Fumitoshi Goto

ウォルマート、アマゾンプライムに対抗するシッピングパスを30日間無料で提供

激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

在米28年のアメリカン流通コンサルタント

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■ウォルマートは29日、注文から2日後に商品が届く会員制の配送サービス「シッピングパス(ShippingPass)」を30日間、無料で提供することを発表した。無料体験を提供することで、競合するアマゾン・プライムに対抗するのが狙いとみられている。ウォルマートのシッピングパスは年会費49ドルを支払うとオンライン上での買い物の配送料が無料となるサービス。商品到着までの所要日数は2日間となっており、最低購入額等の条件はなく無制限で注文が可能だ。無料のお試し体験は7月1日からで、期間は30日間となっている。シッピングパスの無料体験でもクレジットカード登録が必要だが、お試し期間が終了する7月30日までは年会費49ドルを課金しないとしている。また、すでに登録している会員には、会員期間を30日間延長されるという。ウォルマートは昨年5月からシッピングパスを招待制で始めた。当時は年会費が50ドルで所要日数も3日間かかっていた。シッピングパスはいまだ試験段階だが、今年5月には年会費を49ドルに値下げし、所要日数も2日間に短縮している。シッピングパスで購入した商品は、4,500店にも及ぶウォルマートの店舗で返品できるメリットもある。一方、競合するアマゾン・プライムの年会費は99ドルだが、映画やテレビ番組の無料視聴サービスなどの特典も提供している。また、アマゾン・プライム会員向けに都市部を中心とする27ヵ所の対象地域で35ドル以上の注文なら当日に配送される即日サービスがある。さらにアマゾンは注文から最短1時間程度で商品を届ける「プライム・ナウ(Prime Now)」サービスも強化している。プライムナウは現在のところ21ヵ所の地域で展開されており、対象商品は限られるものの2時間以内なら無料、1時間以内なら少額の手数料で商品を配達している(1回の注文金額は35ドル以上)。
ウォルマートが5月に発表した第1四半期(2月~4月期)ではEコマースの売上高前年同期比が7%の増加にとどまった。Eコマースでの扱い品目が1,000万品目を超えたもののウォルマート・コムの成長率は昨年の第1四半期が17%増、第2四半期が16%増、第3四半期10%増、第4四半期8%増となり、成長率は鈍化している。一方、アマゾンの第1四半期の成長率は23%だった。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。後藤は視察研修セミナーで「ウォルマートを視察しても以前のような変化を感じないと思います」と話しています。アメリカ小売業・流通業で現在起こっている変化を地殻変動と喩えています。表面的にお店を見ても、現場で変化を感じないのです。新業態店をテスト出店したり、店内レイアウトやインテリアを刷新したりするような目に見える変化がないのです。アメリカ小売業の変化はお店以外で起こっています。地殻変動は地表での観測は難しい、深い地層で起こっています。同様にアメリカ小売業の変化は、お店では観察が難しいところで起きているのです。例えばウォルマートの「グローサリー・ピックアップ」があります。グローサリー・ピックアップはオンラインから注文し車から降りることなく生鮮品などを持ち帰れるサービスで、急ピッチで拡大しています。国内で40ヵ所近くの地域に展開しているグローサリーピックアップを7月末までにはさらに60ヵ所での展開を予定しているのです。

⇒お客が店内に入ってこないのですから、極端なことを言えば、より売れるようにお店を改装する必要が以前ほどないのです。一方でウォルマートは「出店控えてIT投資」であり、ITへの投資額は世界トップクラスになっています。お客はオンラインでリサーチ・購入しているので、店よりもITに注力しなければならないのです。ITで競合となるのはアマゾンです。特にアマゾン・プライムよりメリットのある買い物を提供しないことには勝ち目がありません。ウォルマートにとってそれがシームレス・ショッピングなんですね。ところで、調査会社コンシューマー・インテリジェンス・リサーチ・パートナーズ(CIRP)がアマゾン・プライムの更新率について興味深い調査結果を発表しました。CIRPによると、昨年末のアマゾン・プライムのアメリカ国内会員数は推定5,400万人としています。つまりアメリカ人の成人のうち5人に一人の割合でプライム会員となっているのですね。

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160701アマゾンプライム更新率推移
アマゾンプライム会員の更新率推移グラフ。30日間のプライム無料体験後に99ドルの年間契約に踏み切る比率は73%にも及び、2年目の更新率は91%、3年目は96%に達している。プライム会員の期間が長ければ長いほど、会員を更新する割合が高くなるのだ。

⇒驚異的なのはプライム会員の更新率で、30日間のプライム無料体験後に99ドルの年間契約に踏み切る比率は73%にも及んでいるのです。そして2年目の更新率は91%で、3年目は96%に達しているのです。プライム会員の期間が長ければ長いほど、会員を更新する割合が高くなるのです。言い換えればアマゾンはプライム会員の囲い込みが成功しているのです。一度、会員になってしまうと、99ドルの元を取るため必然的にアマゾンでの利用が多くなります。アマゾン利用が増えれば増えるほど、気になる商品を見つけたら「とりあえずアマゾン」で検索やリサーチをして、アマゾンのマインドシェアが高まるのです。いつの間にか「買い物はアマゾン」と無意識のうちにマインドコントロールされてしまい、お店があっても素通りしてしまうことになるのですね。大量出店による成長をベースとしたチェーンストア理論がアマゾンの前では破たんするのです。したがってウォルマートが陳腐化したチェーンストア理論から一部に異なった戦略をとっているのです。
ウォルマートのシッピングパスは今後、アマゾンプライムに似た特典を増やしていくはずです。

後藤文俊

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