Fumitoshi Goto

イケアのコアビジネスはレストラン?

激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

在米28年のアメリカン流通コンサルタント

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■イケアと言えば何を思い浮かべるだろうか?「北欧風の家具や雑貨」「家具の低価格販売」「広い店内にいくつものモデルルーム」「フラットパックの組み立て式家具」などだろう。だが、アメリカ人にイケアについて聞けば「ミートボール」や「レストラン」を想起する人がふえているのだ。2016年8月期にはイケアのミートボールがアメリカ国内だけでも2.36億個も消費されると見込まれている。イケアのレストラン事業や食品販売の売上総額は世界で16.4億ドルにもなっているのだ。ミートボールやチョコレート、ジャムなどの売上高(329億ドル)は全体の5%となっている。イケアUS社長のラース・ペターソンは最近のインタビューで「食品(Ikea Food)がイケアのコア事業となっている」と述べている。アメリカ国内の既存店・売上高前年比が4.5%の増加だった。一方、食品事業は同8%の増加となっている。特にレストランへの客足が増えている。言い換えれば、食事をするためだけにイケアに来ている人が多くいるのだ。さらにレストランの客数を伸ばすため、イケアは今春、国内41店のレストランを改装することを発表した。イケアは新レストランを食事を行う人のニーズにあうようシーティングエリアを3つのゾーンにわけるのだ。ゾーンには食事を短時間に簡単に済ませたい人のためにカウンターやバーテーブル、バースツールを装備したところ、遊び盛りの子供をもつ家族向けにファミリーフレンドリーなゾーン、そしてスウェーデン語で「フィーカ(Fika)」と呼ばれるエリアでは、クッションを使った椅子やカウチを用意し友達らとコーヒータイムを気軽に楽しめるゾーンになるという。
イケアは昨年4月、野菜で作られたベジーボールに続きチキンボールも発表した。昨年夏には持続可能で責任ある方法で漁獲・養殖されたシーフードの販売も始めている。安心なメニューも増え、シーティングエリアもアップデートされると、イケアをレストランと認知する人がさらに増えるだろう。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。手軽に外食を済ませようとすれば、家族だとマクドナルドよりイケアに行く人も少なくないと思います。安いからです。イケアの12歳以下となるキッズメニューはミートボールからフライドチキン、オーガニックパスタまでどれも2.49ドルです。火曜日は子供二人までキッズメニューが無料です。無料のメンバーシップ会員「イケア・ファミリー(Ikea Family)」に入っているとコーヒーはいつでもゼロ円となります。朝食1ドル、昼食2ドル、夕食3ドルとなるお得なセットメニューもあります。7ドルのスモークサーモンに1ドルのソフトクリームを食べても一人10ドルいかないのです。ご存じの通り、イケアのレストランは集客用のいわばロスリーダーです。原価すれすれ、もしくは赤字であっても家具を数百ドル以上となるソファを買ってもらえればいいわけですね。そういえばイケア・ファミリー会員なら100ドル以上の買い物をするとレストランで支払った金額を引いてくれます。

⇒イケアはお客がレストランに食事に来ても必ずしも買い物しなくてもいいと考えています。いずれイケアで家具を購入するとわかっているからです。何度も食事で来店すれば、繰り返し接すると好印象が高まる「単純接触効果(ザイアンスの法則)」が働くのです。人は行ったことのないお店よりも来なれたお店を選ぶものです。しかもイケアは人間の三大欲求の一つである食欲を満たすのです。食欲を満たし満腹にさせることで、イケアに行けばハッピーになれると無意識に刷り込んでいるのです。イケアは当ブログでもよく紹介する顧客の生涯価値を理解しているのです。顧客の生涯価値とは、お客が生涯を通じて買い物をする総額です。レストランでの食事がロスリーダーであっても、コストは一人数ドル程度でしょう。一方で家具を買い物をすれば1回で100ドル以上の買い物になることは珍しくありません。太っ腹に見せかけながらアメリカ人のお腹を肥大させ、実はしっかり計算して儲けている腹黒なのかもしれません(←ウソウソ)。

⇒日本人にはあまり理解されていないことがあります。それは、それぞれの顧客の生涯価値を足していけば企業の生涯価値になることです。つまり企業価値とは顧客の生涯価値の総和です。したがって、できるだけ長い期間、顧客になってもらい、少しでもいいから買い物をしてもらうことを考えなければならないのです。家具だけ売っていたら来店頻度は低くなります。ソファだけ買って、リピートしないことも多いでしょう。ところでアメリカの返品制度について話すとき顧客の生涯価値について説明するのですが、返品を認めたら返品制度を乱用する人が続出し店を脅かすと誤解する人がいます。少なくともアメリカにおいてはそれはありません。ひとつには自分たちの顧客が誰かを理解し、ポジショニングが明確にしているからです。そしてアメリカ人には「フェア/アンフェア(公平/不公平)」という絶対的な価値基準があるからです。例外的な人を除いて買い物もせず無料コーヒーで1日中イケアのレストランに入り浸る人は多くいません。
イケアUSAの社長が主張するように売上の5%程度でも「イケアのコアビジネスはレストラン」と覚えておきましょう。

後藤文俊

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