Fumitoshi Goto

デジタルに乗り遅れた米老舗企業 ターゲットが息を吹き返した新戦略とは?

激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

在米28年のアメリカン流通コンサルタント

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■アメリカの老舗企業でデジタルに乗り遅れていたもののデジタルトランスフォーメーション(DX)で一気に息を吹き返した、もしくは全く新しいビジネスモデルに変身した企業はどこだろうか?

DXで復活した代表的な企業はターゲットだ。ターゲットは、その前身であるデパートメントストアの時代まで遡れば創業は1902年となる。ハイセンスなイメージを持つターゲットは実は120年近くの歴史をもつ老舗企業なのだ。

ターゲットは時代に合わせてデパートメントストアからディスカウントストア、そしてDXなオムニチャネル化で変身を遂げている。しかし変身には代償がつきものでありDX直前に大失敗をしているのだ。

リーマンショックの余震が薄らいでいた2011年、ターゲットはカナダ小売大手ハドソンズ・ベイ・カンパニー(Hudson's Bay Company )から傘下チェーンのゼラーズ(Zellers)を約18億ドルで取得した。

前CEOのグレッグ・スティンハフェル氏の肝いりで始めた海外進出では2013年、ターゲット・カナダ1号店がオープンしたのだ。ターゲットは220ヶ所のゼラーズ跡地から100~150ヶ所を選び、わずか1年ほどで100店舗以上をオープンした。

ターゲット・カナダ事業は1年ちょっとの間に130店も展開するようになった。

同時に物流が急成長についてゆけず欠品に悩まされ赤字に陥っていた。1号店のオープンから2年も経たない2015年1月、ターゲットはカナダ撤退を発表。

ターゲットCEOに前年8月から就任したブライアン・コーネル氏は「カナダ事業の実績と考えられるすべての選択肢を精査した結果、2021年まで黒字化できるシナリオを描くことができなかった」と再建が困難なことを撤退の理由として明らかにしたのだ。

ターゲットはカナダ事業に当時50億ドル~60億ドルを投資していたとみられており、撤退費用にも5億ドル~6億ドルを充てたのだ。

その時からコーネル氏の手腕でウォルマートなど競合より遅れていたオムニチャネル化をターゲットは加速させていった。

しかしDXは一気呵成に進むものではない。

ネットで購入した商品をお店で受け取る(BOPIS:Buy Online Pickup In Store)サービス一つとってもITや物流インフラを整えるだけでも相当な時間がかかるのだ。

例えばターゲットは2015年のサイバーマンデーでネットのセール商品をボピス提供していたが現場は大混乱になっていた。

なぜならば当時のターゲットにはボピス用のストックスペース(一時保管室)などはなく、商品の受け渡し窓口もカスタマーサービスと兼用にしたためカオス状態になったのだ。

ネット注文を受け取ろうにもカスタマーサービスで待たされることがしばし発生していた。その後はストアレイアウトを見直し徐々に店舗改装しボピス対応にしていった。

ピックアップタワーを導入しているウォルマートと比べてまだキャッチアップではあるもののターゲットはDXで復活したと言って良い企業なのだ。

トップ画像:現在のターゲットのピックアップカウンター。5年前のカオス化した状態と比べてみて欲しい。

ターゲットは2015年のサイバーマンデーでネットのセール商品をボピス提供していたが現場は大混乱になっていた。返品とピックアップ商品が混在している。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。当ブログの読者さんからメールで質問があったので、回答としてエントリー記事を書いてみました。新規事業開発やデジタル化を進める中で参考にしたい、ということだったのですが、話を聞くより世界最先端の流通ITを現地で体験するのが一番だと思います。また、そこに至るまでにどんな失敗をしでかしていたのかを知るほうが大切です。メディアではバズワードとなる新語が売れるので先行します。ただ実態が伴わず、抽象的な概念でしかありません。デジタルトランスフォーメーション(DX)なんか、まさにそれ。それをわからせるに手っ取り早いやり方はトップから役員までアメリカに来てもらい後藤の指導の下、ワークショップを行うのが最適です。ネットスーパーのワークショップでもアプリを介した買い物からピックアップ・チェックインのフォロー、受取時の現場でのスタッフとのやり取りまで具体的に一つ一つを確認しないことにはDXの全体像は見えてきません。

 エントリー記事にあるターゲットの場合もまずはアプリを使ってターゲット・サークル・オファーズで買い物をしてみることです。

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