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インスタグラム創業者が語る「最高のプロダクト」の作り方

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本記事は、2019年11月に公開されたポッドキャスト「Invest Like The Best」『Kevin Systrom and Mike Krieger – How to Build a Great Product』の翻訳記事になります。

Instagramの社内文化

Do the simple thing first(シンプルなことからはじめよう)

この言葉は、Instagram社内のなかで、宗教的に使っていた言葉だった。人や時間が限られている中で、シンプルに始めることを推奨するカルチャーそのものだった。創業初期には、WebはDjango、言語はPython(シンプルだから)とプライオリティが置かれていた。

創業初期からケビンは、カルチャー作りを行っており、3つのバリューを起点に行動をしていた。1. コミュニティ第一、2. シンプルが一番、3. スピード重視だ。ユーザーであるクリエイターが、どうより良い写真を取りやすいかを考え続けた。資金調達をしたときは、アプリではなくHTML5だったため、シンプルにするしかなかったという理由もあったが。

Instagram社では「ジョブ理論」を愛用していた。ジョブ理論とは、『イノベーションのジレンマ』で有名なクレイトン・クリステンセン氏が考えたフレームワーク。Jobs-to-be-done(JTBD)、簡単にいうと、ユーザーが製品を「雇用する」(hire)(すなわち、利用する)とき、彼らはそれを具体的な「ジョブ」(job)のために(すなわち、特定の成果を得るために)利用している、という考え方にもとづくフレームワークのことである。

Instagram創業初期から、「まずは課題を解決しろ」とチームに言い続けていた。プロダクトを作る理由、存在する理由は、誰かの課題を解決することにあるからだ。Instagramで解決しようとした「当時のモバイルの写真」課題は3つある。

1. ほとんどのユーザーは自分の写真のクオリティに満足してない2. 写真の共有が難しい3. 写真を取ること、アップロードするのに死ぬほど時間がかかる

3つの課題に対して、Instagramは、代名詞でもあるフィルター加工によって解決し、ワンタップで共有できるようにした。アップロードについては、ユーザーが写真の説明テキストを入れてもらっている間にアップロードできるようにして待ち時間を少なくすることに成功した。(ちなみに最後のはケビンとマイクが一番誇りに思っている機能改善だとか)

ジョブ理論を気に入ってる理由は、機能性だけではない。関係性の課題解決や感情的な課題解決も考えることができるそれがわかると、自然となぜユーザーがそのプロダクトを使っているかが分かるからだ。Instagramでは、メイン機能はもちろん「ストーリーズ機能」や「タイムラプス」など各機能に対してジョブ理論に当てはめていた。

ストーリーズ機能のジョブ理論はどう当てはまるのか?

ストーリーズ機能ができる前は、Instagram上でSnapchatのQRコードを投稿するのをよく見かけた。これに対して、ユーザーは、何をハックしようとしているのか?考えたとき、友だちに自分の生活を表現したいことがわかった。InstagramのプロフィールからSnapchatのリンクを貼っていた。つまり、同じ属性の友だちに対して、今のInstagramでは見せれない部分を見せたい・それがどのプラットフォームでもよいことがわかった。

ストーリーズを開発する中で気づいたことは、元々のInstagramの「雇用」していた仕事ができなくなり、ストーリーズが生まれたということだった。初期のInstagramはストーリーズらしい投稿が多く、毎日4〜5投稿されていたが、成長とともに「クオリティの高い写真」を出すプレッシャーが増え、投稿数が徐々に減ってしまった。ユーザーヒアリングをした結果、あるユーザーから「You never double Insta(インスタで2回以上は投稿しちゃダメ)」と言われた。そのユーザーは、よほど特別な日ではないと1日2回以上投稿しないらしい。(実際にケビンとマイクも投稿する写真を選ぶようになってしまったとか…。)

