株式会社ベンドが運営している、アバターを使ってバーチャルオフィスに出社したり、オンラインイベントを開催したりできるサービス「MetaLife」。2022年8月のリリースからわずか3か月で30,000人が利用し、パナソニックなど大手企業の導入も進んでいる。
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今回、コロナ禍において、テレワークのコミュニケーションをサポートするMetaLifeの特徴や、他サービスとの違い、そして今後の展開について、同社代表取締役の近藤潔さんに聞いた。
「MetaLife」と従来のオンラインツールとの違い
数あるバーチャルオフィスのサービスがある中、MetaLifeにはどのような特徴があり、他のツールとどう違うのだろうか。
「MetaLifeには大きく3つの特徴があります。まず1つ目は、オンラインでも現実のオフィスのような感覚で気軽に話しかけられる点です。
MetaLifeは表示画面がゲームの世界のようなデザインで、バーチャルオフィスの中をアバターで動き回れるような仕組みになっています。
常にウェブカメラで顔が映し出されているのではなく、話しかけたい同僚に近づくとビデオ通話を始められるので、オンラインでも『ちょっといいですか』と気軽に会話を始められます。
2つ目は、誰がオフィスにいるのか把握できるところです。アバターが表示されていれば出社しているので気軽に話しかけられます。『チーム状況の見える化』ですね。
そして3つ目が、孤立を防ぐことです。同僚の存在を感じながら業務に集中できますので、特に新人さんにとっては、オフィスで相談できる相手を探しやすく、安心感を持って業務を遂行できるのではないでしょうか。
アバターによる雑談のしやすさ、出社状況の把握、メンバーの孤立を防ぐ、これら3つがMetaLifeの特徴といえます」
いわゆる「メタバース空間」が世間一般にも認知が進んでいる昨今、MetaLifeをゲーム世界のような2D画面にしたのは、どんな理由があったのだろうか。
「Meta社が提唱するメタバース空間は3次元が前提ですが、3D空間でアバターを動かすには PCへの要求スペックも高いものになります。
私も3次元のバーチャルオフィスを試してみたのですが、情報量も多く、長時間過ごすと疲労を感じました。毎日長時間利用するサービスですので、より負担の少ないものを提供したいと考え、2次元にしました。
ここで気付いたのが、2次元も3次元も使い分けが重要だということです。MetaLifeは、PCへの負担も軽く、長時間繋ぎっぱなしでも問題ありません。オフィスを俯瞰できますので、隣の部屋の様子もわかりやすいのです」
MetaLifeを立ち上げた経緯と反響
同社は、もともと「資格Times」などのウェブメディア事業を展開していたが、新型コロナウイルスの流行による働き方の転換が、MetaLifeを立ち上げるきっかけになったという。
「コロナ禍で完全にリモートワークにしたことで、社内のコミュニケーションに支障が出始めました。弊社は東大生などの学生インターンが多いのですが、当時は人が次々と辞める状況になり、本当に困っていました。
どうにかせねば、と考えていたときに、昔遊んでいたゲームを思い出したんです。1日10時間プレイするほど熱中していた時期もあり、そこではゲームの中で他者とコミュニケーションしていました。これをビジネスに使えないかと検討した結果、MetaLifeが生まれました」
2022年8月にスタートしたMetaLifeは、既に30,000人が利用している。どのようにして利用者が増えていき、どんな反響があるのかが気になるところだ。
「ほとんどが口コミや紹介による流入です。テレワークやウェブ会議ツールが当たり前になりましたが、自分たちが思っている以上に、こうしたバーチャルオフィス的なサービスが求められているのだと感じます。
MetaLifeはリリースしたばかりで、開発途中の機能もある状態です。まだプロダクトを磨いている段階ともいえますので、寝る間も惜しんでさらなる機能向上に向けて取り組んでいるところです。
利用者様からは『こういうサービスを待っていた』『MetaLifeだと面白がってログインしてくれるし会話も盛り上がる』などの声をいただいています」
MetaLifeの画面スクリーンショットを見て共感する方も多いと思うが、MetaLifeで特に目を引くのが、アバターやオフィス画面のデザインではないだろうか。現代の精巧なグラフィックとは一線を画す数世代前のゲームを思い出す。
「ここには強いこだわりがあります。ドット絵のレトロな雰囲気ですが、ドットが粗いと使いづらさが出て、細かすぎるとリアルに近づき面白さがなくなります。その調度良い具合を探るべく、かなりの時間、議論を重ねて仕様を決定しました。
いかに、使いやすさ・便利さとワクワク感を両立させられるかに注力しました。今後も機能追加もしていきますが、デザイン面もアップデートしていきます」
「MetaLife」が考えるサービスとしてのメタバース
最後に、今後MetaLifeをどのように発展させていくのか、またメタバースの可能性について聞いた。
「ようやく世界が仮想世界を扱える準備が整ってきたと感じます。これはデバイスが高性能化し通信技術がメタバースに追いついたといえますが、固執しすぎるのも危険だと感じています。達成したい目的があって、ソリューションとしてメタバースがあり、課題解決に必要だからメタバースを使う、というのが自然な在り方だと思います」
メタバースそのものに価値があるわけではなく、「あくまでも課題解決の選択肢の一つに過ぎない」と語る近藤さんは、さらにこう続ける。
「何かの目的を達成するために仮想空間が生まれ、活用することで我々の生活も豊かになっていくはずです。ですから、MetaLifeも『メタバースだから嬉しい・導入したい』というサービスではなく、『必要だから導入したい』と感じていただけるサービスでありたいと考えています」
MetaLifeが追求するユーザーの心理的・身体的負担にまで配慮された「親しみやすさ」「使いやすさ」は、企業におけるコミュニケーションの課題を解決に導くだけでなく、業績や生産性の向上にもつながる可能性がある。
パナソニックやTOTO、カシオ計算機などの大手企業が導入し、ユーザーを次々と獲得していることは、MetaLifeに高いニーズがあることを証明している。
この先も随時、機能追加やデザインのグレードアップを行っていくとのこと。目が離せない、注目のサービスだ。
PROFILE|プロフィール
近藤潔(こんどう きよし)
2017年、東京大学に入学し、現在同大学工学部在学中(休学中)。同年に株式会社ベンドを創業し、代表取締役CEOとなる。2019年にM&Aにより、学研グループにジョイン。
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