この法律により、中国国民は、飲食店で適切な量を注文しなくてはならなくなった。しかし何をもって「適切」とするのかは解釈次第だ。
By Viola Zhou Translated By Ai Nakayama TOKYO, JP
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中国で、フードロスを禁止する〈反食品浪費法〉が可決された。これにより飲食店の客は、自分たちが食べられる量以上の注文をすることを禁じられる。何千万人もの外食体験を一転させる可能性がある影響力が大きい法律だが、不明確な点もある。
4月末に施行された本法律は、2020年、習近平国家主席がフードロスについて、中国の食料安全保障を脅かす「悩ましい」問題だと述べたことに端を発して中国全土に広がった、フードロス削減キャンペーンの一環だ。吃播(モクバン/モッパン)と呼ばれる大食い番組・動画の撮影、配信も禁止される。
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今現在、中国は食料危機に瀕してはいない。しかし、8月にフードロス削減キャンペーンを始めたさい、新型コロナウイルスのパンデミックによる経済の混乱が警鐘を鳴らし、中国の食料安全保障を万全のものとする必要があると教えてくれた、と習国家主席は述べた。国連世界食糧計画(WFP)は、パンデミック中に起きた食料供給チェーンの混乱により、2億7000万人もの人々が飢餓寸前の状態に陥ったと報告している。
中国の地方自治体はそれぞれ、国家主席の命令に従うべく、様々な対策を実施してきた。
企業の社食を役人が訪ねて食べ残しをチェックしたり、飲食業界では〈N−1〉注文(参加者の数よりも1品少ない数の料理を注文すること)が推進されてきた。
料理の量を少なめにするという対応をしてきた飲食店もある。長沙市では、店の入り口に体重計を用意し、客の体重に合った料理を提案した店もあった。
また、TikTokの中国版であるDouyin(抖音)をはじめとするショートムービーの投稿サイトでは、かつて人気を博した大食い動画が検閲対象になった。
中国メディアによると、中国では毎年3500万トンものフードロスが発生している(一方米国のフードロスは、米国農務省の発表によれば少なくとも年6600万トンだ)。
この新しい法律が施行されると、客に過剰な料理を注文させて廃棄を増やした飲食店には、1万元(約17万円)以下の罰金が科される可能性がある。
また、大食い動画の制作、放送も規制され、違反したテレビ局やインターネットメディアには10万元(約170万円)以下の罰金が科される。
宴会の幹事や飲食店の客も、外食のさいは適切な量の料理を注文することが求められる。
ただ、個人客の注文に関してはどのように取り締まりがなされるのかは定かではなく、個人の違反者への罰金も明記されていない。中国では、客をもてなす側が、食べきれないほどの料理を注文する習慣がある。富やおもてなしの心を示すためであり、仕事関係の会食、親戚が集まる宴会では特にそうだ。
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5月4日には、南京市で〈反食品浪費法〉に基づく初の警告がパン屋になされた。そのパン屋では、失敗したパンや作った日に売れ残ったパンを捨てていたそうだ。
その後、パン屋の店主は、売れ残りのパンを寄付したり、サンプルとして買い物客に無料で配布することを約束した、と地元の新聞、揚子晚報が報じている。
また先日、国内で人気のオーディション番組の放送が政府により中止された。番組が飲料ブランドとコラボレーションして推しへの投票企画を進めていたのだが、投票のために牛乳飲料を大量に購入したファンが飲料を捨てる映像が拡散し、物議を醸していたのだ。
ネット上では、フードロスの取り締まりが極端な方向へと進むことを懸念する声や、ひとびとが基本的な楽しみを享受する自由を侵害するのでは、という疑問の声も上がっている。
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