近年、国内外でさまざまなメタバースサービスが展開されるなか、世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット」を主催している株式会社HIKKYは2022年12月、Webブラウザ上で楽しめるメタバースサービス「My Vket(マイ ブイケット)」(現在はβ版)をスタートした。さらに、2023年2月には、My Vket内のアバター制作ツール「Vket Avatar Maker(ブイケットアバターメイカー)」にて、手軽にオリジナルのデジタルファッションが作れる機能を実装した。
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これまでのメタバースに関わる取り組みや知見を活用して、今回のサービスを始めた目的は一体どこにあるのだろうか。
今回、株式会社HIKKYでCOOを務める、さわえみかさんに、My Vketの概要からVket Avatar Makerの特徴、メタバースでアバターやファッションを楽しむことの意義まで、伺った。
メタバース空間に参加するにあたっての障壁
HIKKYがMy Vketをスタートしようと考えたのは、一般の人々にとってメタバースに参加することが「今なお障壁が高い」と感じたからだという。「私たちが運営しているバーチャルマーケットでは、2020年にニッポン放送と『Kis-My-Ft2』、『SixTONES』の方々によるチャリティーイベントのブースを展開したり、2021年にLDH所属のユニット『PKCZ®』によるイベントを開催したりするなど、さまざまなアイドルやアーティストに参加いただいています。その際、たくさんのファンの方々にお越しいただいたのですが、アプリやソフトウェアのダウンロードなどの仕組みが分からない方も多く、『頑張ったけどできなかった』という方もいらっしゃいました。そういう方々にも私たちの世界を体験してもらいたいと、開発しているのがMy Vketです。My Vketは、アプリやソフトウェアが不要で、スマートフォン、PC上で誰もが気軽にメタバース空間を楽しめるサービスになっています。自分のアバターを持てるだけでなく、マイルームというメタバース上の自分の部屋も持てます。また特定のイベント期間中だけではなく、日常的にオープンしている場所もあるので、いつでもそこにアクセスしてコミュニケーションを楽しむことができます。さらに、Vket Avatar Makerで作成したアバターはVRM(VR向けの3Dアバターファイルフォーマット)を採用しているので、VRMに対応している別のプラットフォームでも同じアバターを利用することができます」
広がりを見せるアバターとデジタルファッション
HIKKYは、My Vketを展開する当初からデジタルファッションの強化を考えており、Vket Avatar Makerの機能として、アバターの衣装デザインを変更・作成できる機能をリリースしたという。同機能は、アバターの衣装デザインの変更が、Webブラウザ上で自分の好きなpngデータをアップロードすることで、簡単に行えるものだ。デザイン変更可能なアイテムは、Tシャツ・スカート・パンツ・シューズなど8種類となっている。「初心者の方は、公式で展開されているパーツがたくさんあるので、まずはそれを使って組み合わせを楽しんでほしいですね。最初から『これが私だ』と、しっくりくるアバターを見つけることは、結構難しいと思います。肌や髪の毛の色も簡単に変えられるので、まずは触って遊んでもらえればと思っています」
そのうえで、メタバースに慣れているユーザーの中には、想定以上に機能を使いこなすケースもあったという。
「すごく印象的だったのは、たとえば『今度メタバースの〇〇でクラブイベントをするのでこのTシャツを着て来場してくださいね』と、3DTシャツを作って配布していたり、ユーザーさんがご自分のNFTコレクションを盛り上げるための一環として、デザインの販売や無料ダウンロードを行ったり、デジタルファッションはもちろん、その先にある企画や体験のための手段として活用している方もいらっしゃったことです」
制作したテクスチャデータ(デザインした衣装データ)は販売可能となっており、すでにメタバースでは個人でも大きな売り上げを達成したり、ブランドとして有名になっていたりするケースもあるという。
「私たちが開催した過去のメタバースイベントを見ても、イベントの度に個人のブースで、3桁、4桁万円の売り上げがある人もいますし、すでに人気のあるデジタルファッションブランドも出てきています。リアルだと、着やすさとか使い回しが評価されやすいファッションですが、アバターは体型を気にしなくていいので、作り手やユーザーの『好き』という要素や『癖』が詰まっているものなど、リアルで売れているものとは異なるラインが人気という特徴があります」
メタバースにおける「お出かけ先」の増加
メタバースでの活動時間が年々増えているなかで、アバターに対する意識の変化も生まれており、それによりデジタルファッションへの注目も高まっているという。「たとえば、TwitterやInstagramのアイコンは、その人そのもの、というイメージになってきていますよね。それと同じように、アバターを可愛くしよう、かっこよくしよう、面白くしようという変化が、すでに生まれています。メタバース空間である程度遊んだことがある人たちにとって、アバターは作ったら終わり、ではなく『お出かけ先』に参加する姿なんです。さらに、今後はメタバース上の『お出かけ先』が増えてきます。そうすると同じ服ではなく、TPOに応じたファッションにしたくなり、そこにお金を使っていくことも増えていくと思っています。友達と遊ぶだけならTシャツだけど、学会に行くならスーツにしよう。クリスマスパーティーに行くなら、クリスマスにちなんだ服を着てみんなで写真を撮りたい、といったイメージです。リアルと同じように、みんなで記念写真を撮るなどして、アバターとしてメタバースでの思い出を残したいというユーザーもたくさんいます」
バーチャルでも生きられる世界を目指して
最後に、今後のMy Vketにおけるアバター、デジタルファッションの展開と、HIKKYとしての取り組みについて聞いた。
「私たちは『メタバース空間を中心に生きる』という選択肢もあるような、そんな世界を作りたいと思っています。
そのなかで、デジタル空間の活用は、リアルの置き換えにとどまってはいけないと思っています。バーチャルだからこそ楽しいことをたくさんしていきたいです。
My Vketもその一つとして、今後はさまざまな機能追加をしていきます。たとえば、カスタム性を伸ばしていきたいので、アバターの身長を伸ばせるとか、頭部が変えられるとか、公式のパーツもどんどん増やしていきたいです。
また、将来的にはユーザーさんの3Dデータも受け入れられるようにしたいですね。それにより、デジタルファッション領域で活動しているユーザーさんのアイテムに気軽に触れられたり、彼らの活躍の場を広げられたりしたらいいなと思います。
さらに、その先の話をすると、『応援を形にすること』に取り組んでいきたいと思っています。これまでの応援はYouTubeのスーパーチャットのように、その場で消費されて終わるケースが多いと思いますが、メタバース上でお花を送れるとか、送った側も送ったことが形になって残せたら面白いと思います。
いずれにしても、メタバース上で何かしら評価を受けたり、お金を稼いだりすることができる世界を作っていきたいですね。バーチャルでも生きていける世界を作ることが、私たちのミッションです」
PROFILE|プロフィール
さわえ みか
株式会社HIKKY
COO
プロヘアメイクからイラストレーターへ転身、学生時代から得意だったイベント企画運営で多くのクリエイター、コミュニティと繋がりマルチコンテンツ制作を続ける。スマートフォンゲーム開発やウォルト・ディズニー等のプロモーション業務を通してアートディレクターに転身、ヒットコンテンツを多数世に贈りだす。マンガ雑誌連載やSNSのコミュニティマーケティングなどを手掛けながらまったく新しい手法で2017年末からVR空間での活動を開始。HIKKYのクリエイティブ全体を統括。プラットフォームの枠組みを超え、誰もが自由にメタバースを行き来できる未来を目指している。2児の母であり、娘は母の使うアバターも母として認識している。
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