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なぜアイドル限定のデモは実施に至ったのか?

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Text by Kin Obuchi

 

梅雨入り目前の、身体を動かせば汗がじわりと滲み出るような土曜日の午後。平成30年6月9日、平成最後のロックの日に、アイドルたちのデモ『フェスボルタ デモ 〜聞け!アイドルの声〜』は開催された。アイドルたちが何を主張するのか、スローガンが明かされないまま迎えた今回のデモは、アイドルがライブをしながら原宿〜表参道間を練り歩き、行進終了後、アイドルたちとの打ち上げがあるという。

日本でデモを開催するには〈集会・集団示威運動許可申請書〉にデモの目的や参加人数などを記載し、デモの72時間前に、警察署を通して公安の許可を得なければならない。さらに〈サウンドデモ〉とよばれる、今回のようなライブ形式のデモでは、スピーカーを積んだサウンドカーを用意する必要もある。初めてのデモにしては難易度が高く、集団示威運動とライブイベントの狭間にあるような今回の行進を、主宰した運営陣はどのように実現し、〈デモ〉をどのように捉えているのだろうか。

§

デモを終えた率直な感想をお願いします。

とりあえず無事に終わってほっとしていますが、課題はたくさんありますね。デモのさい、マイクではなく拡声器を使えばよかったとか、シュプレヒコールを事前に練習すればよかったとか。

デモ運営陣に、デモ参加経験のあるかたはいますか?

今回が初めてだったり、ちゃんと参加した経験のないメンバーしかいないです。デモをやるのってすごく大変じゃないですか。参加者を集めて、警察に申請して。

12:00 デモ参加者集合
12:20 担当警察官と最終打ち合わせ

警察に申請をせず、無許可でデモをやる、という考えはなかったんですか?

ないです。公道を堂々と練り歩きたかったので。申請のさいに「デモじゃなくて、どこか場所を借りてやるんじゃダメなの?」とか「デモである必要がない」と警察からもいわれました。でも、表現の自由が認められている以上、デモの内容ついて警察は文句をいえません。なので、「公安に許可をとって、警察を動かして、場合によっては信号も止めるんだよ? わかってる?」と警察はいうんです。

警察とのやりとり、大変そうですね。

めちゃめちゃ大変でしたよ。「前例がない」って。最初は、デモ行進の出発・到着地点と、打ち上げ会場を同じところにして申請しようとしたけど、〈イベント〉になってはいけないからダメ、とか。コースも、なるべく長くデモ行進するために長距離で申請したら「そんなに必要?」といわれたり。一方通行の道は避けてとか、反対車線を遮らないように、右折はなるべくしないように、とか。

12:30 デモ行進開始

だからデモのコースがコの字だったんですね。デモ当日は、警察とトラブルはありませんでしたか?

トラブルというトラブルはなかったですけど、最初、サウンドカーをかなりゆっくり走らせたんです。第一希望のコースよりも短かったので。そうしたら、警察はずっと怒ってましたね。「遅い! こんなデモないよ!」って。別に、世の中に対して何も怒ってないし、何の思想もないですが、世の中になにかを主張することがこんなに面倒くさい手続きをふまないといけないなんておかしいのではないか、と疑問は残りました。

デモの開催をTwitterで告知したのは、デモの4日前でしたね。急な告知だと感じたのですが、なにか理由があったのでしょうか?

デモに参加するアイドルがなかなか集まらなかったんです。10組以上にオファーしたんですが、なかなかお返事をいただけなかったので、10日前まで「6月9日のデモ開催はやめよう」と話していました。 この集まりで、デモ申請の期間を考えたら無理だろう、と。本当は去年の秋にデモをやりたかったんですが、開催を延期する状態が続いていました。

今回は、なぜ延期せずに実行する決断をしたんですか?

参加してくれるアイドルさんがなんとか集まったのと、警察とやりとりしているうちに、申請を通さなきゃ! という気持ちが芽生えたからですかね。 初回は大変ですけど、とにかくやってみないことには何もわからないので、なんとか実現させました。

デモを開催するさい、何に気をつけましたか?

アイドルさんは、デモを知らない若い世代なので、放っておくと、どうしてもデモではなくパレードになってしまう。そこは意図的に、こちらでコントロールしました。アイドルさんは「今回出る新曲が...」という話をしがちなんですが、そうではなくて、社会に何を伝えたいかを考えてもらって。スローガンも、社会の誰かに向けたメッセージでお願いします、と。

スローガンをひとつに統一することは考えていませんでしたか?

