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世界各地の新型コロナウイルス感染者が語る病床の2週間

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症状は様々だが、新型コロナウイルスの症状のピークは10〜14日続く模様だ。

By Julian Morgans, Caleb Quinley, Koh Ewe, Gonzalo Herrera, and Ana Iris Simón; translated by Ai Nakayama

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COVID-19(新型コロナウイルス)の検査で陽性反応が出たと想像してほしい。あなたはどれくらい不安になるだろうか。これを読んでいるみなさんは、若く、呼吸器系の持病もなく、感染しても「重症化しない」といわれる多数派に属しているかもしれない。しかしその「重症化しない」という言葉が、コロナウイルスの恐ろしさを見えづらくしているのかもしれない。

今年2月頭、中国疾病予防管理センターは武漢における最初の感染者、計4万4672名分のデータを分析し、患者の病状を〈軽症〉から〈極めて重篤〉までレベル分けした。そのうち81%(3万6160名)が軽症と判断されたことは良いニュースかもしれないが、〈軽症〉のなかにも肺炎が含まれるというのは悪いニュースといえよう。

ここから、実際の体験が統計や曖昧な用語に覆い隠されていると感じた私たちは、リアルな体験談を求め、病院で治療を受け治癒した3人のコロナウイルス感染者に話を聞いた。取材に答えてくれたのはそれぞれタイ、中国、スペイン在住で、男性ふたりと女性ひとり。3人とも22〜42歳の若年層に属している。それぞれ別々の環境で暮らす別々のひとびとだが、発症時の恐怖、その期間については共通している。また、3人とも自分がかかるはずがないと思っていた、と口をそろえる。

ジェイ 36歳

「起きたら倦怠感を覚えました」と語るのは、バンコクに暮らす36歳のシンガポール人、ジェイだ。「全身が痛かったから、念のため自宅で静養することにしたんです」

その日は日曜で、ジェイはどこにも出かける予定はなかった。体温計を買うために一度家を出たが、それ以外は一日中ベッドで寝ていた。体調不良の原因が何であろうと、きっと良くなるだろうと彼は思っていたという。「具合が悪いときはいつもちょっと休めば良くなるので」とジェイ。「だから日曜はずっと家にいたんです。でも、月曜の朝起きたときも全然良くなってなくて。そこではじめて、少し不安になりました」

ジェイはベッドから出て、近くの私立病院に向かった。そこでCOVID-19の検査を受けると陽性反応が出たため、急いでバンコクのバムラスナラドゥラ感染症研究所(Bamrasnaradura Infectious Diseases Institute)に搬送された。この施設は、タイ国内の感染者のほとんどが搬送、隔離される感染症専門の病院だ。「朝の6時とか7時とかだったはずです。その日は高熱と全身の痛みで、全然眠れませんでした」とジェイは回想する。「頭だけがずっと高速回転してた感じです」

今回、私たちが話を聞いた患者たちが語る発症時の様子は、みんな似通っている。まず倦怠感、次に高熱、そしてそこからは一気に症状が悪化する。

ヤキ 37歳

バンコクから数千キロ離れた中国、武漢。新型コロナウイルスのパンデミックの発祥源とされるこの街で、37歳の会社員ヤキも、ジェイと同じような症状に襲われた。彼女も睡眠をとれば治ると考え、咳や頭痛に襲われ、高熱で服が湿るほどの汗をかきながらも仕事を続けた。体調不良の正体はわからないが、誰かに感染させたら困る、という理由で近くのホテルの部屋をとり、ベッドに倒れ込んだ。しかし翌日の1月22日に目覚めたとき、体調はさらに悪化していた。

「午前9時まで待って、仕方なく夫に体調不良の件を伝えました。すごく心配してましたね。携帯に届いた同僚のメッセージには、うちのオフィスで他にも数人が新型コロナウイルスにかかった、と書いてありました。SNSには『がんばれ武漢』というメッセージが溢れてましたが、心細さを感じました。夫が漢方を買ってきてくれましたが、それを飲んだあと、胃に気持ち悪さを感じました」

彼女の夫は、妻を地元の病院に入院させようとしたが、その時点で武漢の医療施設は完全に混乱していたため、その病院では入院させることも、ウイルス検査をすることもできなかった。家に帰ってどうにか乗り切るように、といわれただけで終わってしまう。