新機能を追加するときに考えるべきこと

今のInstagramは、創業者が予想もしてなかったユースケースをみて機能を作ったのか、それとも課題の仮説通りだったかというと、どちらも正解。例えばストーリーズ機能は、10代の男性の行動を観察してデザインした。結果、ターゲットに人気の機能となったが、予想外だったのは、質問機能だった。10代男性は、友達に質問を送るのが好きで、当初入れる予定なかった投票ステッカーも好評だった。

Instagram blogより引用

機能を新しく追加するとき見るべきポイントは、ユーザーはあなたのプロダクトをどうハックしているか。既存機能がある中で、思いも寄らない使い方をしていたら、それをどう簡単にできるようにするか考えるといいかもしれない。

コマース機能もユーザー分析から生まれた新機能だった。2013年にInstagramの珍しい使い方を探していたとき、あるアカウントが大量に写真を消していたのだ。最初は、違法な写真をアップロードしているのかと思ったが、実際にはインドネシアの小売店が商品をInstagramで販売をしていたのだ。大量に写真を消していた理由は、DM上で値段交渉が成立し、売れた商品を消していた。

Instagramの初期のプロダクト開発

CTVニュースより引用

当時は、リソース不足のためプライオリティ付が重要だった。リリース前の4ヶ月間は、外部MTGを一切やらないと決めたふたりは、多くの投資家を怒らせた思い出があるらしい。リリース後もケビンとマイクだけで、すぐにもう2人採用したが、ユーザーが増えすぎてバグを直すだけで精一杯だった。ここでの学びは、早めに採用に集中すべきだったということだ、目の前のバグで時間をとられ、ユーザー数は増えていく悪いループにはまってしまった。おかげで、アナリティクスの準備もできてなかった。

グローバルプロダクトの壁の乗り越え方

Instagramを退職したときには、世界全体がコミュニティになりつつあるが、実際には分割されたコミュニティがたくさんあった。どのタイミングでどのコミュニティにフォーカスすべきかが課題だった。

初期の課題は、「『iPhoneでキレイな写真を取る写真家』以外のコミュニティ」を作ることだった。その壁を乗り越えるには、様々な変更をしなくてはならなくて、かなりの批判も上がったのも事実だった。その壁を乗り越えるには、様々な変更をしなくてはならなくて、かなりの批判も上がったのも事実だった。だが、Instagramの強みは、世界中の人が集まるひとつの"リビング"ではなく、様々なスペースが作られ、簡単にそれぞれのスペースにも遊びに行けること。よりユニバーサルで大きなプラットフォームになるには、少しの犠牲が伴う。上手に対応するには、コミュニティに対しての謙虚さと感謝が重要だということを学んだ。そして、失敗してももう一度やり直せる、ユーザーの信頼度を保てると信じるということ。

グローバル展開するときには、地域別の調査を行っている。そして、その時は必ず、エンジニアを同行させているそうだ。発展途上国でのInstagramの課題は、インターネットだった。アメリカでは比較的安定したネットが使えたが、インドのあるユーザーは、外のWi-Fiが安定しないため自宅でアップロードしていた。それに対して、Instagramは、現地の通信キャリアと提携することで投稿のハードルを下げ、劇的にユーザー数を増やすことができた。この戦略をアメリカでやってもそれほど変わらなかっただろう。

技術発展の背景にある、埋まってないニーズを見つけ出せ

スティーブ・ジョブズは、「最初はiPhoneは誰も欲しがっていなかった」言っていたが、実際には違うとケビンは言う。iPhoneが発売された2007年前後は、他社のウェブページのUXはとんでもなく悪かった。だからこそ、その体験を良くすることができれば必ず需要はある。つまり、技術が発展している分野で、基本的な仮説に対して疑問を持ち、埋まっていない需要を見つけ出すこと。

last100より引用

Instagramのケースだと、モバイル技術が発展している中、誰もスマホから写真を共有したいと思っていなかった。だが、モバイル技術は発展し、デジカメではなくスマホで写真を取る需要は来るとケビンたちは確信していた。