当初は「アイドルが◯◯を求めてデモ」とキャッチーにするために、僕たちがスローガンを必死に考えていました。例えば「地下アイドルが労働環境の改善を訴えてデモ」とか。でも、そのスローガンではデモの実現は難しいだろうという意見が、デモ運営陣のなかであったんです。アイドルが労働環境の改善を訴えてしまうと、マネジメント批判になりかねない。マネジメント側は嫌がって、アイドルをデモに参加させなくなるかもしれない、と。あの手この手で考えましたが、全体をひとつにまとめられる良いスローガンはなかなか思いつきませんでした。でも、考えているうちに、いちばん大切なことに気づいたんです。そもそも、スローガンは僕たちが考えるべきではなかった。運営陣としていうべきは「アイドルの声をきいてください」だけだと。僕たちが考えたスローガンをアイドルさんに押し付けてしまったら、やらせになってしまうので。

アイドルたちが掲げたメインスローガン

SAKA-SAMA「みんなガンバル!!」

めろん畑a go go「廊下を走るな」

MELLOW GREEN WONDER「MIXばかり打たないで」

町田彩夏(平成墓嵐)「#嫌なことを嫌と言えたら」

tasotokyoガールズ「ブスにも人権を!ブスにもセーフティネットを!

今回のデモの参加者をアイドルに限定したのはなぜですか?

地下アイドルの現場って、どこのライブハウスで誰を呼んで、という発想に偏ってしまいがちなんです。毎回、同じようなライブが続いてしまえば、アイドルさんもアイドルファンも、疲弊してしまう。毎日のように、誰かしらがアイドルデビューを果たしては消えていく、新陳代謝の激しい現場なんです。そんなアイドルさんがデモをやることで、空気が入れ替わるというか、閉塞感のある現状に風穴を開けたかったんです。

アイドルたちに何か変化を感じましたか?

この1回きりじゃ、まだ何もわからないです。 アイドルさんはまだ、こんなことやったよ、と自撮りしてツイートできれば、それでお腹いっぱいなかんじはありますね。そこから、もう500歩くらい進んでもらって、もっと社会に対して訴えたいことを探してもらいたい。それを主張できる機会を僕たちが用意するから、と。 なにかを表現したい、とステージに立っても、何か満たされず、その先の選択肢がこれまでなかったんです。そこに新しくデモという選択肢を加えることができてよかった。

警察のいう通り、デモというカタチをとらないほうが色々と楽だったのでは? なぜデモにこだわり続けたんですか?

とにかく〈デモ〉をやりたかったんです。普段見慣れている街の景色を変えてみたかった。それに、従来のデモ参加者たちも、お年寄りがメインになっているじゃないですか。そういうひとたちがこの先いなくなってしまったら、デモをやったことない若者たちがどんどん増えて、これまで培われてきたデモカルチャーが廃れてしまう。申請の方法やノウハウを若い世代に授けたかった、という理由もあります。

13:00すぎ デモ行進終了. 解散場所に到着

なにか主張があって、それを訴えるためにデモをやる、というのが従来のデモだとしたら、今回のデモは完全に逆ですよね。デモをやるために、どうするか考えて試行錯誤しているところが。

デモは、何かを主張するための手段にすぎないし、大事なのは中身だとは思いますよ。 でも、今回のデモがきっかけで〈申請が通る〉デモとは何かを警察に叩き込まれて、社会への憤りが生まれたし、終えてみると、謎の達成感があるんですよね。暑いなか街を練り歩いて、街のみんなに注目されて、疲れてヘトヘトになったら、謎の達成感だけは残るんだ、というのはひとつの発見です。

13:45 デモ打ち上げ開始
デモに使用したプラカード争奪じゃんけん大会

次回のデモ開催の予定はありますか?

涼しくなってからですかね。結構みんな、暑さでぐったりしていたので。次回のデモまでに、アイドルさんには、世の中に対して主張したいことを掘り下げて考えてきてほしいです。今はファンのみなさんを基軸に活動しているかもしれないけど、その向こうにはもっとたくさんの、街のみんながいる。デモを通して、それをリアルに感じてほしいですね。まぁ、明らかに従来のデモという文脈ではないとは自覚していますし、 デモ行進が終わって、警察に「またお願いします」と声をかけたら「またやるの!?」と返されましたが(笑)

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