

■ウォルマートのインキュベーション部門であるストアNO8は14日、声を使って買い物をするボイスショッピングの進捗状況を明らかにした。
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ウォルマートはグーグルのスマートスピーカーを使い、会話による摩擦のない買い物体験を提供する。
ウォルマートによるとコロナ禍によりネットスーパーを含むEコマース需要は急増しており今後も成長が続くと見ている。
特にボイスショッピング(Voice Shopping)もしくはボイスコマース(Voice Commerce)、カンバセーショナル・コマース(Conversational Commerce)とも呼ばれる音声指示による買い物は2030年までにEコマースの30%を占めると予測しているのだ。
アメリカ人は1日あたり約2時間も家事についやしている。子供を学校に送ったり洗濯や掃除、片付け、炊事、買い物まで忙しい中で家事を切り盛りしている。
家事に追われる人たちに向け、ボイスショッピングを提供することで4つのメリットがあるとしているのだ。
一つは時間の節約であり、時短を提供できることにある。2つ目として選択肢が多いほど人は不幸を感じやすくなるという「選択のパラドックス(Paradox of Choice)」からの解放だ。
3つ目は時間や場所を選ばないことであり、4つ目には自然な会話の流れでできることにある。
実際にボイスショッピングはどのようなものだろうか?
ウォルマートがデモで見せていたのは、冷蔵庫を開けたら牛乳がほとんどない場合、グーグルやアップルのスマートスピーカーにむかって「ウォルマートで牛乳を再注文して(Reorder milk on Walmart)」と声をだすことだ。
自動的にウォルマート・アプリが起動し、過去の注文履歴を認識し、最も頻繁に買い物されたメーカーで特定の種類と容量まで人工知能(AI)が判断してカートに載せることになる。
ネットスーパーで注文する際、カーブサイド・ピックアップや宅配サービスでは受け取り時間を指定する必要がある。
それも「ウォルマートの時間を予約して(Book a time for Walmart)」と会話することで、ピックアップ時間枠もしくは宅配サービスでの到着時間枠をかんたんに設定できるのだ。
ウォルマートは「会話」という摩擦のないショッピング体験を提供し、Eコマース顧客体験の向上を図ろうとしている。
ウォルマートのボイスショッピング「テキスト・ツー・ショップ(Text to Shop)」はすでに一部の地域でテストを行っており、今後は対象地域を拡大していく。
ボイスショッピングで先行しているのはスマートスピーカーのエコーを開発する、ネット通販最大手のアマゾンだ。アレクサに指示することで音声で簡単にショッピングリストを作成可能となっている。
例えば家庭の主婦が台所で手が離せないとき「アレクサ、ラップを買い物リストに入れて」「アレクサ、ケチャップを買い物リストに加えて」と話すだけでハンズフリーで追加できるのだ。
現在18店舗を展開しているアマゾンの食品スーパー、「アマゾン・フレッシュ(Amazon Fresh)」ではショッピングリストを使ってさらに便利な買い物体験を提供している。
アマゾン・フレッシュはスマートショッピングカートの「アマゾン・ダッシュカート(Amazon Dash Cart)」を導入している。
ダッシュカートにあるスクリーンにショッピングリストを表示させて、モバイルアプリを手にもつ必要がなくハンズフリーで買い物ができるようになっている。
ダッシュカートの使い方はアマゾン・アプリでアマゾン・フレッシュ用のQRを表示させ、それをカートで読み込ませせれば、自分のアカウントと同期する。事前に作成しておいたショッピングリストも自動的に表示するのだ。
買い物をしながらリストにある商品のチェックマークをタップすれば商品がリストから消える。ショッピングリストを確認しながら買い物すれば買い忘れがなくなるのだ。
最近ではアレクサのショッピングリストを家族や友人などにも音声で共有できる機能を追加している。
一方でアレクサは買い物履歴から特定の商品を認識してリスト化することまではできていない。
オレンジジュースはオレンジジュースとしてショッピングリストに加わるだけで、ミニッツメイドもしくはトロピカーナ等のメーカー名や果肉なし・たっぷりの種類、容量を指定できないのだ。
テキスト・ツー・ショップでフリクションレス(摩擦なし)で会話のような買い物体験を提供できれば、ウォルマートの成長戦略の要となるサブスクリプション・サービス「ウォルマートプラス(Walmart +)」の拡大にも弾みがつくことになる。
ボイスショッピングの覇権をかけて、これからの10年はウォルマートとアマゾンによる新たな競争が激化するのだ。
トップ画像:ウォルマートのストアアプリ。売り場に行く必要のないネット注文ではボイスショッピングでアプリさえタップしなくなる?
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。ここ数年、米国の流通業界では「継ぎ接ぎのない」ことを意味するシームレス(seamless)から、「摩擦のない」という意味のフリクションレス(frictionless)を頻繁に使うようになりました。フリクションレスの意訳は「手間がかからない」です。音楽視聴で例えれば、CDを購入後、封を開け、プレーヤーにCDをローディングして聞いていました。時間と手間がかかっていたのです。CDの保管にも時間と手間がかかります。反面、今はスマートスピーカー等に「ドリカムの『次のせ~の!で』をかけて」と言うだけ。時間も手間も所有、プレーヤーも不要。「ドリカムの新作かけて」で曲名さえ不要かも。こういったフリクションレスの流れは止まりません。ファンに時間と手間をかけさせないため海外のアーティストはCDばかりかシングルヒットを出すこと自体をあきらめています。時間・手間をかけない流れは買い物にも波及します。ボイスショッピングの拡大でお客は売り場に来ないし、アプリをタップすることも無くなるとウォルマートは見ているのです。
ファンに向かって「CD買ってください」や顧客に「お店に来てください」と訴えるのはいまや売り手の勝手な都合。「ビジネスの目的は顧客を創造すること」であり、その顧客にどんな価値を提供できるのか?なのです。お願いではありません。
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