btraxのサンフランシスコオフィスでは、10週間のデザイン思考ワークショップを提供している。
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このワークショップの参加者は、サンフランシスコに滞在する間、スタートアップになりきってサービス開発を行う。
筆者は現在、ファシリテーションアシスタントとしてワークショップに携わっており、ワークショップ運営の実態を目にする機会があった。
そこで本記事では、ワークショップを円滑に進めるためのツールと活用方法について、実際の事例とともにまとめていく。
ちなみに今回のワークショップは、オフラインとオンラインを組み合わせたハイブリッド形式で開講されている。
そのため本記事では、オンラインのみで開催するワークショップでも利用可能なツールをご紹介する。
Slack
最初にご紹介するのは、皆さんご存じのコミュニケーションツールSlackである。
Slackは、ワークショップ中のレクチャー資料共有、チーム内のコミュニケーション、健康管理などの用途で使用されている。
ここでは、4つのチャンネルとその活用方法をご紹介する。
➀#interview
まず最初にご紹介するのはインタビュー専用のチャンネルである。
本ワークショップでは、1対1のオンラインインタビューを通して、実際の生活者の声を聞く機会を設けている。
その際、インタビュー中にのみ活用されるチャンネルを用意している。このチャンネルには、主に2つの活用方法がある。
1つ目は追加質問を共有する場としての役割だ。
チームのメンバーやファシリテーターが、さらに深掘りしたい質問をSlackに投稿する。インタビュアーやアシスタントはそれを見て、臨機応変に追加質問を尋ねていく。
2つ目に英語力のサポートのための活用方法がある。
参加者の中には、海外在住や留学経験がある方から、全く英語に自信のない方まで、様々な方がいらっしゃる。
そこでスタッフは、英語力に不安のあるチームのために、英語表現の修正やインタビューのサポートを行う。
英語表現の面では、インタビュースクリプトやピッチ資料などの翻訳作業を行ったり、より伝わりやすい言葉選びを提案したり、といったサポートをしている。
またインタビューの際には、スタッフはインタビューの様子を見ながらユーザーの発言を同時通訳してSlackに打ち込む。
参加者はその訳を見て、相槌を打ったり、次の質問を考えることができる。
事前にチームとファシリテーターで相談し、インタビュー時に使用するチャンネルとその用途を共通認識として決めておくのだ。
それにより複数のチャンネルを行き来する必要がなくなり、インタビューに集中しやすい環境をつくっている。
➁#health-check
次にご紹介するのは、「health-check」チャンネルである。
コロナ禍でも安全にワークショップを行うためには、事前のルール作り、そして関係者間での綿密なコミュニケーションが欠かせない。
私たちは、ワークショップの事前準備として、San Francisco Department of HealthやCDCを参考にoffice use protocol(オフィスの使用規則のようなもの)を作成している。
政府機関の規則には変更が多いため、毎回のワークショップで一から内容を見直す必要があるのだ。
オフィスの入口には、アルコールジェルと体温計を用意している。
ワークショップの期間、参加者は体温計で体温を測定し、毎朝Slackに報告する仕組みがある。
➂#things_you_learned
3つめは、一日の学びや疑問を共有するチャンネル「things_you_learned」だ。
参加者は、一日のワークの終わりに[Fact] [Thought] [Question]の3項目を投稿する。
それを翌朝のチェックインで発表してもらい、各々の悩みや質問を全体で考える機会をつくっている。
これには参加者一人ひとりが一日の学びを振り返るだけでなく、互いの学びや感想を見ることで相互作用を生む狙いもある。
④btrax_internal
次にご紹介するのは、スタッフ用の「btrax_internal」チャンネル。
ファシリテーションとは、やるべきことや手順が教科書のようにはっきりと決まっているものではない。
参加者一人一人の様子や、チームの雰囲気、議論の流れを見て、その場の状況に合わせた対応が必要となる。
そのため、ファシリテーターは、臨機応変な対応ができるよう、常に意識している。
柔軟な対応を可能にするには、ファシリテーター同士の綿密なコミュニケーションが不可欠だ。
このチャンネルはそのようなコミュニケーションの場として活用されている。
これらは、より実りあるワークショップを参加者に提供するべく行われている工夫なのだ。
FigJam
次にご紹介するのはFigJamだ。こちらもデザイン業界では良く知られている、コラボレーション型デザインツールである。
ワークショップ初日には「How to use FigJam」という時間が設けられている。
