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マスク布地の表面をコーティングして感染予防、抗ウイルス作用のある化学物質「PROTX2 AV」とは?

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6月月末に予約が開始されたUNDER AMOURのマスクの布地にも施されている事でも話題となった、抗ウィルス作用のある化学物質「PROTX2 AV」。日常が世界で戻りつつあるなか、新たな生活様式になぞらえるように、以前と変わらない服やマスクの選択を行いつつ、感染対策も同時に行う衣服の存在もまた重要となってくるだろう。

PROTX2 AVは、布地の生産段階にコーティングとして用いられる化学物質であり、感染源を抹消するものとしてではなく、簡単に導入できる感染予防のツールとしての使用を見込んでいるという。今回、PROTX2 AVを開発した「Intelligent Fabrics Technologies社(インテリジェント・ファアブリックス・テクノロジーズ / 通称 IFTNA )」のCEOであるGiancarlo Beevis (ビーヴィス)氏に、PROTX2 AVの研究背景とこれからの展望についてインタビューを行った。

「人々を守るための技術革新」を実現 IFTNA

開発会社であるIFTNAは2008年に創業、 本社をカナダのオンタリオ州に構える繊維開発企業である主に、ヘルスケア・スポーツウェア・ミリタリー・ホスピタリティ・住宅・家庭・ファッションなど、幅広いニーズに答えるべく生産・技術開発を行っている。会社の理念として「社内で行う技術革新は、社会的にも、さらに自分の属するコミュニティにも還元していく」ことを挙げており、今回のインタビューを通じて、還元する先であるグローバル・コミュニティに対し自社の保有する技術で手助け行いたい、という思いをビーヴィス氏は強く語ってくれた。

コロナウィルスの感染拡大により注目の集まっているPROTX2 AVは、布地の生産段階にて表面コーティングとしての使用を見込んだ、抗ウィルス作用のある化学物質である。最新のラボの結果では、99.9%のコロナ・ウィルスを10分以内に不活化させ、殺菌力がその後24時間持続する効果を発揮すると証明されているそうだ。コーティングした際には、ウイルスを撲滅するのではなく、現行の技術に上乗せするかたちで、新たな機材などを要せず導入を可能とするという。

PROTX2は、2011年ノロウィルスが感染拡大した際に、主にクルーズ産業を対象として開発されたという。クルーズ産業のように、国から国へ海を跨ぎ、上陸した国で数日間を過ごす場合、感染の速度は早まる一方で、船から出ることも許されない状況は、まさに今年ダイアモンド・プリンセス号が苦しめられた現状と似て考えうる。

2011年の場合には、レストランなどで用いられる再利用型ナプキンがウィルスの感染源として顕著であったという。店内に入る際に、気づかないところでウィルスが手につき、そのまま手をナプキンで拭き、そのナプキンで口や鼻など顔を触っていたことが感染要因として分かったというのだ。そして、クルーズ産業だけに止まらない布地の効用を改善すべく、PROTEX2 AVは開発された。

しかし当時、規模の大きいクリーニング企業が独占的に保持していたクルーズ産業との繋がりの強さから市場への参入が叶わず、その技術は日の目を見ることはなかった。そして、9年経ったいま、コロナウィルスの感染拡大が世界規模でに深刻化する状況下において、PROTX2 AVの技術に光が当たったという。

変容した市場の反応

開発当時を振り返って、当時の市場の焦点そのものが殺菌に絞られていた為に、スプレーをする・洗濯をする前提が重要視されていた、とビーヴィス氏は語る。「表面コーティングのような、その布地単体でウィルスを殺すような、革新的な技術があまり浸透できる現場ではなかったように思います。」

開発当時と現在の状況下への市場や周囲の反応の変化について伺ってみると、「地球規模でのコロナウィルスの感染拡大は、市場のマインドセットそのものを変えたとみてとれます。」と返答が返ってきた。「現在、消費者も市場も以前より、抗菌や抗ウイルスといった技術への理解が増したと考えます。そして、今後消費者は、抗菌や抗ウィルスといった類の保護を切望するでしょう。最小限のコストでそのような保護を追加する、合理的な選択への欲求が少なからず北米では広がりつつあります。そこで私たちは、マスクや医療品のみならず、日常のギアとして簡単に取り入れられる形で保護を提供すべく開発を進めています。」

