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スーパーマーケット・チェーン最大手のトップ「クローガー」がコロナから学んだこと

スーパーマーケット・チェーン最大手のトップ「クローガー」がコロナから学んだこと

在米28年のアメリカン流通コンサルタント
激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

■食品スーパー最大手チェーンのクローガーは他のスーパーと同様にパンデミックの影響で売上を急増させている。

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クローガーが昨年12月に発表した第3四半期(8月~10月期)は売上高が前年同期比6.3%の増加となる297.2億ドルだった。

ガソリン売上を除いた既存店・売上高前年同期比は10.9%増と二桁になる増加だった。

第1四半期から第3四半期までの9ヶ月間では、既存店ベースが15%も成長しているのだ。当初の予想では2.5%の増加だったことからコロナの影響でいかに売上が伸びていたかがわかるだろう。

ネットスーパーを含むオンライン売上高は第3四半期で約2倍となる108%の増加となっている。

新型コロナウイルス感染拡大はクローガーに売上増などの恩恵をもたらしている。

数字以外には、どのような影響があったのだろうか?

クローガー本部のあるオハイオ州シンシナティの地元紙がクローガーCEOのロドニー・マクマレン氏とのインタビュー記事を掲載した。

創業1883年と140年近くの歴史をもち2,700店以上のスーパーマーケットを展開するクローガーのトップは、パンデミック以降の消費動向の変化もつぶさに見ていることもあり、興味深い洞察にあふれている。

クローガーの輝かしい業績を話すのかとの予想に反し、マクマレン氏は消費者のある変化から話し始めた。

彼は「先日、20代の子供を持つ地元企業のCEOから『パンデミック以降は毎晩のように家族一緒に料理していますよ』と電話で聞きました」と、友人夫婦が子どもと楽しい時間を過ごしている話題を取り上げた。

家族全員にとって生涯忘れられることのない思い出になるとも話したのだ。このことからマクマレン氏はパンデミック終息後も消費者は以前のようなレストラン等の外食に戻ることはそれほどないと見ているのだ。

正常な生活に戻っても消費者は自宅で料理を続ける傾向となり、それがスーパーマーケット業界に大きな変化を与えるとの予測なのだ。

コロナ中に起きた最大の変化は、なんといってもネットスーパーだろう。多くの食品スーパーはコロナ前から宅配やカーブサイドピックアップを強化していたが、ネットスーパーはコロナ流行中に爆発的に普及した。

コロナの影響により、5年かかると見られていたネットスーパーの進化を5週間で成し遂げたとマクマレン氏は分析している。

クローガーでは3年前からネットスーパーを拡大するためIT投資を強化していたのだ。パンデミック中ネットスーパーのボリュームが2週間で2倍になったのだが、この投資により十分に対応でき本当に報われたと胸をなでおろしているという。

またネットスーパーへの投資で新たに4万人を雇用できたことも誇らしいこととして取り上げている。

そして彼はパンデミック終息後もスーパーマーケット業界に長期的な影響を与えるであろう3つのトレンドを紹介した。

1つ目はフレッシュさの重要性だ。クローガーではパンデミック以前から最重要事項として新鮮さを保持しているが、外食を控えて家庭で食事をする機会が続くことから青果・精肉・デリ・ベーカリーのフレッシュさはパンデミック後はさらに重要になっていくという。

2つ目がスマートフォンなどモバイル展開の重要性だ。モバイルはお店と顧客をつなぐコミュニケーションツールとして、店内での買い物時からピックアップまで、あらゆる機会にスマートフォンが使われると見ているのだ。

そして3つ目として食のアップグレード。消費者はパンデミック時、チーズやビール・ワインなどのアルコール類で品質の良いものを買うようになっているという。

(自宅で料理を作る機会が増え)食材等をアップグレードすることもあり、品質の違いを理解するようになったのだ。この違いを知ったことでパンデミック後もアップグレードした食品を買い続けると見ている。

 一方で懸念していることもある。ウォルマートやアマゾンなどの競合だ。自宅での食事が続くことからスーパーマーケット業界の勢いはまだ続くとの予測だが同時にチェーン最大手やネット通販最大手は果敢に攻め込んでくるのだ。

 今年初めにはオハイオ州モンロー地区に33.5万平方フィート(9,380坪)セントライズド・フルフィルメントセンター(Centralized Fulfillment Center:CFC)が稼働を開始する。

イギリスのネット専業スーパー最大手のオカドグループと提携した最初のネットスーパー専用のロボット物流倉庫だ。クローガーは20ヵ所までCFCを増やす計画でありネットスーパーが売上の大きな柱になることは間違いない。クローガーの快進撃はまだまだ続きそうだ。

トップ画像:食品スーパー最大手チェーンのクローガーで展開するマーレイ・チーズ・ショップ。ニューヨークの老舗チーズショップをスーパー内に導入したのだ。パンデミック以降、消費者はチーズやビール・ワインなどのアルコール類で品質の良いものを買うようになっているという

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。地元紙によるクローガーCEOのロドニー・マクマレン氏のインタビュー記事はとても読み応えがありました。主なところはエントリー記事に記しましたが、さらに深い洞察についてはオンライン・コンサルティングで説明したいと思います。消費者行動の変化で最も意外だったのは食のアップグレード。スーパーでは買い物客の来店回数は減っていますが、それ以上に支出額は増えています。まとめ買いが大半を占めるのでしょうが、消費者はより品質のいい食材などを買っていたということです。マクマレン氏は特にチーズやビール、ワインにその傾向が強かったと話しています。そしてアップグレードはパンデミックが終息しても以前のレベルに戻ることがないと。その理由として品質の差、つまり価値を理解したからです。さらに興味深い点としてネットスーパーが隆盛になれば、生鮮品やデリ、ベーカリーで新鮮さがさらに重要になってくるという洞察も目を引きました。これも家で料理する機会がふえ新鮮な食材の味を知ったからなんでしょうね。

 モバイルアプリ等の重要性は当ブログで何度も強調しています。しかもコミュニケーションツールとしてのポイントも後藤の洞察と同じだということを指摘しておきます。

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