マネタイズを考え始めたきっかけはビザの取得

マネタイズを本格的に考え始めたのは、シリーズAからだった。それまでは、ブラジル出身だったマイクは、ビザの取得のため事業計画の提出が求められており、そこで考え始めた。シリーズAからベンチマークキャピタルへピッチした時に、3枚のスライドとともにマネタイズを説明をした。1枚目はユーザー数の成長グラフで、2枚目はビジネスモデル。3枚目は、Instagramのアプリのスクリーンショットで、(当時は広告なかったが)アパレルブランドのBanana Republicが表示の広告らしきものが表示していた。

高のプロダクトを作るということを忘れるな

Instagramでの学びは、最高のプロダクトを作るということを忘れてはならないということ。創業者は、組織や管理などに時間を取られてがちだが、どれだけ時間を使ってユーザーの課題を解決できるプロダクトを作れるを考える。部下からの提案を待っているだけだと、組織の方向性もずれてくる。スケールすると、組織が重視されがちだが、一番はプロダクトとユーザーである。

失敗を恐れないことも重要だ。Instagramも実は多くの失敗作を出している。例えば、Boltというワンタップで写真・動画が送れるアプリをリリースしたことがあったが、すぐに失敗した。ストーリーズは成功したから覚えてられるが、その前に失敗した15個ものプロジェクトは忘れてしまった。

そして、ハングリー精神を忘れてはならない。ひと時でも休んだり、自分のプロダクトが一番だと思うと調子に乗ってしまう。シリコンバレーでは、その調子に乗ったすきを狙って、素晴らしいプロダクトを作るのだ。今の成功は、今の成功は明日に繋がる訳ではない。常に世の中が変わり、競合が出てくる中で、被害妄想も必要だったりもする。

最後に、謙虚に自信を持つこと。自分のプロダクトに対して圧倒的な自信を持つことが大事だが、間違っているかもしれない謙虚さも必要。Instagramを設立する前は、ふたりともテック業界それなりにいい仕事をしていて、自分で起業をするなら1度しかチャンスがないと思い込んでいた。もし、失敗したら、調達もできなくなり、ただ失敗したやつらと思われる恐怖があった。だからこそ、ユーザーに必ず満足させるプロダクトを作ること、自分たちの判断やサービスを何度も疑うことし、成功率を上げたと確信している。

Instagramをリリースした時も、ピボット前のプロダクト、位置情報アプリ「Burbn」にいつでも戻せるようドメイン等残していた。しかし、Instagram公開4時間でユーザーが増えすぎてサーバーを保つためにBurbnのシャットダウンを余儀なくされた。

Quoraの投稿より引用

現実主義な創業メンバーたち

創業メンバーが、ふたりともビジョナリー型ではなく、今ある課題に対してフォーカスする現実主義のタイプだった。今の問題を解決すれば、将来の問題をかいけつするチャンスが来ると信じていた。その間にコミュニティを作り、そのコミュニティに丁寧に大切に接することができれば、大きなリターンが得られると考えていた。

Bloombergより引用

その反動もあり、チームメンバーからたまには5年後の未来を語ってほしいと言われることがあったそう。それに対して「まず5年後残っててくれ」とケビンは言う。ある時、こっそり、ふたりで長期的な未来を想像して、ハードウェアのプロトタイプを作ったことがあったらしい。しかし、途中でだめだと気づき、今ある課題に集中した。