PROTX2が施されたPPEマスク

予約が開始されたUnder Armorのマスクもまた、PROTX2 AVのコーティングが施されており、これらに始まり抗ウィルス作用のあるスポーツウェアや衣服が市場に出回るのは時間の問題とも考えうる。「この技術は感染源を抹消するものとしてではなく、ツールとして日常に追加する想定だということです。特に医療機関などのフロントラインワーカーズは、非常に怖い想いで日々向き合っていると思います。もちろん個人用防護具(PPE)は着用していたとしても、PPEの殺菌能力は完全であるとは言い難いでしょう。私たちの技術を用いて、活性表面作用をPPEに付加することで感染の威力を抑えたいと考えています。さらに最悪の場合、その中に着用している衣服にウィルスが付着した場合、その家族へと伝染が広がることも踏まえ、できる限り感染の可能性を抑えることが目標です。」

グローバル市場での展開:日本のテキスタイル産業からの学び

「感染源が特定しにくく、人の動きが世界規模で活発ななか、グローバル・コミュニティの一員として、世界規模でのアクションを起こしていかねばならない」とアクションの規模の大きさの重要性を語ったビーヴィス氏。実際にIFTNAは、長期に渡って抗ウィルス・抗菌に特化し研究開発を行っている背景から、本社のある北米以外にも、中国・台湾・インドネシア・韓国・ベトナムにオフィスを構え、工場や研究施設もまたアジアと北米を中心に保持している。体制の甲斐もあって、世界規模で製造工場にてPROTX2 AVの提供を可能にしているのだ。

なかでもビーヴィス氏が注目しているのは、日本のテキスタイル産業だという。日本の市場に出回る機能性繊維をはじめとするテキスタイル開発の技術水準は、北米のテキスタイル市場のそれより先進的であるとし、技術力からメンタリティに至るまで幅広く学べる事があるという。実際に神戸にあるIFTNAのR&D施設では、日本のテキスタイル産業が保持する抗菌・抗ウィルス作用の高い技術力を研究し、世界規模でのテキスタイル生産への応用を可能にすべく開発を行っているそうだ。

「日本を訪問した際に、電車のつり革一つ一つに抗菌作用のある化学物質を含有している事実に驚きました。」日本の公共空間にある、エスカレーターの手摺りや電車やバスのつり革にまで抗菌加工がされているという配慮そのものもまた、日本の高い技術力に学べることだという。

布地からハード・サーフェースまで:今後の展望

現在、IFTNAでは紙製のプロダクトや、ハード・サーフェースへの技術応用を見込んで開発を進めている。例えばAmazonを始めとするEC販売の梱包資材のように、何人・何百人の誰が触ったか特定できない紙製の箱や、リテールの包装紙、さらに今後都市に人が戻る状況下で複数人が触ると想定しうる衣服の商品タグなどが該当するという。

そしてハード・サーフェスの導入例として想定しているのが、飛行機や映画館、スタジアムなどが該当するそうだ。飛行機を例にとると、仮にスプレーをして活性表面を約6-12ヶ月稼働させることができるのであれば、フライト数を減らす必要や、清掃活動の時間を長くする必要が無くなる。さらに乗客側の不安感も軽減でき、通常通りの運航を担保できると考えうる。他にも全面的にコーティングが行えない場合でも、ハイタッチエリアと呼ばれる接触回数の著しい表面をコーティングすることで感染可能性を抑えることも可能だろうと示唆している。

「ノロウィルスの収束後、抗ウィルスや抗菌への興味関心は一時的なものとして忘却されていたように感じます。しかし、コロナウィルスだけでなく、私たちはインフルエンザや細菌感染といった季節性のウィルスや周囲環境の細菌とも向き合っていかねばなりません。PROTX2 AVをはじめとし、これからも我々はいかなる状況にも対応できる技術開発を進めていきます。」

ライフスタイルブランドUnderit 商品イメージ画像

IFTNAは今後自宅での洗濯を見込んだ、PROTX2 AV洗濯用添加剤の提供を開始する予定だという。さらに、PROTX2 AVを注入したPPEの自社ラインの提供の計画も進めており、ライフスタイルブランドであるUnderitの販売も来年初頭に控えている。

ビーヴィス氏も示唆していたが、当然のことながら抗菌作用に頼りすぎる事なく、個人個人がパンデミック状況下で学んだ徹底した手洗いを行うなどの衛生観念に追加するかたちで、より感染可能性を下げる策を、これからも模索していく事が重要であろう。

だが、ウィズ・コロナの状況下において、コロナウィルスの感染可能性を減少しうるPROTX2 AVのような機能性繊維の開発は、最低限の予防として今後取り入れられていき、衣服や日用品に幅広く普及していくことだろう。

text by hanako hirata

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