Fumitoshi Goto

アップルストアの立役者ロン・ジョンソンが"出張ジーニアスバー"を創業

激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

在米28年のアメリカン流通コンサルタント

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■あのロン・ジョンソン氏が小売業界に戻ってきた。有名デザイナーとのコラボ企画をターゲットで発展させ、スティーブ・ジョブス氏に引き抜かれたアップルではアップルストアを成功させ、JCペニーCEO就任から2年でクビとなったジョンソン氏がEコマース企業を立ち上げたのだ。ジョンソン氏が創業したのは、世界初のパーソナル・コマース・プラットフォームと謳う「エンジョイ(enjoy)」。エンジョイの特徴はオンライン購入した商品を同社の専任スタッフが自宅やオフィスに最短4時間で宅配し、セットアップしながら使い方を教えてくれることだ。約束した日時に届ける宅配は無料で、1時間ほどの設置や接続、使い方の説明も追加料金なしで提供する。商品を購入せず、据え付けやセットアップ作業などサービスのみの場合は1時間当たり99ドルのチャージとなる。修理サービスは行っていない。エンジョイの扱い商品はノートブック・パソコンやタブレット、Bluetoothスピーカー、無線飛行機のドローンなど199ドル以上となる高額電化製品。6,000ドルの電動アシスト自転車や1,500ドルの電動スケートボードもある。今のところサービス地域はサンフランシスコ市とその周辺に限られており、13日からニューヨーク市マンハッタンでも始まる。
アップルストアのサポートカウンター「ジーニアスバー」の出張版、もしくはベストバイのギークスクワッドで店舗を持たないオンラインバージョンともいえるビジネスモデルで、ロン・ジョンソン氏は再び小売業界で名声を取り戻せるものになるだろうか。

トップ画像:ロン・ジョンソン氏が創業したエンジョイ(enjoy)の説明動画。エンジョイのYouTubeチャンネルでは専任スタッフ(現在80人)の紹介ビデオもある。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。ロン・ジョンソン氏が3,000万ドルの出資金を集めてベンチャー企業「エンジョイ(enjoy)」を立ち上げたと昨年秋に報じられていました。プレスリリース等を読みましたが、ビジネスモデルの詳細は明かされていませんでした。明かされた内容を見るとエンジョイは高単価で低購入頻度の電化製品を扱うオンラインストアで、専任スタッフが決められた日時に商品を宅配してセットアップなどの手続きを行い、ユーザーはすぐに使うことができるというものです。使い方などの操作方法も教えてくれるのでEコマース+パーソナルサービスです。ユーザーメリットは、送料無料でサービス料なしで、自分で煩雑なセッティングをせずに手っ取り早く楽しむことができるというものです。提供側のメリットとして、返品を減らせることがあります。返品の多くは「セットアップできない」「面倒」、さらに「使い方がわからない」というものですから。

⇒返品を抑えられるうえ、扱い商品は高単価で低購入頻度に絞っているのでメーカーとの取引でいい条件を引き出せることができます。メーカーと卸値を交渉しやすいのです。オンライン専売なので店舗維持費がかからず、在庫も最少限度に抑えられるのです。ただボトルネックが3つあります。一つ目は認知度の低さ。どのオンラインストアの立ち上げにも共通するのですが、名前を世間に知ってもらうマーケティングが肝要になるのです。広告宣伝費となるマーケティングコストが莫大になります。二つ目は高単価で低購入頻度の電化製品に絞っていることです。「絞っている」というか、現在は34アイテムしかありません。選ぶ楽しさはありません。三つ目のボトルネックは扱い商品が、ユニークな機能を持った「ガジェット」であるということです。例えば無線飛行機のドローンにしても4Kビデオカメラが付いています。2,800ドルのドローンの最高フライト高度は4,500メートル!?(笑)。官邸もびっくりのプロ仕様です。

⇒ガジェット製品を好む人の多くは、いわゆるオタクです。メカ・機械オンチどころか、店員よりも商品知識を持っていたりします。そんな人がネットワーク化などセッティングが煩雑だとは思わないでしょう。まったくの初心者のように使い方を人から教わる必要もないと思います。つまりエンジョイが対象にするマーケットは、オタクではなく初心者で、取扱品目も限定され、富裕層がターゲットになるため、それほど大きくないのです。ただし、エンジョイは、店や倉庫を持たずスタッフの多くは自宅待機、在庫も最小限と、固定費がかからないのが強みとなっています。マーケティングにお金がかかり、お客の自宅にあがるスタッフのトレーニングも必要ですが、コストの大部分が変動費だと筋肉質の財務となり、破綻しにくいのです。一方で名のある競合(アマゾン、グーグル、ベストバイ)が同じことをやり始めたら、そちらにお客を持っていかれる可能性は十分あります。
失敗しても再び挑戦するロン・ジョンソン氏のチャレンジ精神は見習いたいところです。ただ出張ジーニアスバーより、出張ガールズバーが上手くいきそうな気がしますが...

後藤文俊

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