「シーナウ・バイナウ」が加速、NYはシーズンが混在する"異例のファッションウィーク"に

Image by: Rie Miyata

 パリやミラノといった世界の主要ファッションウィークのうち、ニューヨークはもともとビジネスマインドの高さで知られる。古典的なランウェイ式以外に、プレゼンテーション(展示会)やストリーミング動画で見せる手法の導入も早かった。先シーズンからは見てすぐに買える「see-now-buy-now」が取り入れられ、世界的な話題となった。2017年春夏シーズンではさらに発表方式の多様化が加速。「see-now-buy-now」の広がりもあって、秋冬と春夏が混在する異例のファッションウィークとなった。(文・写真:ファッションジャーナリスト 宮田理江

 

 「トミー・ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」はほぼ全面的に「see-now-buy-now」へ切り替え、16-17年秋冬シーズン向けを並べた。ショー形式も大胆にスイッチ。屋外シーポートで移動遊園地風に盛り上げた。すぐ買えるムーブメントの火つけ役となった「レベッカ ミンコフ(REBECCA MINKOFF)」も16-17年秋冬物を提案。フラッグシップストアが面する一般道を舞台に路上ランウェイショーを敢行し、消費者との距離を縮めた。こちらも秋冬物を打ち出した「オープニングセレモニー(OPENING CEREMONY)」はスタンダップコメディー風の演出を採用。ホスト2人のおしゃべりをランウェイウォークに絡ませ、ショーを笑いで包んだ。

TOMMY HILFIGER-20160926.jpg

TOMMY HILFIGERの会場

REBECCA MINKOFF-20160926.jpg

REBECCA MINKOFFの路上ランウェイショー

OPENING CEREMONY-20160926.jpg

OPENING CEREMONYのショー

 デザインの面では全体的に見て、一段とリアル感が増した今回のNY。価格帯やテイストでこのゾーンをもともと主な守備位置とするコンテンポラリーブランドはプレゼンテーションでそれぞれに工夫を凝らしたコレクションを披露した。

◆ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)

Brooks Brothers3-20160926.jpgBrooks Brothers2-20160926.jpg

Presentation Photo Photographer: Getty Image/Hair by: Diego Da Silva for Rene Furterer/Make Up by: Asami and the M・A・C Pro Team

 ジャズのバンド生演奏が流れる中、ガラス窓越しの景色をバックにモデルが並び、アッパーでリラクシングなムードで17年春夏向けの新作を披露。1960年代のおしゃれアイコンだったソーシャライツのグロリア・ギネスを撮った写真家セシル・ビートンの作品に着想を得て、ザック・ポーゼン氏は小旅行に出掛けるような気分を宿した装いを提案した。クラシックなシャツドレスや、ニットのセータードレスなどを打ち出し、エフォートレスとエレガンスを融け合わせた。オフショルダーのサンドレス、透かしレースのサマードレスなどがガーデンパーティーに誘うかのよう。パームツリー柄もリゾートの雰囲気を醸し出す。袖がメッシュのポロシャツは涼しげ。デニム生地を用いてデイリーグラマラスのムードに仕上げている。フェミニンでありながら、しっかりしたシルエットのスーツ、セットアップはクールで上品。日本のエグゼクティブ女性にも好まれそうな着姿だ。アイボリーやネイビーをキートーンに据えた風情はタイムレスな品格を帯びていた。

◆アリス アンド オリビア(alice + olivia)


aliceolivia2-20160926.jpg
 イタリア中部にある不気味で奇妙な「怪物公園」と、占いに使うタロットカードにインスパイアされて、ステーシー・ベンデット氏はミステリアスなコレクションを組み上げた。たくさんの刺繍やアップリケで謎めいた雰囲気を演出。でも、全体にはロマンティックでデコラティブ、そして少しガーリーなムードを帯びている。スタッズ、リボン、ビーズなどの手仕事ディテールを多用。プレイフルでレトロな気分を呼び込んだ。イブニングドレスとワイドパンツが目を惹く。特大サイズのサングラスがトレードマークになっているデザイナーは「分身」とも言えるアイウエアを新たに投入。オーバーサイズでアイキャッチーなサングラスが主役級の主張を利かせていた。ダークネスとラブリーが程よく交差するテイストは濃いめの装飾に向かう今のモード感にマッチして見えた。

◆バナナ・リパブリック(BANANA REPUBLIC)


BANANA REPUBLIC1-20160926.jpg インドからインスピレーションをもらったというコレクションを披露した「バナナ・リパブリック(BANANA REPUBLIC)」。大半は17年春夏向けだが、「see-now-buy-now」物も混ぜている。1枚布を巻き付けるようにまとう、インドの民族衣装「サリー」を連想させるようなワンショルダーや、インドに起源を持つともいわれるパジャマ風のセットアップなども見せた。ゆったりしたシルエットにインドっぽさが漂う。上下そろいのスーツやセットアップで落ち着きを演出。オリエンタルなペイズリー模様、インドの地名に由来するマドラスチェック柄を配して、東西のムードを響き合わせている。伝統的なクラフトマンシップを感じさせる刺繍を随所にあしらいつつ、現代のテクノロジーを注ぎ込んで、モダンに仕上げた。柿渋色やコーラル、ピーチなどのカラーパレットで装いを静かに華やがせた。ブランドのスタイルアンバサダーを務めているソーシャライツのオリヴィア・パレルモさんも来場。ビジネスシーンでも受け入れられそうな装いを提案していた。