Facebookへのバイアウト

Incより引用

Facebookにジョインをして、驚いたことはエンジニアの管理やマネージメントのトレーニングをかなり注力してくれること。反対に良くなかったことは、古くからいるメンバーが管理職にすること。Instagramでは、管理職はただの役割でしかない。より力を持つためではなく、組織の管理やチーム作りに興味がある人がやるべきと考えている。なので、Instagramでは、管理職を試すこともできるし、向いてなければプレイヤーとして戻るだけ。なので、Instagramでは、管理職を試すこともできるし、向いてなければプレイヤーとして戻るだけ。そこには降格も昇格もない。管理職のありがちなパターンは、何でもできると思ってしまうこと。管理職になる初年度に多くのトレーニングやメンターシップを提供することが重要だと話をしている。

Instagramを退社して

このポッドキャストを収録を終えたときには、ケビン・シストロム(CEO兼共同創業者)とマイク・クリーガー(CTO兼共同創業者)は、退社からちょうど1年が経ったころだった。

Loop Newsより引用

昨年9月に退職したケビンとマイク、マイクは、Instagramにいた頃は経営に集中していたためできなかったコーディングひたすら毎日書いているとか。CEOのケビンは、3ヶ月の長期休暇でスキー旅行に行こうと思ったが、1週間で暇になり、Amazonひたすら本を読みふける日々を過ごした。その中でもマイクの勧めでもあった、機械学習について興味持ち始めた。

ケビンは、「Someday / Maybe List(いつか・もしも時間があればやりたいことリスト)」を作っていて、辞めてから何をするか迷っていた時にかなり役に立ったそう。その中にあった、命がけのテクニカルなことを学びたいと思い、飛行訓練をし、6ヶ月かけて、飛行免許を手に入れたそう。起業家は、会社以外の大きなプロジェクトをやり機会がないので、こういうリスト(学びたいもの、行きたい場所など)を作って、気晴らしに何かに集中できるのでおすすめしている。

エンジェル投資家としても活躍しているふたりだが、シード投資はしないと言っている。シードだとプロダクトもないので、それ以降のステージなら、16人(買収直後の従業員数)から1,000人規模(退社時点の従業員数)に成長した組織のモチベーション管理や良いプロダクトの開発などについては語れるので、投資機会があるかも?と述べている。投資は、アイディアを羽ばたかせられるチャンスを提供することと、様々なレベルのリスクを扱うこと。ユーザーをしっかり理解していて、誰も解決していない課題を解決しているチームに投資意欲を見せている。

起業家へのアドバイス

「何らかの分野のエキスパートではないなら、その分野を諦めること、やらないこと」by ケビン・シストロム(CEO兼共同創業者)

ケビンとマイクは、技術のエキスパートではなかった。プログラミングは少しだけ知っていたが、本当に少しだけ。経営についてはまっさら。大事なのは、自分のスキルセットが足りないことの自己認識であり、自分よりその分野に長けている人や学べる環境を作ることだ。

「どれだけ良いアイディアでも批判される」byマイク・クリーガー(CTO兼共同創業者)

どれだけ良いアイディアでも批判はされる。他人からの褒め言葉は期待しないほうがいい。ただ、「褒められない」というのは、悪いサービスとは限らないが良いサービスであるとも限らない。大事なのは、良いか悪いか早く判断できるマインドセットを持つことが重要だ。

おまけ  Instagramとコーヒーの関係

初期のInstagram社では、ケビンが新入社員にエスプレッソの淹れ方をレッスンするのがお決まりだった。従業員に良いオンボーディング体験だったのもあるが、大学時代バリスタだったケビンいわく、変にエスプレッソマシンに触られるのが嫌だったからだったそう(笑)マイクはブラジル出身だったが、コーヒーが嫌いだった。ただたまたま入ったカフェで素晴らしい体験をして以来ハマりだしたそう。そのお店が初期のブルーボトルコーヒーだった。

編集追記

彼らが退職後、はじめてリリースしたプロダクトは、新型コロナ感染追跡サイト「rt.live」を公開されました。感染症流行の予測に使われる感染症数理モデルの実効再生産数を使って、1人の感染者から感染した平均の人数を追跡しているそう。今後の彼らに注目ですね。

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