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ソニーが仕掛けるモバイルモーションキャプチャー「mocopi」の可能性

ソニーが仕掛けるモバイルモーションキャプチャー「mocopi」の可能性

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昨今、YouTubeではVTuberと呼ばれるアバターの配信が人気を博している。日本の文化を象徴するようなアニメーション映像のため、視聴者にも馴染みやすいのだろう。そのような動画を視聴していくなかで、自分でもアバターを使ってなにかをしてみたいと思った人はいないだろうか。

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そのような人に待望の商品が登場した。ソニー株式会社の「mocopi」である。モバイルモーションキャプチャーの名の通り、持ち運び可能なサイズでスマートフォン1つあれば、誰でもアバターとして活動できるものだ。

今回、同社モーション事業推進室の中林澄香さんに「mocopi」の狙いとその反響について伺い、デジタル技術の可能性を探った。

PROFILE|プロフィール
中林 澄香 (なかばやし すみか)ソニー株式会社
新規ビジネス・技術開発本部
通信技術開発部門 モーション事業推進室
mocopiの商品企画を担当。

手軽に持ち運びできるカラフルなモーションキャプチャー

まずは、商品の外観に驚くことだろう。誰しもモーションキャプチャーと聞くと大掛かりな装置を想像してしまいがちだが、「mocopi」はその常識を打ち壊してきた。500円玉ほどのサイズで、しかもカラフルでポップなデザインになっている。使い方は非常に簡単で、操作もアプリのUIが洗練されているためわかりやすい。一度ペアリングを済ませてしまえば、二回目以降はスマホで専用アプリを開き、6つあるセンサーの中央のボタンを押して電源を入れ、センサー接続ボタンを押すと自動的に接続される。センサーを同梱のバンドに取り付け、頭、両手首、腰、両足首に装着し、身長の入力やキャリブレーションが終われば、準備は完了だ。キャリブレーションに必要な動作も、「気をつけ」の基本姿勢から一歩踏み出だし、基本姿勢で止まるだけという、シンプルなものだった。

自分の好きな動きに合わせて、アプリにプリインストールされている公式アバターであるRAYNOSちゃんが同じ動きをしてくれる。VRM形式であれば、自身のアバターをアプリにインポートすることで、同じように動かすことができる。慣性計測装置(IMU)で計測した加速度と角速度の情報がBluetooth経由でスマートフォンに送信されており、ラグはほとんど感じられない。非常にヌルヌルした動きで、ダンス等の激しい動きに使用しても、まったく問題ないとのことだ。

ひと目で素晴らしい技術であることが伺えるが、1番の特徴はどこにあるのか。

「場所を問わず撮影できることですね。このセンサーとスマートフォンがあれば、大掛かりなスタジオ等の環境がなくてもコンテンツが撮れるので、これまで撮れなかったコンテンツを手軽に撮影できます。本来なら全身の骨格データを取るために、10から30のセンサーが必要でしたが、そこはソニーのセンシング技術と独自アルゴリズムによって克服しました。またBlootoothでスマホと接続しているので、ある程度の厚さの服や帽子でしたら、その下に『mocopi』を装着しても問題なくトラッキングできるため、身バレせずに外ロケを楽しんでいただけます」

このモーションセンサーの技術は、2019年にソニーが投資家・アナリストおよびメディア関係者向けに開催したイベント“Sony Technology Day”で初めて公開されたものだという。ところが当時はその技術をどこで利用するかを模索する段階だったようだ。その後さまざまなイベントを通じて、クリエイターやVTuberに需要があることがみえてきたことで、商品化にいたったという。

想像以上の反響

アプリでは、動画の撮影とモーションデータの記録が可能となる。動画撮影の機能では、アプリ上に映し出されたRAYNOSちゃんや自身のアバターの動きを保存することができる。音声データも録音でき、もちろん音声に合わせてアバターの口に動きを付けるリップシンク機能もあるので、違和感を覚えることもない。こちらは気軽に遊べるサービスといえるだろう。背景を緑や青などに設定することも可能で、別に撮影した背景動画とクロマキー合成を楽しむこともできる。

モーションデータについては、外部の3DCG制作ソフトに情報を転送し、本格的な編集を行うこともできる。現在、VRChatやUnity、MotionBuilderやバーチャルモーションキャプチャ―などのソフトを公式にサポートしている。さらに、顔や手は別のツールでトラッキングし、それを「mocopi」のデータと組み合わせることで、より高度でリアルな動きを投影する使い方をしているユーザーもいるとのこと。こちらは、VTuberやメタバース空間で遊ぶユーザーの需要にマッチしている。

VTuberやVRChatを楽しむ人たちにとって、気軽に撮影でき、自由に編集ができるという環境は待ち焦がれたものだった。そのことを裏づけるように、販売を開始した当日からさまざまな動画がSNS上で流れていった。

中林さんに、利用者の声も聞いてみた。

「まずはセンサーの軽さとセットアップの手軽さが高く評価されています。6点のセンサーだけでアバターが動くのかという驚きの声も届いていますね。TwitterやTikTokで多くの動画や画像が流れてくると、比較的ライトな層にも届いたのかなと思います。フルモーショントラッキングのハードルが下がったことは嬉しいですね」

実は、公式アバターであるRAYNOSちゃんにはTwitterアカウントがある。こちらで日々ユーザーとコミュニケーションを取っているようだ。ユーザー動画のリツイートや、使い方を動画で紹介している。自分が想像もしなかった使い方に出会える可能性が高く、フォローは必須だろう。

今後の展開について

同社のデジタル技術は目を見張るものがあるが、今後の展望について伺ってみた。「今後もメタバースは世界中で広がっていくと思います。そうしたなかで、クリエイターさんの制作活動や、遊びをサポートしていきたいと考えています。『mocopi』についても『フルトラ業界の革命』だと書いてくださるメディアもあり、今後の開発の励みになっています」現在の「mocopi」はおもにVTuberやVRChatの利用者に焦点が当てられているが、開発ツールのパッケージであるSDK(Software Development Kit)を公開しており、開発者やクリエイターと一緒にユースケースを拡げていくことを狙っているとのこと。たとえば、ヘルスケアやロボティクスなどの領域でも展開が考えられるとしており、「mocopi」が作り出す未来が非常に楽しみである。

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