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アパレル販売の需要予測とは?

アパレル販売の需要予測とは?

ファッション流通コンサルタント ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
ファッション流通ブログde業界関心事

先日、所属する日本オムニチャネル協会のサプライチェーン部会のセミナーで需要予測をテーマに食品とアパレルの違いをディスカッションする機会がありました。

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筆者はアパレルの「需要予測」が語られる時、多くの誤解があると思っています。

多くの場合、例えば、
シーズン毎にヒット商品を当てること、
そして、それがどれだけ売れるかを事前に予測して、
ドーンと計画生産することが需要予測であると思わている方が少なくないようです。

半期やシーズン単位で考えるメーカーの場合はそうかも知れません。

しかし、少なくとも、アパレル小売業の場合は・・・
シーズン中の需要の高まる実売期(ピーク週と呼びます)が何時で、
その時に何をどれだけ販売して目標を達成するか?という

品揃え計画と商品販売計画の仮説を立てることが
「需要予測」に当たるのです。

この計画を立てる上で第一に前提にすべきは、顧客購買行動です。

気温と共に装いを変える生活者はわかりやすいくらい、季節の最高気温や最低気温に反応しますし、そして、連休やイベントに連動した行動をとることがわかっています。

過去20年間、たくさんのブランドの「売上週波動」というものを見て来ましたが同じ立地で商売をするブランドであれば、コロナの影響を受けた20年と21年を除いては毎年ほぼ変わらない波を描くもので、それは、まさしく「顧客購買行動」そのものの現れと見ても差支えありません。

では、その需要の波が高まる
実売期=ピーク週周辺にどんな商品を販売するか?

こちらもビジネスでよく用いられるパレートの法則のように、面白いように、売上上位商品に大多数の割合が集中するのが常です。
(これには理由がありますが、またの機会に)

そこまで販売機会と枠組みがわかっていれば、あとは、「生活者はコーディネートして着用する」

その真理を前提にして、その枠組みにどんな商品を当て込むのか?という仮説と議論になります。

当て込めさえすれば販売目標に対する計画数はある程度、ほぼ自動的に計算することができるものです。

これがアパレル小売業の「需要予測」にあたるものです。
しかしながら、中長期的な需要予測が当たらないことは
多くのビジネスパーソンなら知っている通りです。

一方、そんな市場の中で
当初の仮説が需要とズレていることにすぐ気づくことができるのは
生活者最前線で日々販売に当たっている小売業最大のメリットです。

ですから、一旦は仮説(計画)を立ててシーズンを迎えるものの、シーズン中の実需要にあわせてできる限り軌道修正すればいいのです。

それが出来たか、出来なかったかで利益が決まるのが、
小売ビジネスというものです。

ユニクロにしても、ZARAにしても規模が大きいからではなく、軌道修正力があるからこそ日本一、世界一になっていることを忘れてはいけません。

とても興味深いのは、その反対に「規模が小さかったころの方が軌道修正力があった」と振り返る経営者さんが結構いらっしゃるのも現実です。

規模が大きくなって、スケールメリットを出せるようになったはずなのに・・・

むしろ軌道修正力が落ちているとしたらそれは、いったい、なぜでしょうか?思い当たるようであれば、是非、オペレーションを見直してみてください。

「販売計画は外れることを前提にシーズン販売に臨む」

規模に関わらず、それが小売業にとって基本的な考え方であると、
キモに銘じたいものです。

関連して、話は少し変わりますが、リアルでも、オンラインでも、直営店だけで商売をしていれば、ある程度は需要波動に基づく、リズムを持った読めるビジネスができるものですが、悩ましいのは、そのリズムを乱すイベントの数々です。

商業施設の期間限定プロモーションはまだしも・・・
昨今、ECモールなどでの突発的なセールによってつくり出される需要波動=異常値は実に頭が痛いです。

確かに、スタートアップ期に急速に一定の規模に拡大するためには
それが必要な時もありますし、その一定規模までは対応可能でしょう。

しかし、この異常値を当たりまえに自転車操業的なビジネスを続けていると操業リズムが崩れ、

売上が上がっても経費ばかりが掛かり過ぎて、利益が残らない

そんなことが社内の身の回りで起こって全体が混乱してはいないでしょうか?

まずは、生活者の需要がつくり出す、自然な需要波動に忠実に。
それを踏まえた上で、意図的に作り出した二階建ての二階部分の異常値ならまだ許容範囲と言えるでしょう。

食品業界の需要予測の話を聞いて、アパレル業界の需要予測の話をした上で、その後パネラーの皆さんと行ったディスカッションがとても面白かったです。

そこで気づいたことは・・・

食品のような日販品を扱う小売業では
商品を仕入れる人と販売する人の業務サイクルが近いこと。

なぜならば、

毎年、品揃えが大きく変わらない商品を
共に短期間で調達して、短期間で売り切ろうとしているからです。

ですから、仕入担当も販売担当も息を合わせやすいのです。

一方、

アパレルのような専門店では

商品を仕入れる人は
主に次のシーズンの仕入れのこと、つまり、数か月先のことを考え

販売する人は
今日、今週、今月のことを考えているため、

両者の業務のリズムと重きを置いているスコープは大きく異なります。

専門店の場合、季節ごとに変化するたくさんの商品をたくさんの仕入れ先から仕入れますので「調達」と「販売」が役割分担できるというメリットはありますが・・・

業務サイクル、リズムの違いから、両者の思いが噛み合わず、売り逃しをしたり、逆に過剰在庫を抱えてしまうデメリットもはらんでいます。

長年、ファッション業界を見ていると
かつては販売をしていた人が調達側にまわった途端
作り手の都合に変わってしまうことを痛感します。

小売業はあくまでも顧客を中心にした変化対応業

需要が見え始めたものに対していかに変化対応できるかがキモになります。

生活者そして、それをお手伝いする販売スタッフ目線で
どう柔軟にサプライチェーンをコントロールするか

いつになっても、それを忘れてはいけないことを
同じ生活者を相手にしている異業種の方々の話を伺いながら、
ますますその思いを強くしたものでした。

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最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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