Fumitoshi Goto

米ターゲットが宅配サービスのシプツを買収、投資回収で競合店の顧客データ利用か

激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

在米28年のアメリカン流通コンサルタント

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■ターゲットは13日、オンデマンド買物代行・宅配サービスのシプツ(shipt)を買収したことを発表した。買収総額は5.5億ドル(約620億円)。ホールフーズを買収したアマゾンや、宅配サービス業者を買収したウォルマート等に対抗するのが狙い。この買収により、ターゲットは2018年初頭から1,800店以上となる全店舗の約半数で、当日宅配サービスを開始する。また、2018年の年末商戦までにほぼすべての店舗で当日配送を可能にするという。アラバマ州バーミンガムに本部を置くシプツはクラウドソーシングを採用したビジネスモデルだ。アプリを通じて注文が入るとショッパーと呼ばれる登録者(現在約2万人)がスーパーで買い物し、注文から最短1時間で顧客に配達する。シプツのサービス手数料は1回7ドル。年会費99ドルのメンバーシプツに加入すると、発注金額が35ドル以上は手数料無料で何度でもサービスを受けられる(35ドル以下は1回7ドル)。シプツによると、宅配商品は35ドル分で5ドル程度マークアップされているという。シプツは2014年の創業当初、ターゲットやベストバイ、ホームデポからの宅配をおこなっていた。翌年からは買物先をスーパーマーケットに絞り(一部地域ではアルコール専門店からも宅配)、一部の都市を除いて多くはスーパーマーケットも1社に特定している。提携先チェーンストアはパブリクスやコストコ、HEB、マイヤーなど。72の大都市で展開中だ。

ターゲットは現在、出遅れたオムニチャネル化でキャッチアップしている。同社は今年7月、洗剤やシリアルなど日用品や非生鮮食品などを翌日に宅配する「ターゲット・リストック(Target Restock)」を始めている。ターゲット・リストックの対象商品は毎日の生活で欠かせない日用品や雑貨、健康、ベビー、ビューティ関連、パーソナルケア、ペット用品など1万品。注文は月曜日~木曜日の午後7時までに行うと翌日には宅配される。手数料は一律4.99ドル。またターゲットは8月、当日宅配ロジスティック・プラットフォーム企業でスタートアップの「グランド・ジャンクション(Grand Junction)」を買収することを発表した。買収金額など詳細は明かしていない。グランド・ジャンクションとはNYの一部ターゲットで当日宅配のテストで提携し、買収を通じて今後、当日宅配サービスの拡大を図るとしていると明かしていた。ターゲットはまた、カーブサイド・ピックアップの「ドライブアップ(Drive Up)」の拡大を行っている。カーブサイド・ピックアップは利用者がネットで注文した商品を指定されている店舗駐車場にて店のスタッフから受け取るサービス。通常、利用者は車から降りる必要はなく、注文品はスタッフがトランクに積んでくれる。ミネアポリス・セントポールに展開するターゲットや次世代プロトタイプ店で行われているドライブ・アップはターゲット・アプリ経由の注文のみに対応。対象商品は日用品や家具、玩具、ベビー用品など20万品目にも上っている一方で、生鮮品やデリ、冷凍・冷蔵食品はサービス対象外となっている。

トップ画像:テキサス州ヒューストン郊外にあるターゲット次世代プロトタイプストアのドライブアップ。

17年11月30日 - 【ターゲット】、新プロトタイプストアはゆっくりショッピングとお急ぎ用の二つの入口!

17年12月7日 - 【ターゲット】、モバイル決済システムのウォレット!アップルペイに5%値引きで対抗?

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。ターゲットによるオンデマンド買物代行・宅配サービスのシプツの買収も地殻変動によるものです。小売の地殻変動とは消費構造の変化であり、売り場ではその変化を観察できません。最近の劇的な地殻変動ではアマゾンによるホールフーズの買収がありました。IT企業はスーパーマーケットを買収したのです。大手小売チェーンがIT企業を買収することは珍しくなくなってきました。ウォルマートがパーセルという宅配サービス業者を買収したように最近はラストマイルを担うサービス企業を買収するのが目立ってきました。ターゲットのシプツ買収もその流れです。先日、当ブログが報じたように、シプツと同業のインスタカートが大手スーパーマーケットチェーン等の提携が拡大しています。シプツは後発ですが、一地域に1企業ということで当初、サービス展開を行っていました。昨年あたりから、宅配需要の急増で一つの地域でも複数の店からの宅配サービスも開始しています。

⇒買収でシプツはターゲットの子会社化します。別事業ということで運営されるのでしょうが、ターゲットと競合するチェーンストアは複雑な関係になってきます。フロリダ州で展開するパブリクスやミシガン州のマイヤーなど、ターゲットと直接競争しながら宅配サービスは競合の子会社との提携ですから...ターゲットからみてシプツはパブリクスやマイヤーなど競合店の顧客データを握っているのです。競合からすれば、面白いわけがありません。ターゲットの立場なら600億円以上も投資しているのですから、投資回収のためにもシプツが握る顧客データを利用した販促等は打つでしょう。競合店にとってはターゲットは生鮮品が弱いのが救いとなりますが、それでも、うかうかしていられません。一部に宅配サービスをインスタカートへ乗り換えることも推測できます。ラストマイルはまだまだ流動的ですね。はっきり言えるのは、地表(売り場)では見れない地殻変動の加速が進んでいることです。

ターゲットはアプリが比較的弱いのでそこも改善しなければなりません。後藤がターゲットの立場なら、シプツ・アプリも自分のアプリに統合するでしょう。戦略上、シプツ・アプリにある競合店のショッピングリストもターゲットのショッピングリストに簡単に引っ越しできるようにします。この意味、わかりますか?

後藤文俊

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