Fumitoshi Goto

「チェーンストアで本当の豊かさを提供できない」その理由とは?

激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

在米28年のアメリカン流通コンサルタント

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■インフラストラクチャー(infrastructure)という言葉がある。日本でも30年ぐらい前から頻繁に使われる様になった言葉だ。

infraは「下に」を意味する接頭語であり、structureは「構造」を意味し、infrastructureは「下部構造」「下支えをするもの」の意味から転じていまや生活の基盤になる施設ということになる。

生活インフラとは生活を営む上で最小限必要な施設ということになる。

ウォルマートなどアメリカの大手流通企業はチェーンストアからプラットフォーマーに変貌しようとしている。

生活インフラでチェーンストアを喩えれば、人々の暮らしに水道管を施設し給水したことになる。

水道管を街中に張り巡らすチェーンストアによって、バケツを持って川や井戸まで水を汲んでくる時代から大きく生活が変わったのだ。

随分前から流通先進国のアメリカでは提供している水質をこれ以上あげても本当の豊かさを提供できないと気づいた。

アマゾンの台頭により、もっと生活を豊かにするには既存の水道管より、電気やガスも必要と人々が理解しだしたのだ。

大手チェーンストアはEコマースを行い宅配サービスやカーブサイド・ピックアップのネットスーパーも展開するようになった。

同時にチェーンストアの新規出店が減少し始めた。10年前まで優良チェーンストアだったベッドバス&ビヨンドは店舗数を増やしながら低迷し始めた。

1年間に100店舗以上出店していたホームセンター最大手チェーンのホームデポは新規出店を全くしなくなった。ターゲットはピックアップ拠点となる小型フォーマットしか増えていない。

登記上の社名を2018年2月1日に「ウォルマート・ストアズ・インク(Wal-Mart Stores Inc.)」から「ウォルマート・インク(Walmart Inc.)」に変更したチェーンストア最大手は2年連続で店舗数を減少させている。60年近い歴史のある同社にとって店舗減少は初めてのことだ。

大手チェーンストアは店舗出店より(生活インフラであるところの)電気やガスの施設を拡大できるよう、シームレスなオムニチャネルの構築に励んだのだ。

最近では買い物インフラの整備の拡充にともない、生活インフラの道路や交通、港湾になるラスト・ワン・マイルの開発にも忙しい。

マイクロ・フルフィルメントセンターやカスタマー・フルフィルメントセンターを増設しながら、ドローンや自動運転車による宅配のテストも行っているのだ。

スーパーマーケット最大手チェーンのクローガーはネットスーパー用の物流施設を20ヶ所に拡大するのだ。

ウォルマートではヘリコプター型とは異なる小型飛行機によるドローン宅配のテストも始めている。

生活インフラをさらに整えるには学校や公園、病院も必要になってくる。

チェーンストアは買い物の利便性を高めるためストアアプリに多くの機能を付加している。ストアアプリは大手チェーンストアのデジタル・トランスフォーメーション(DX)にとって欠かすことのできないツールとなっている。

ストアアプリはバーチャルな売り場だけでなくカスタマージャーニーのプラットフォーム化しているから資産なのだ。

流通最大手チェーンのウォルマートは1月、自社内の広告事業を刷新しオムニチャネル化に合わせてメディア売上を拡大していくことを発表した。

生活に不可欠となっているネットスーパーなどに対応したデマンド・サイド・プラットフォームを応用して利便性のある買い物を提供する。人工知能で利用者に「これ、欲しかった!」と気づかせるのだ。

同時にウォルマートは商品検索後に販促したい商品をページのトップに据える、クリック課金制のスポンサープロダクト広告等で広告売上を伸ばす。

直近でウォルマートは動画共有SNSアプリ「ティックトック(TikTok)」で視聴中に買い物もできるショッパブル・ライブ・ストリーミングも始めている。

人気のインフルエンサーがリアルタイムで放送しながら、オススメ商品を紹介し、視聴者は動画から離れることなく買い物ができるライブイベントだ。

生活インフラの一つとなる公園で有名ミュージシャンによるライブ・コンサートのようなイベントを提供するようなものだ。街の憩いの場となる公園で生の音楽に触れ生活がより一層、豊かになる。

 多店舗展開で水道管と下水しか提供しなかったアメリカのチェーンストアは、プラットフォーマーにトランスフォームすることで国民の生活に本当の豊かを提供しようとしているのだ。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。玄人と素人を分けるのはその業界のフレームワーク(枠組み)が頭に入っているかどうかです。しかも玄人の知識の多くは、自分が直接体験して得た情報(一次情報)から導き出したインサイト(洞察)が基になっています。言い方を変えれば玄人は常に一次情報を得ながら、フレームワークをアップデートしていくのです。フレームワークは抽象化とも言えます。一次情報となる具体的な事例を常に得ていることから抽象化でき、フレームワークとなるのです。抽象化に枠組みができると喩え(アナロジー)ができるということ。頭の良い人というのは、たとえるのが抜群に上手いです。具体と抽象をいつも行ったり来たりしているから。今日のエントリー記事にはアナロジーを使って、なんとか今のアメリカのチェーンストア動向を表現してみました。生活インフラに喩えれば、日本のチェーンストアはいまだに給水のみです。残念ながら商品や売り場を極めようとすることで生活者置き去りのガラバゴスタイプになりつつあります。

 横文字が多くて申し訳なく思うのですが、ウォルマートはサブスクリプションにショッパブル・ライブ・ストリーミング、クローズド・ループ・オムニチャネルで売上を伸ばそうとしています。流通先進国では100店舗から200店舗、さらに500店舗、1,000店舗とお店を増やすだけでは生き残れなくなってきています。

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