新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、もっとも求人が減ってしまった販売職。昨年秋ごろから徐々に回復を見せ始めましたが、ここ最近のマーケットはどうなっているでしょうか。「ラグジュアリー」「デザイナーズブランド」「セレクトショップ」「アパレル」「雑貨・ライフスタイル・コスメ等」の5つのカテゴリーに分けて、最新の販売職マーケット情報をご紹介します。
【参考】1年前の2020年11月に実施した座談会はこちら
<アパレル販売職>コロナ禍以降、求人は動いている?今の転職活動に必要なことは?スタッフ座談会
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編:みなさんこんにちは。今回のテーマは「販売職の最新マーケット情報 2021年版」です。
まずは簡単にみなさんの自己紹介をお願いいたします。
長野:営業ユニットリーダーの長野です。セレクトショップ、アパレル、外資・ラグジュアリー、スタートアップまで、幅広い企業を担当し、企業の採用課題解決のサポートをしています。
竹島:営業ユニットリーダーの竹島です。関西出身で、過去には関西エリアも担当し、現在は東京で同じく幅広い企業を担当しています。
須藤:キャリアアドバイザーの須藤です。ハンドバッグブランドの店長・VMD・人材育成経験を持ち、現在はキャリアアドバイザーとして店長職、営業、EC運営、デザイナーなど幅広く転職サポートさせていただいています。
山村:キャリアアドバイザーの山村です。キャリアアドバイザー・営業どちらも経験し、現在は幅広く全国、特に福岡エリアのご支援に注力しています。
<外資・ラグジュアリーブランド>はもっとも勢いがあり、ほぼコロナ禍前の水準にまで回復
編:外資・ラグジュアリーブランドは昨年夏ごろからいち早く求人が回復していましたが、この1年の動きはいかがでしょうか?
長野:販売職の求人に関しては、外資・ラグジュアリーブランドがもっとも求人が動いています。時期によって多少波はありますが、大きな流れで見ると右肩上がりに増加しています。コロナ禍前と同等レベルまで戻ったと言ってもよいかもしれません。
編:外資・ラグジュアリーブランドで求人が多数発生している背景は何ですか?
竹島:まず、国内ブランドとの大きな違いとして、売上が伸びているため採用にブレーキが掛かっていないことが前提としてあります。欠員補充のご相談もいただきますが、新規出店に伴う複数名採用などが増えている印象です。
長野:派遣契約から正社員化へ、という動きがあったり、地方店舗で、販売代行会社から直営店に切り替えるケースが見られたりすることも、採用が強化傾向にある理由のひとつですね。
編:都心部と地方エリアでは採用傾向に差はありますか?
山村:地方エリアのほうが求職者の数が少ないため、企業にとって採用難易度は高いのですが、ブランドに必要な経験・スキル・マインドを備えた人を採用したいというスタンスは変わりません。直近では、外資・ラグジュアリーブランドの中でもより高価格商材を扱うブランドの求人をお預かりするようになりましたね。昨年は、地方エリアではほとんどなかったので、全国的な市場の回復を感じます。
須藤:確かに、高価格帯の宝飾系ブランドの求人はここ数か月で増えましたね。一方、求職者の方の動きには大きな変化がなく、ライバルが少ない状況なので、外資・ラグジュアリーブランドへの転職を考えている方には、すごく良いタイミングだと思います。
長野:いつまた何のタイミングで求人が終了してしまうかもわかりませんから、気になる求人を見つけたら動くことをおすすめします。
<デザイナーズブランド>はマーケットに影響されず、マイペースに採用を維持
編:20年の座談会では、マーケットに左右されにくい市場のため、コロナ禍前後に関わらず、採用スタンスにほぼ変化はなかった、という話でした。今も変わりませんか?
