写真提供:ファビアン・バロー
「たった1枚の画像が、みんな、特に若者たちに大きな影響を与えることができると信じているんです。行動を起こさずにいることがどんな結末をもたらすか、その可能性を理解してほしい」
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By Shamani Joshi MUMBAI, IN
気候変動によって荒廃した世界を想像することは、私たちにとって堪え難いことである。そのためには不都合な真実を飲み込み、人類にとって最大の恐怖と向き合う必要があるからだ。
しかし、気候危機がどれほどの破滅をもたらすかを推測することは、安寧から人類を引き戻し、自らが生み出したディストピアへと向かうこの現実を直視させるためには大切だ。フランス人フォトグラファー/デジタルアーティストのファビアン・バローはそう考えている。
こうして生まれたのがビジュアルシリーズ〈News From The Future(未来からのニュース)〉だ。彼はこのシリーズで、ドローンと卓越したPhotoshopのスキルを駆使し、世界の有名な建造物が気候危機に襲われたあとの姿を提示する。
「たった1枚の画像が、みんな、特に若者たちに大きな影響を与えることができると信じているんです。行動を起こさずにいることがどんな結末をもたらすか、その可能性を理解してほしい」とバローはVICEのインタビューに語る。彼は、砂漠化、洪水、荒廃、壊滅に陥った新しい世界をナビゲートする、未来からの冒険者だ。
「このシリーズは、気候変動の結果どうなるかを想像する個人的なプロジェクトです」とバロー。「科学的なプロジェクトではありません。気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)のデータが示す可能性にインスパイアされた、アート作品です」
IPCCが今年2月に発表した報告書によると、気候変動によるもっとも深刻な影響を避けるための〈窓〉はすでに閉じようとしており、壊滅的な影響を回避するためには、人類が早急に行動する必要がある。
このような壊滅的な影響を視覚化するため、バローはドローンで撮影した画像や写真素材にデジタル処理を施している。そこではエッフェル塔やコロッセオが砂漠に囲まれたり、自由の女神が人間ではなく像の腰の高さまで海に沈んでいたり、凱旋門が海底遺跡になったりしている。
このシリーズは、シュールレアリスムとディストピアのあいだの境界線上に位置するような印象を与える。実際に、それらのジャンルの映画やアートに多大な影響を受けているそうだ。
「子供の頃から、世界滅亡や文明の崩壊といったテーマに心を惹かれてきました」とバローは語る。このシリーズにあえて映画的な演出を施しているのも、影響を受けた作品へのオマージュだそうだ。例えば、パリの凱旋門のそばを2頭のクジラが泳ぐ作品は、フランス人アーティストのロラン・キャットによる70〜80年代の作品に描かれた、海底に沈んだ都市の上を泳ぐ空想の海洋生物へのトリビュートだ。また、その他の主要な作品として『猿の惑星』『マッドマックス』『アキラ』、さらにナショナルジオグラフィックで放送されたドキュメンタリー『Aftermath: Population Zero』などを挙げている。
写真、デザイン分野で30年以上にわたり活動し、レタッチャーとして様々なブランドやエージェントと働いてきたバローの作品には、しばしば環境保護への意識がにじみ出る。
例えば彼の最新シリーズでも、環境保護というレンズを通して見た不思議な景色が提示されている。アマゾンの森林火災を、助けを求めるインコの横顔に見立てたり、空から見た針葉樹の林を熊の顔に変えたり。それはひとえに、自然と野生生物の関係性を強調するためだ。今必要なことを訴える、啓蒙的な物語を提示する彼にとって、その圧倒的なイメージは注目を集めるための手段である。
「風景写真や建築写真が好きなんです。これまでさまざまな国へ旅をして、すばらしい景色を写真に収める機会がありました」とバロー。「でもだんだんと、気候危機が生物多様性や景観、人間に与える壊滅的な影響をひしひしと感じるようになったんです。何も変わらないふりをして過ごすなんて、僕にはできません」
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