ファッション流通コンサルタント ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

世界のアパレル専門店売上ランキング2017発表

世界の大手アパレル専門店各社の2017年度の売上高や利益などをまとめる機会ができましたので、毎年恒例になりました売上高のランキングTOP10を共有させていただきます。

円建て比較にあたり、為替レートは2018年1月末の €=135円、スウェーデンクローナ=13.8円、US$=108.8円、英国£=153.9円で換算しています。

尚、7位のC&Aのみ2017年決算が入手できませんでしたので Deloitte Global Powers of Retailing2018と2017を参考にした2016年度の売上高を表示しています。

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備考-米TJMaxx、Ross のオフプライスストア2社は、売上規模でトップ10に入る規模ですが、メーカーや専門店が放出した過剰在庫を販売する二次流通マーケットのため除外しました。また、中国で拡大を続け、売上規模では9位あたりに位置すると目されるE.LandWorld(韓国)は売上規模以外の実態が掴めないため除外しました。


以下 ランキングに対する解説です。

1位のインディテックスグループは9%増収、7%営業増益、と着実な増収増益。ローカル通貨ベースでの伸び率は10%の増収12%の増益だったようです。(以下利益は営業利益を指します)。

進出国を1か国増やし94か国とし、グローバル展開を続けながら、この1年は特に香港、トルコ、メキシコに数多く出店したようです。

一方、スペイン、中国はスクラップ&ビルドを進めているようです。

また、ここ数年、ZARAが過去において手薄だったアメリカへの出店を強めているのも気になります。(ここ4年で87店舗へ倍増しました)

初めて明かしたオンライン売上構成比は10%(展開国では12%)、前年比は41%増、既存店売上高もトップ10企業の中でダントツの5%増でした。

2位のH&Mは4%の増収、14%の減益に終わりました。

H&Mの減益は2年連続、営業利益率も10%の水準にまで落ちています。

同社は同期も中国、アメリカへ集中して388店舗も出店をしましたが、

店舗数を増やしたほど売上は伸びず、

トップ10企業の他社は既存店のスクラップ&ビルドを行って店舗の純増数は鈍化しているにも変わらず、積極出店が裏目に出たようです。

後述するプライマークの躍進やイギリスのウルトラファストファッション系ECサイト達にシェアを奪われているようです。デジタル戦略への遅れが業績に表われていることはH&MのCEO自身も認めています。

3位はファーストリテイリング。4%増収も38%増益、営業利益率9.5%と復調しました。

国内ユニクロ事業の回復、海外ユニクロ事業の好調が要因で、営業利益率も国内11.8%に対して海外10.3%と海外も相当稼ぐ力がついて来ましたね。

その後の2018年上半期では、ユニクロの海外の売上は国内を上回り・・・

営業利益の構成比が逆転するのも時間の問題。

いよいよユニクロは国内事業一本打法から、海外で稼ぐブランドへの脱皮を果たしたと言えるのではないでしょうか?

4位のGAPは米国内のGAPおよびバナリパの不採算店舗の大量整理にメドがついたようで、2%の増収、24%の増益とこちらも復調。

ただ、日本から撤退したOLD NAVYが北米において1ブランドで気を吐いている感が否めません。

また、久々に同社の米国内売上比率を見ましたが・・・

80%と年々ドメスティック比率が高まっています。かつて世界一だったGAPとて、アメリカのチェーン店は海外で通用しづらい?というジンクスを覆すことはできなかったのでしょうか。

5位のLブランズは0.5%の微増収も13%の大幅減益。

ビューティ部門=バス&ボディワークスは引き続き好調だったようですが、

基幹ブランド ヴィクトリアシークレットが政策的に水着とアパレルの販売を中止したのが減益要因で、

同社はランジェリーのMD改革も含めてこの結果は織り込み済みとしています。

6位以下に関しては・・・

6位に浮上したプライマークはいよいよ年商1兆超え。

19%の増収、7%の増益、10%の営業利益率と、インディテックスに次ぐ好業績企業と言えそうです。世界ランクトップ5入りも時間の問題でしょう。

昨年夏にロンドンでプライマークの新しい旗艦店(オックスフォードストリートの東側の店)を視察しましたが・・・

同ストリート 西側の旧旗艦店と比べるとわかりますが、一皮むけておしゃれで、選びやすい店舗が印象的で、進化のほどを感じました。 特に、ロンドンハイストリートでH&Mを苦しめている様子が感じられます。

同社は2015年にアメリカ進出を果たしていますが、こちらの方はまだ試行錯誤状態のようです。

9位のネクストは既存店のスクラップ&ビルトと高いEC売上比率(40%超)で、これまで堅調な売上高と高い営業利益率を保って来ましたが・・・

いよいよ踊り場を迎えているようです。

同社の戦略は欧米日など成熟マーケットにおけるチェーン店の生き残り策のお手本になるかと期待をしていたのですが・・・ 10%近い既存店の減収は痛いです。

世界のファッション流通の最激戦地、イギリス、ロンドンでは日本以上の熾烈な勝ち残り競争が繰り広げられているようです。

さて、

今回のTOP10を見渡すと大きな増収、増益を達成したのはインディテックス、プライマークの2社です。

また、ファーストリテイリングとGAPの利益の復調も見て取れます。

一方、これまで 高い利益率を上げながらポストファストファッション時代に勝ち残る施策のいくつかの選択肢として注目して来た、

ビューティ部門を強化する米Lブランズ、

クリック&コレクトを中心にオムニチャネルとそのプラットホームづくりに力を入れて来た英NEXT

の2社が今踊り場を迎えています。

ここ数年着実に伸ばしているZARAとプライマークから見習うべきことは2点あると思います。

まずひとつは、

目の届く近隣国と人件費の安価な国をバランスよく使い分けるハイブリッド型生産 です。

3年連続で申し上げる話になりますが・・・

長いリードタイムをかけて低賃金の国においてローコストで商品をつくり、

つくったものを売り切るビジネスモデルはリスクが大きく(売上は上がるが利益をコントロールしづらい)、

そういったグローバル資本主義的なビジネスモデルが「限界」に近づきつつあります。

ここ数年のH&Mの様子は、まさにその反面教師的な姿かも知れません。

一方、見習うべきはZARAのインディテックス社の近隣国とアジア生産を組み合わせるハイブリッド生産です。

超低価格のプライマークも、かつての反省を活かし、トルコや東欧などの近隣国 短サイクル生産とベトナム中国バングラデシュの中長期生産を併用して成果を上げているようです。

そして、そんなサプライチェーン改革と同時に進めなければならないもうひとつのチャレンジは

ストアとオンラインの完全統合への道 です。

○ アプリによる来店前の顧客とのコミュニケーション

○ クリック&コレクト(オンライン注文の店舗受け取り)、

○ スキャン&バイ(店舗からのオンライン注文)

など、

いわゆるオムニチャネル戦略に関してもZARAのインディテックスが半歩先を行っています。

2018年はファストファッションからスマートショッピングの時代への大転換点。

急成長しているからと言っても、プライマークのような更なる低価格路線を追及しても大資本には到底敵いませんので・・・

ZARAの一連の取り組みを見習い、顧客の購買行動の変化に柔軟に対応できるサプライチェーンとオンラインの体制を早期に整えたいところです。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

齊藤孝浩