長野:求人の増減に関しては、ほとんど変化はありません。ただ、採用ハードルはやや上がっている気がします。即戦力、つまり売り上げを作れるかどうかがより重視されている印象です。コロナ禍影響というよりは、ブランドの採用計画の中で、今は即戦力、リーダークラスが欲しいというニーズが高いということだと思います。
竹島:セレクトショップに卸している、とあるデザイナーズブランドの方と話をしていると、地方のローカルセレクトショップではファッションが好きな顧客が動いているため、発注数は変わらないとのことでした。コロナ禍における売上影響も、他のカテゴリーと比べると小さく、良い意味でマイペースに採用ができているのだと思います。
山村:コアなファンが支えているブランドというのは大きな強みですね。今後も欠員や産・育休などによる補充採用は、不定期で発生すると思うので、目指すブランドがある方は、小まめにチェックしておくとよいでしょう。
<セレクトショップ>事業状況によって採用スタンスは大きく異なるも、大々的な採用再開はまだ先か
編:先ほど、ローカルセレクトショップの話が少し出ましたが、全国展開している大手セレクトショップはいかがでしょうか?昨年同様、現在も厳しい印象はありますが…。
竹島:はい。引き続き厳しいですが、一部の企業では、今年の夏ごろから、販売職採用を行いたいという声を耳にするようになりました。この1年半、ほとんど販売職採用を行ってこなかったため、欠員はそれなりに出ているようですが、どこまで欠員補充や増員にコストを掛けるか、という判断は慎重な様子です。
それでも必要な採用に関しては、自社のリクルートページや求人広告、クリーデンスのようなエージェントなどを使って行うこともあると思います。
長野:今の事例は比較的前向きなケースですね。自社リクルートページも含め、一切採用の兆しが見えない企業もまだまだあります。
須藤:むしろ販売員が余剰状態だという企業の話も耳にしました。総じて、まだまだ販売職採用を積極的に行うステージにまでは戻っていない、というのがホンネではないでしょうか。
編:もし目指したい企業・ブランドがある場合は、中長期的なスタンスで根気強く情報収集していくことが大切ですね。
須藤:そうですね。ただ、「いつかは(求人が)出る」とも限らないのが実情なので、遠からずの転職をお考えの方は、少し視野を広げて、いろんな可能性を考えてみるのもひとつかもしれません。
<アパレル・SPA>昨年同様、事業縮小・ブランド終了など厳しい企業と、体力があり積極採用を継続する企業の二極化に
編:アパレルは去年、もっとも厳しいと言われてきました。
長野:いわゆる百貨店系アパレルに関しては、ブランド終了や店舗閉店などに伴って、むしろ人数を削減してきた1年で、よほどの事情がない限り、採用する気配は感じられません。
編:そこは変わりありませんね。
長野:一方、ショッピングビル系アパレルや大手SPAなどで、コロナ禍でも前のめりな経営戦略で動いてきた企業や、売上が戻りつつあるような企業は、自社リクルートサイトで年間100~200名単位で採用しているケースもあります。アパレル・SPAの中でも二極化しているようです。
編:業績と連動しているということですね。
長野:はい。去年と同じ話になってしまいますが、求人の有無だけでなく、日ごろからファッション系のニュースをチェックするなどし、企業の経営状態や、動向全体に目を向けておくことをおすすめします。
<雑貨・ライフスタイル・コスメ>は時流に乗って売り上げを伸ばせている企業は積極採用継続中!
編:アパレル・ファッションとコスメの親和性の高さから、コスメのBAへと転職される方もいらっしゃるという話も伺いました。
長野:百貨店のコスメフロアに入っているようなブランドよりも、ショッピングビルや路面店など、販路を積極的に拡大しており、ライフスタイルそのものをご提案するようなブランドの方が、アパレル・ファッション経験との相性が良い気がします。実際に転職事例も見られています。
山村:コロナ特需で業績を伸ばしたバラエティショップや雑貨系ショップなども出店が相次いでいたりし、販売員の需要は高いですね。
須藤:「ライフスタイル」「ヘルシー」「自然」といったキーワードが今のトレンドのひとつでもあるので、うまく合致した企業は業績も伸びていますし、採用も活発です。コスメだから、雑貨だから、インテリアだから…というよりは、今の時代に合わせて拡大路線で動けているかどうかがポイントにありそうです。
長野:今の時代に合わせて、という意味では、去年と同様、リユースの成長も見逃せません。単にリユース品を販売するだけでなく、オリジナルブランドを立ち上げて、新品とリユース品のミックス提案を行うような企業も増えており、ファッションという観点で見ても、まだまだポテンシャルのある業態だと思います。
編:クリーデンスでも、「ファッション」という言葉を広くとらえ、いわゆる「身に着けるもの」だけでなく、ライフスタイルを彩るさまざまなアイテムを扱う企業の求人をお預かりしています。
須藤:さまざまな販売職の方のキャリアを伺っていると、ずっと同じアイテムを扱っていた人ばかりではありません。ご自身の販売スキルの幅を広げるという観点から、広く色んな求人を見てみると、何か興味を惹かれるものがあるかもしれません。
ご自身の転職タイミングを見極めるためにも、情報収集が重要
編:では、次は販売職で転職を考えていらっしゃる方のお話を聞いてみたいと思います。最近はどのようなご相談が多いですか?