その後数日、ヤキの体温は38.5℃前後を推移し続け、その間彼女は、極彩色の悪夢を見続けたという。体調不良が始まってから1週間以上が経過した頃、今度は嘔吐が始まった。

「何も食べることができませんでした」とヤキは回想する。「飲んだ薬も吐き出してしまって、吐瀉物には血も混じるようになりました。夫は動転して、有名な病院や医者を探すために駆けずり回ってました」

ヤキは携帯でニュース番組などを見て気を紛らわせようとしたが、ある瞬間から、誰が何をしゃべっているのかもわからなくなったという。

「1月30日も一日中高熱が続いてました」とヤキ。「広州の有名な医者が処方してくれた漢方を飲みました。嘔吐は続き、吐瀉物に混じる血も増えていました。何かを口に入れては吐く自分の姿を映像に残しました。家族はみんな泣き崩れてました」

最終的に、ヤキの医者の友人が抗ウイルス薬(モキシフロキサシンという強い抗生物質と合わせて服用)を処方してくれて、症状は改善した。抗ウイルス薬と抗菌薬の併用は、やるだけやってみようと試した処方だったが、幸運なことにヤキの体調は良くなっていった。

「11日経って、ようやく正常の体温に戻りました」とヤキ。「薬のおかげだと思いましたし、天国に感謝しましたね」

ニル 22歳

今回取材した3人は、症状は完全には一致しないものの、新型コロナウイルスの症状のピークは10〜14日続いた、と口をそろえる。

バルセロナの病院のベッドから、大学で広告を学ぶ22歳のニルも取材に答えてくれた。彼も新型コロナにかかって山場を乗り越えた経験をもつ。彼は、ミラノから帰国してから発症した。異常に身体が熱く、何かがおかしいと感じたという。「ウイルスが生息する場所に触れてしまったのかもしれないし、汚れた手で口や目を触ってしまったかもしれない。定かではないですが」とニルは語る。

彼はすぐに医師の診察を受け、その医師により隔離を指示され、翌日にはコロナウイルスと診断された。家族や友人との面会も禁止された。彼にも、ジェイやヤキと似たような症状が発現した。

「僕の場合、だるさ、熱、頭痛、鼻水ですね」とニル。「日にちが経つにつれ、筋肉痛、関節痛、めまい、吐き気が加わりました」

ニルの症状で興味深いのは、咳や呼吸困難を伴っていないということだ。ここから、新型コロナウイルスの多様な症状がみてとれる。ウイルスに感染、発症すると一般的な風邪のような症状が顕現するが、その症状は多岐に及ぶのだ。全ての患者が咳をするわけでも、吐き気を催すわけでもない。はっきりとわかっているのは、若く健康なひとの場合、新型コロナの症状は2週間程度で治まってくる、ということだけだ。しかしこれも、今回の取材対象に限った話かもしれない。いずれにせよ、ニルが警告するように、新型コロナが発症すると地獄を見るということ、そして政府からの発表を自分ごととしてとらえるべきだということは確かだ。

「僕たちはひとりで生きているわけじゃない、ってことを意識すべきだと思います」とニルは訴える。「政府や当局が何らかの対策を講じる場合、あるいは何らかの勧告が発表される場合、そこには意味がある。政府はイースターを台無しにしたいわけでも、せっかくの友達との約束を潰したいわけでもないんです。国が医療危機に直面しているから、そしてそんなときには、国民ひとりひとりが責任をもって対処しなきゃいけないからなんです」

新型コロナウイルスから私たちが学べること

ヤキも、新型コロナを甘くみてはいけない、と警告し、「普通の風邪とは違う」と語る。ピーク時には死を覚悟し、携帯に遺書を残したと彼女はいう。そしてニルと同じく、彼女もソーシャルディスタンシングの重要性を説く。

「このウイルスは感染力が高いので、自分自身を守る必要があります。もし呼吸困難になったら、すぐに医療を頼り、マスクや保護ゴーグルなどを着けましょう。どこかにこもり、ウイルスと闘いましょう」

タイで感染したジェイは、いまだに息苦しさはあるものの、希望を抱いているという。本記事の執筆時点(3月25日)でジェイは、検査の結果であと2回陰性が出れば退院できる予定だ。彼は残りの隔離期間でこう伝えていきたい、と語った。

「僕はヒーローではありません。僕は事実を述べて、感染拡大を防ぐための手段というのをみんなに伝える必要があると思っているだけです。これは、全てのひとが負う責任ですから」

This article originally appeared on VICE ASIA.

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