腰などを補助する「アシストスーツ」の開発で知られる株式会社イノフィスと日本シグマックス株式会社は3月28日、アシストスーツ開発の協業第1弾として「マッスルスーツSoft-Light(ソフトライト)」の販売を開始した。両社が協業を決定した背景には、それぞれの知見を活用した製品開発を目指すとともに、アシストスーツ市場の課題を解決する目的があったという。そこで今回、株式会社イノフィスの取締役 依田大さんに、そもそもアシストスーツとはどのようなものなのか、協業の経緯、「マッスルスーツSoft-Light」の開発エピソード、今後の展開などを伺った。
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介護業界が抱える「腰痛」からスタートしたアシストスーツの開発
イノフィスは「生きている限り自立した生活を実現する」ことをミッションとしている東京理科大学発のベンチャー企業だ。2013年に、同大学工学部機械工学科教授・小林宏さんによって創業された。「小林は介護業界で働く職員さんが、腰の負担が大きいことで休職や離職をせざるを得ない状況を目の当たりにしました。それがきっかけとなり、腰をサポートして負担を和らげる装着具を開発し始めることになったのです。弊社のアシストスーツである『マッスルスーツ』は、2014年から製品化を開始し、現在で6代目になります。特に皆さまから注目いただくようになったのは、2019年11月に発売した『マッスルスーツEvery』からで、現在のシリーズ累計の出荷台数は2万台を突破しております。おもに介護業界をメインターゲットとして開発をしていましたが、実際に販売してみると、さまざまな業界の方から反響がございました。現在では、農業や製造業・建設業など、ご自身の体を使ってお仕事される方に広く用いられています」
さまざまな労働現場で活用されつつあるマッスルスーツ。「マッスルスーツならでは」の特徴は、どこにあるのだろうか。
「人工筋肉を使っている点です。電力を必要とする電動型ではないため、場所や時間を問わず利用でき、作業環境に制約がない点が他社との差別化につながっています。
また、これまでの受注生産から大量生産に生産システムを切り替えたことで低価格を実現しました。従来のアシストスーツは約50万円が平均の価格帯でしたが、3分の1程度に下げることが可能になりました」
お互いの知見を生かし、補い合いながら良い製品を作る
そのなかで、なぜ日本シグマックスと「サポーター型」のアシストスーツを開発・協業することになったのだろうか。「前提として、アシストスーツの種類についてご説明させていただくと、弊社のアシストスーツは『外骨格型』と言いまして、フレームがあるタイプのアシストスーツです。外骨格型は、一般的にパワフルでサポート力はしっかりあるものの、多少動きに制限があると言えます。一方、日本シグマックスさんのアシストスーツは『サポーター型』と呼ばれる、フレームなしで体に巻きつけて装着するタイプです。装着のしやすさや、装着時の違和感が少ない点に特徴があり、サポート力は適度と言えます。日々お客様のお困りごとをお聞きしていたところ、『外骨格ほどのサポート力は必要ないものの、ある程度は腰の負担を軽減してほしい』というニーズがありました。そのような状況のなかで、弊社とシグマックスさんの社長が知り合う機会があり、協業しませんかという話になりました。外骨格型とサポーター型、それぞれの長所と課題がありましたので、お互いを補い合いながら良いものを作ろうと協業が進んでいきました」
幅広いシーンで使える「マッスルスーツSoft-Light」
2022年の年始から1年をかけて開発された「マッスルスーツSoft-Light」には、どんな特徴があるのだろうか。「『マッスルスーツSoft-Light』は、サポーター型のアシストスーツです。一番の特長は快適な付け心地です。各種の伸縮素材を体の動きに合わせて適切な位置に配置しました、これは人体構造に即した設計によるもので、パーツごとの適度な伸縮性により、中腰姿勢や持ち上げ姿勢をサポートしつつも様々な動きを邪魔しません。さらに、通気性に優れたメッシュ素材を使用し、長時間の装着も快適です。
2番目の特徴は、程よいサポート力です。腰を中心とした上下パーツを連結することで肩、太ももから腰に向かって張力が働き、中腰姿勢の腰の負担を軽減します。
さらに、上下パーツ併せて約460g(上下Lサイズの場合)の軽量設計で、装着時の違和感が少ないのも特徴です。
重い物を持ち上げるというよりも、検品やテーブルの上で仕分けをする軽作業や、前かがみになるお仕事をされる方など、幅広い層を想定しています。
今回のマッスルスーツSoft-Lightの販売を通じて、今までマッスルスーツシリーズで網羅しきれなかったお客様のご要望にお応えできる、より幅広いシーンでご利用いただける製品だと考えています。次の製品では、弊社のマッスルスーツで培った知見を活用したメカニズムを生かす予定です」
あらゆる場面でアシストスーツを活用してもらいたい
近年、広がりを見せつつも一般的には限定的な使用にとどまっているアシストスーツ。今後については、どのように考えているのだろうか。「一般の方に広まっていくためには、ヘルメットや安全靴のように『この作業をする時にアシストスーツがあると便利だよね』『アシストスーツがないとダメだよね』と想起される状況が理想だと思っています。まだまだ特別なときに使うもの、というイメージがあると思っています。腰などを守るために広く利用されるべきであるとして、現場のマネジメントをしている方や経営者にも認知していただける状態を目指しています」最後に、アシストスーツのパイオニアとして市場を牽引するイノフィスが、どのような社会を実現したいのかについて伺った。「日本社会の少子高齢化は皆さんご存じの通りだと思います。あらゆる業界で人材不足対策・労働者の高齢化対策が課題とされており、イノフィスはそれ等の課題解決としてアシストスーツや様々なソリューションを提供していくことを目指しています。さらに、労働現場だけではなく在宅介護などの課題にも取り組み、あらゆる方が快適に暮らし続けることができる社会のために貢献してまいります」
PROFILE|プロフィール
依田 大(よだ まさる)
株式会社イノフィス
取締役
Text by Asami Tanaka
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