山村:一番多いのは、「自分に紹介してもらえる求人はありますか?」というものです。去年と比較して求人の増減は?どんな求人が動いている?と、時系列の変化を気にされる方や、求人をご紹介差し上げた際、企業の採用熱度はどうですか?と踏み込んだ確認をされる方もいらっしゃいます。
編:どのような理由で気にされていらっしゃるのでしょうか?
山村:ご自身の転職タイミングを見極めるためです。もう少し待った方が良いのか?待っても変わらないなら今動いたほうが良いのか?といったことですね。クリーデンスでは、毎月の求人数や登録数などのデータがありますので、それをお見せしながらご説明すると、転職意向や熱度がぐっと上がる方は多いです。「誰かに背中を押して欲しい」という方が多い気がします。
須藤:退職が決まっている方、離職中の方はスピードを求められる方がほとんどですが、現職中の方は、転職を決意してからご相談されるというよりは、転職を考え始めたタイミングでご相談いただくケースが増えています。
編:去年は「自社が厳しいので転職したい」と切羽詰まった方が非常に多かったですが、最近はご自身で転職タイミングを見極めたい方が増えたのですね。
須藤:そうですね。ご相談いただき、情報収集をする中で徐々に決意が固まって、転職活動をスタートされる方が多いです。
山村:最近は特に、「何か良い求人はありませんか?」とよく聞かれます。誰だって良い求人と出会いたいし、そこで転職を決めたいですよね。
編:そうですよね。気持ちはとても分かります。
山村:ただ、良い求人は人によって違います。仕事が厳しくても年収が上がっていく仕事、残業が少ない仕事、個人売り重視が良い、チームワークを大切にする職場が良い、家から近い…そういう、「私にとっての良い求人とは?」を考えることが、最初のステップだと思います。
厳しい時代を生き抜くため、顧客に寄り添い、売上を作れる方のニーズが増加。
企業ニーズに沿った自身の強みをアピールすることが重要。
編:そうしたステップを経て、最近はどのような方が転職成功されていらっしゃいますか?
須藤:求人の多さと比例して、外資・ラグジュアリーブランドに転職した方が圧倒的に多いです。
編:なるほど、やはり求人が多い分、転職成功者数も多いということでしょうか。転職成功した方の共通点はありますか?
須藤:ひとつは、強みを聞かれて明確に答えられる方です。特に最近は顧客を持っている方、顧客づくりに強みがある方のニーズが高く、企業から面接で聞かれることが増えました。顧客数や客単価、売上などの数値実績をアピールポイントに加えながら、どうやってそれを実現したのか?という具体的なプロセスが話せる方は、内定を得ている方が多いです。ただ、1人よがりではなく、ご自身の強みと合う企業に出会うこと、そして、企業ニーズに合ったアピールをすることが大切です。
編:と言うと?
須藤:実績よりもホスピタリティを重視しているあるブランドの面接で、お客さまに対するホスピタリティマインドや具体的なエピソードを伝え、企業から高い評価を得たケースがありました。ブランドごとに重視するポイントは異なりますので、店舗見学などを通じて、ご自身が働くイメージを持てるかどうかを捉えておくと良いでしょう。
編:他にはいかがでしょうか?
