを作ったブランドは人気が根強い」(藤原氏)という。

ファストファッションから価値のあるものへ

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 ヴィンテージはメンズウエアのイメージが強いが、最近ではウィメンズ向けの店が増えている。福袋が過去10年間で1番売れるなど「ウィメンズは今が一番売れている」というグリモワールの十倍代表は、ヴィンテージの魅力を「他の人と被りたくないと思った瞬間に取り入れたくなる」と話す。価値のあるものが求められる時代に戻りつつあるようだ。

 「グリモワール」の年齢層は20代後半〜30代後半。「圧倒的に若い人の文化だったが、他の人とかぶりたくないから1点モノのヴィンテージを取り入れる大人が増えている」(十倍氏)。「ベルベルジン」と同じくデザイナーが多く訪れ、参考サンプルとして購入していくそうだ。

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 今人気のアイテムは70〜80年代のワンピース。オープン当初は派手で個性的なスタイルが定番で、一時期は100年前のアンティークしか売れない時期もあったが、最近は大人っぽくシンプルに合わせられるアイテムが人気。また、人気のコレクションブランドが年代にフォーカスしたコレクションを発表すると、店でもその年代のアイテムが売れる傾向があるという。

 写真のワンピースは、デザイナーのジェシカ・マクリントック(Jessica McClintock)が1960年代後半から70年代後半に手がけたアメリカのブランド「ガニーサックス(GUNNY SAX)」のもの。70年代のヒッピーカルチャーを代表するブランドで、ブランド名は世界大戦時代に貧しくてドレスを着ることができなかった女性が麻袋を縫ってドレスを作って着ていたという美の現れから「麻袋(gunny sack)」をもじって名付けられた。約10年間のみ続いたブランドだが、今でも世界中にコレクターが存在する。デザイナーのジル・スチュアート(Jill Stuart)もその1人で、初期のデザインは「ガニーサックス」の影響を受けているとも言われている。

ヴィンテージの今

 テイストの異なる3店舗を取材したところ、購入者の年齢層が上がり、またファッションに精通した人がヴィンテージに注目している傾向から、特に若者のヴィンテージに対する捉え方が過去の古着ブームとは異なっていることがわかった。バイブルと呼ばれる雑誌は減ったが、求めている情報は誰でもすぐに得られる時代。歴史背景や"ウンチク"を重視するコレクターだけではなく、人とは違った新しいものを探しにヴィンテージショップに行くという逆転のアプローチで、特に女性客の心を掴んでいるようだ。