この時間では、参加者に自己紹介シートを作成するという課題を与え、実際に手を動かしながら使い方を覚えてもらう。
FigJamは、毎日のチェックイン・チェックアウトの他、宿題の提出やチームごとのオンラインホワイトボードとしての役割を担っている。それぞれ詳細に見ていこう。
➀チェックイン・チェックアウト
btraxでは、チェックイン、チェックアウトという時間を設けている。
これは、参加者が1日の始まりと終わりに集まり、自身の気分を共有する場だ。
この時間を取ることによって、参加者は「参加者としての気持ちの準備」をしたり、1日を振り返ったりする機会を得られるのだ。
対面のワークショップでは、気持ちの書かれた画用紙に人形やシールを置き、メンバーに共有する。
一方、オンラインでチェックインを行う際には、対面で行う際と変わらない環境を提供するため、シートをFigJam上に用意する。
➁宿題の提出・共有
続いての活用方法は、宿題の提出と共有である。
ワークショップを通しての目標や、フィールドワークでの発見など、参加者に宿題を出すことがしばしばある。
宿題には、シートや文章を穴埋めするスタイルのものが多い。
参加者はFigJam上のシートに自らの答えを書き込み、全体で発表する。
またこれらに加え、ワークショップ運営に欠かせない機能が2つある。
まずはFigJamのboardの右上から設定できる、タイマー機能である。
このタイマー機能によって、発言の持ち時間を管理したり、ブレインストーミングの時間を決めたりすることができる。
ワークショップにおいては、敢えて時間を決めて議論を前に進めてみることがある。この機能は、そういった時にも非常に役立つのである。
さらにFigJamには、チームのコミュニケーションを促す機能が多く含まれている。
そのなかでも今回はコメント機能とGoodスタンプの活用方法についてご説明する。
Goodスタンプは、チーム内での投票や、互いのアイディアに軽いリアクションをするときに非常に便利な機能である。
またファシリテーターが、議論の流れを止めずに助言をしたいときには、しばしばコメント機能が使われている。
この機能によって、会話を途切れさせることなく、それでいてメンバーの目に自然に入る場所に、文字を残しておくことができるのだ。
口頭の発言だと、直接細かなニュアンスが伝えられる代わりに、どうしても話の流れを止めてしまうことがある。
コメント機能は、それを補う形で活用できるアイテムでもあるのだ。
こういった活用方法によってbtraxでは、ワークショップの開催形態に囚われず、クオリティを維持することができている。
btraxオフィス
最後にご紹介するのはズバリ、btraxのサンフランシスコオフィスである。
オフィスに常備されている備品はザっと以下のようなものだ。
消毒ジェル、スプレー、スナック、コーヒー、クッション、付箋、ペン、イーゼルパッド、ホワイトボード、アイディアペイント、マーカー
これらは、オフィスの利用者たちにクリエイティブな思考を促すアイテムたちである。
ワークショップの参加者はこういったアイテムを自由に使って議論を進めることができる。
これらの備品や食べ物の補充も、ファシリテーターの重要な仕事の1つだ。
またオフィスにはいくつかの部屋があるが、それぞれの部屋が個性を持っていて、雰囲気も異なる。
そのため議論に詰まった際には、気分転換のための部屋移動をファシリテーターから提案することもある。
さらにワークショップの期間には、オフィスで毎朝30分のヨガ教室が開講される。
一日の始まりに心と身体を整え、気持ちよくワークに入ることができる。
このようにbtraxでは、オフィスそのものの環境づくりにもこだわっている。
おわりに
ここまで、ワークショップで使用されているツールとその活用事例をご紹介したが、いかがだっただろうか。
「デザイン思考」や「ワークショップ」と聞くと、捉えどころがなく抽象的な印象を受ける方は少なくないだろう。
本記事では、そんな実態の見えにくいワークショップの「知られざる一面」をお見せした。
btraxは、10週間のプログラムのみならず、新サービスの開発や、デザイン思考研修にてワークショッププログラムを設計し、提供している。
サービスにご興味がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
ワークショップの目的・心得やファシリテーションのコツについては、以下の記事も併せてご覧いただくと、より理解が深まるだろう。
- ワークショップはオンラインでも上手くいく?押さえておきたいポイント5つ
- ファシリテーションとは?議論を前進させる基本のメソッド
- Ideas for Ideas – アイディアのためのアイディア Design Sprintのファシリテーターとしての学び
Written by: Miyu Okubo
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