山村:転職成功する方は、将来どうなりたいか、どんな経験とスキルを身につけたいか、などの目的が明確です。転職しようと思ったその瞬間にはまだ明確でなかったとしても、転職活動をきっかけに、改めてご自身のことを考える時間を取り、キャリアの棚卸をすることができれば、可能性はぐっと上がります。
編:いずれも転職活動における、本質的な部分だと思います。やはり基本的な準備を怠らずしっかり行うことが重要なのですね。
須藤:クリーデンスのようなエージェントサービスは、職務経歴書の書き方や面接の受け方といった一般的なアドバイスから、企業ごとの採用背景や面接のポイントのような、表には出てこない貴重な情報まで、多くのサービスを受けることができます。情報を得れば得るほど準備の質が上がりますので、ぜひうまく活用いただければと思います。
山村:実際、色んな情報を得るために質問をたくさんくださる方は、結果的にインプットの量が増え、ご自身で納得された上で活動されるので、結果的に転職成功に繋がる率が高い気がします。私たちからもできるだけ多くの情報をご提供いたしますが、疑問や質問があれば、お気軽にいただけると嬉しいです。
現職で成し得てきたことがあるからこそ、次の会社にも「この人と一緒に働きたい」と思ってもらえる
編:転職活動をする上でしておくと良い準備のポイントを教えてください。
山村:求人は生ものなので、企業の採用背景や採用熱度、採用ハードルなどの状態把握が重要です。特に採用ハードルや条件などは、同じ求人でもタイミングによって変わることがあります。そうしたリアルな情報があるのとないのとでは、転職活動の成功可能性は大きく変わります。そのためにも、私たちエージェントのような、信頼できるパートナーとの出会いをおすすめいたします。知りたい情報をすぐに聞けるプロが近くにいると、気持ち的にもとても安心すると思いますよ。
須藤:最近、今の仕事と転職を切り離して考え、今の会社でやりたいことがなくなった、やる気がなくなった、だから転職したい。とご相談いただくケースが増えています。しかし転職は、今の仕事と地続きにあります。現職で成し得てきたことがあるからこそ、次の会社にも「この人と一緒に働きたい」と思ってもらえます。今すぐに転職する、しないに関わらず、今の環境で実績を残し続けることを意識してみてください。
竹島:前述でも出ましたが、企業の特性やニーズに合わせて自己アピールをカスタマイズすることです。「私はこういうことをやってきました」と自己分析できる方は多いのですが、それが応募企業のニーズと合っているのか?このブランドでどのように実力を発揮できるのか?という、相手を見たアピールができる方は多くありません。自己分析とセットで応募する企業研究を必ず行いましょう。それによって、転職成功率も上がると思います。
長野:転職を考え始めてから、本格的な活動を開始するまでには、気持ちの整理や情報収集など、少し時間が掛かりますよね。その間に、書類選考に必要なキャリアシート(履歴書)と職務経歴書だけでも作成しておくことをおすすめいたします。
求人は突然発生し、そして突然終了してしまうものです。応募したい求人が出てから作成するのでは、ライバルから一歩出遅れてしまいます。ここというタイミングですぐ動くためにも、ぜひスタートダッシュのための準備をしておきましょう。ご自身のキャリアをふりかえる良い機会にもなりますよ。
販売職の仕事に誇りを持つこと、「私はこれがやりたいんだ!」という強い意志が大事
編:クリーデンスでは、日々多くの販売職の方からご相談をいただいています。まだまだマーケットが安定しない中、ご不安も多いことでしょう。そんなみなさんへ、ぜひメッセージをお願いします。
長野:ECが成長しても、お店に足を運んで実物を見てモノを買う、という場は絶対になくなりません。私もお店に足を運んで販売員さんに勧められて洋服を買うのが好きで、販売職って素敵な仕事だなと思っています。コロナ禍のような大きな変化が訪れるといろいろ不安にもなると思いますが、ぜひ今までの経験を大切に、好きな仕事を頑張っていただきたいです。
竹島:販売の仕事に限りませんが、これからの時代は、「私はこれがやりたいんだ!」という強い意志が大事になってくると思います。ブランド、商材、接客スタイル、マネジメントなどなど、それは人によって異なると思うので、自分がやりがいことは何だろう?ということを、転職する・しないに関わらず、ぜひ一度考えてみてください。その想いがこれからの仕事の軸になってきますし、転職する際にも、企業から求められるポイントになってくると思います。
須藤:「10年後に消える仕事」って、雑誌や記事の特集などでありますよね。ああいうところに、アパレル販売職って見たことないんですよね。ホスピタリティによって成り立つ仕事って、人でしか届けられないものだと思います。特にコロナ禍以降、自身の存在意義って何だろう?というお悩みを伺うことが増えましたが、ぜひこの仕事に誇りを持っていただきたいです。いつでもご相談ください。
山村:コロナ禍においてもブランドのロイヤリティを高め続けることができているのは、間違いなく販売員さんの努力によるものだと思います。お店に足を運び、洋服を手に取り、販売員さんとの会話を楽しむことで、気分転換になり、救われたという方はたくさんいらっしゃるはずです。今を乗り切れているということが、将来の原動力やこれからのキャリアの支えになると思いますので、自信を持って、これからもキャリアを築いていただければと思います。
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