トッパン・フォームズ株式会社が開発した「わたしの温度」は、誰でも簡単に女性特有の温度リズムを把握できるヘルスケアIoTサービスだ。2020年にクラウドファンディングサイトで先行発売し、現在はECショップや実店舗、クリニックにて販売している。
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今回は同社で「わたしの温度」販促担当をしている河野さんに同サービスの特徴や開発背景について話を聞いた。
手軽に体内リズムを把握
「わたしの温度」の特徴は、専用のナイトブラにつけて寝るだけで高温期・低温期といった女性特有の温度リズムが記録できる点だ。従来の基礎体温計測のような煩わしさがないため、無理なく続けることができる。そもそもこのサービスが生まれた背景には、基礎体温を測る手間を省くことで、温度リズム把握を習慣化させたいという目的があったという。
「女性は温度リズムの影響が毎日の暮らしに出やすい傾向にあります。そのリズムが把握できれば、事前に備えることでの症状軽減や予定の調整などの行動変容が実現できるため、女性にとって日々の状態把握は極めて有益であると考えました。しかし、リズムを把握する方法として従来法である基礎体温を測ることは、特定の目的を持った人のみの行動で、手間もかかるため日常化されていないのが現状です。リズムを把握することを促し、全ての女性の健康づくりに貢献し幸福感を高めたい、そのような想いをもって開発しました」
使用するデバイスは「安定して精度よく測れる」「つけている感覚がない」「キレイを応援できる」「無理なく続けられる」の4つの要素を同時に担保できる方法での開発を心がけた。その結果として“ナイトブラにつけて寝るだけ”というコンセプトが生まれたという。
「ナイトブラにつけるだけで、たとえば妊活に取り組んでいる方やPMS症状で苦しむ方、より健やかに生活を送りたい忙しい方、月経初期や更年期で周期が乱れやすく不安のある方などが、簡単に状態把握が可能になります。これにより、各人が目的に応じた備えや行動変容を起こすきっかけを提供できればと考えており、実際にPoCの結果からは7割の女性がポジティブな行動変容が起きたと回答いただいております。
先行発売から約2年が経ったが、使用しているユーザーからは「従来の方法とは比べものにならないほど便利」「毎朝の計測する手間から解放されて気持ちに余裕ができた、子供がいると朝の計測が難しいので本当に役に立った」といった、製品を評価する声が届いているとのこと。
女性だけでなく社会全体のQOL向上
トッパンフォームズがフェムテック領域に着目したのは、女性に関する社会課題が背景にあると河野さんは話す。
「出産回数が減ったことによる月経回数の増加などの理由から、月経関連に伴う企業の労働損失額が4,911億円であると経済産業省が発表しております。また少子化問題など、女性に関する社会課題が多く存在するなかで、女性活躍を支援することが女性だけでなく社会全体のQOL向上に繋がると考えました」
そこから既存事業におけるICカードやリーダーライター機器の小型無線通信技術と、大量の個人情報をデータ処理し一人ひとりに届ける個人情報取扱ノウハウやアセットを融合し、2017年にウェアラブルデバイスの研究開発とビジネス開発に着手していった。
2019年3月に「つけて、寝るだけ」をコンセプトとした「わたしの温度」をリリースし、その後クラウドファンディングサービス・Makuakeでの反響からマーケットニーズを確認、2021年2月末に本格ローンチとなった。
河野さんが考えるフェムテックの定義をあらためて聞いてみると、「テクノロジーを通じて女性のQOLが向上すること」だと答えてくれた。
「フェムテックの普及については、特に日本は男性社会ですので、女性への配慮の不足や欠如、女性活躍に対する認識の遅れなどの現実に対し、男性のリテラシー向上を含む認識改革を進めることが必要だと思います。自分事として認識していない男性以外にも、これまでは我慢することが当たり前となっていたキャリア女性の意識など、既存文化が普及を阻害している事実はあると感じています。そのため、そういった文化を改革する役目を担うべき位置づけにあるのがフェムテックであると思います」
時間はかかるが、近い将来はフェムテックが当然のように利用される世の中になると河野さんは話してくれた。
「政府も法の整備を含めて男女共同参画や女性活躍推進を推進されていますし、今後、社会の成熟度がさらに増してくれば、『女性が』『男性が』といったマインドセットから、ジェンダーフリー、つまり性別による役割を超えて自らの能力を最大限に生かせること、自分らしく生きることにフォーカスする時代が来ると思います。『自分らしく生きる』ことがスタンダードになれば、そのために有益なフェムテックは当たり前のように利用される世の中になると考えています」
今までは見えなかったり認識できなかったりした情報が、テクノロジーによって価値情報として知り得るようになることは、未来においては当たり前となるだろう。「わたしの温度」を取り入れることで心身の状態や少し先の未来を把握することは、不要な苦労の回避やQOLの向上に有益だろう。
一方、デジタル化した情報は、容易にコピーされることや漏えいするリスクもある。プライバシー保護の観点から、情報管理の一端を担うトッパンフォームズでは、「便利なワンストップソリューションを提供するプラットフォーマーとしての視点に加え、セキュリティ面で高い信頼性と安心感を同時に提供できることが最も大切になる」と教えてくれた。
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