◆J.クルー(J.Crew)


J.Crew1-20160926.jpg ブランドのオリジン(原点)を問い直す動きが広がる中、「J.クルー(J.CREW)」は色数をあえて絞ることによって、持ち味を引き出して見せた。ブルーやピンク、カーキという限られたカラーパレットで、プレッピー、ガーリー、ワークウエアなどの軸をあらためて印象づけている。チノに象徴される、ブランドアイコンと言えるようなアイテムを軸に据えて、トラディショナルでイージーなアメリカンスタイルという「らしさ」を際立たせた。柄ではストライプやドット(水玉)模様、ディテールではラッフルやチュールを打ち出して、甘すぎないフェミニンのさじ加減が利いた大人仕様の着映えに整えている。

J.Crew4-20160926.jpgプロのモデルではないが、ブランドにゆかりのある人たちを起用した見せ方はフレンドリーな空気感を呼び込み、リアルに着てみたいと思わせるものが多かった。

◆スコッチ・アンド・ソーダ(Scotch & Soda)

SCOTCHSODA1-20160926.jpg かつてシナゴーグ(集会所)だったレトロでミステリアスな建物「The Angel Orensanz Center for the Arts」で開催されたオランダ・アムステルダム発のカジュアルブランド「スコッチ・アンド・ソーダ(Scotch & Soda)」のプレゼンテーション。自然界をカラフルに表現した。16世紀のオランダの占星術師で地図製作者のイラストワークに着想を得て、ネイチャー感を帯びたコレクションを組み上げた。プリント柄で天然の動植物を写し込み、グリーン系やモノトーンで自然の息づかいや静寂を着姿に宿らせている。

 刺繍やアップリケなどのニードルワークも生かした。丈感にバリエーションを出して、マキシ丈からマイクロレングスまで、縦寸に幅を持たせた。ボヘミアンやロックのイメージを連れてくるレイヤードを組み立て、装いに深みをもたらした。薄手生地、シルク、レースと、レザーやメタルを交わらせ、質感の違いを際立たせている。ヘッドウェアは日本のハットブランド「ザファットハッター(THE FAT HATTER)」とコラボレーションしていた。SCOTCHSODA4-20160926.jpg

◆モーガン・レーン(Morgan Lane)

 Morgan Lane1-20160926.jpg 2014年にデビューしたランジェリーとラウンジウエアのブランド「モーガン レーン(Morgan Lane)」。デザイナーの母はジル・スチュアート氏だ。今回のコレクションでは新たにスイムウエアも登場。サーフカルチャーやアメリカ西海岸気分が支持を集める中、ボディースーツやキャミソール風など、ファッションとして取り入れやすいスイムウエアのスタイリングを提案している。

Morgan Lane3-20160926.jpg

 パジャマ(ナイトウエア)やランジェリーが街着として広がりを見せているが、この着こなしを早くから視野に入れていた「モーガン レーン」はシーンフリーの装いを深掘りしている。NYを拠点に活動する男女バンド「Sofi Tukker」のライブをバックに作品を発表。ボーカルの女の子も「モーガン レーン」のパジャマを着て歌っていた。

ジェンダーレス、シーンフリー、シーズンレスと、おしゃれの常識を覆すような流れは勢いが衰えない。リアルモードに近いコンテンポラリーブランドの示した方向感も自分流の着こなし「スポンテニアス」を後押しする。その一方で刺繍やアップリケに代表される手仕事ディテールの再評価が進んできた。ガーリーテイストやロマンティックムードを宿したラッフルやシャーリングが多用され、フラワープリントやランジェリーエッセンスなども多く見受けられた。ランウェイ形式の意義が問い直される中、プレゼンテーション形式があらためて評価される動きもあり、次回以降のNYではファッションショーを取り巻く状況がさらに変化していくに違いない。(文:ファッションジャーナリスト宮田理江

宮田理江 - ファッションジャーナリスト -

rieface_01_01.jpg

 複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスを経験後、ファッションジャーナリストへ。新聞や雑誌、テレビなど数々のメディアでコレクションのリポート、トレンドの解説などを手掛ける。コメント提供や記事執筆のほかに、企業・商品ブランディング、広告、イベント出演、セミナーなどを幅広くこなす。著書にファッション指南書『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』がある(共に学研)。  http://riemiyata.com/

記事のタグ

最新の関連記事

おすすめ記事

Realtime

現在の人気記事

    Ranking Top 10

    アクセスランキング