ものを作る会社から体験を作る会社へ──。花王株式会社が大きく変革を遂げようとしている。
ADVERTISING
昨年12月に立ち上げたのが、デジタルプラットフォーム「My Kao」とビューティ専門コミュニティサイト「Kao Beauty Brands Play Park」。さらに、ものづくりで培った知見や経験をAI技術と掛け合わせた肌測定サービス「肌レコ」も、2023年3月30日より提供が始まっている。
この、スマホで簡単に肌測定ができる「肌レコ」を中心に、目覚ましいデジタル化が進むコミュニケーションの全貌について、同社で開発を行う堀哲之介さんと手島章吾さんに話をうかがった。
堀 哲之介
2008年、グループ会社の株式会社カネボウ化粧品に新卒入社。販売会社にて営業担当を経験。2017年本社に異動、デジタルを中心としたメディアバイイング、プラニングに従事。その後、2021年「DX戦略部門」の組織発足と同時に異動。花王のCRM基盤、自社ECモールを立ち上げ、現在は運用を担当。
手島 章吾
2016年花王株式会社に新卒入社。化粧品スキンケアブランドのマーケティング業務を5年間担当。その後、2021年「DX戦略部門」の組織発足と同時に異動。事業経験を生かし、社内全ブランドのCXマネジメント支援や、部門内の新規プロジェクト推進に従事している。
製造業から、UX創造企業へ。花王の新たな取り組みとは?
── まずは「My Kao」を立ち上げられたきっかけを教えてください。
堀 花王では、2021年から事業のDX推進を本格化させてきました。社内のDXを統合し、私たちの所属するDX戦略部門は2023年に発足しました。従来の広告一辺倒なコミュニケーションだけでなく、時代に合わせた新たな何かを作りたいというのが出発点になります。
今は情報があふれていて、あらゆるものがデータ化されています。時代の潮流はクリエイターエコノミー(消費者個人がクリエイターとして発信・販売する側にもなれる双方向の経済圏)になっていて、ものづくりの主体も生活者にあるべきだと思うのです。お客様のアイデアを商品化していく、といったことも求められていると考えています。
ではそんななかで、長きにわたり製造業を営んできた花王の強みってなんだろう? と考えると、幅広い商品ラインナップと、ものづくりの知見があることです。さまざまな情報が発信され続けている今、企業が発信する情報は“信頼できるもの”として改めて見直されているのではないかとも思うのです。
「確かなアドバイスが欲しい」「こんな商品があったらいいな…」「この商品、今すぐ欲しい!」といった、生活者の方々の願いに直接応えられる場所を作り、提供したい。さらには、生活者の方々と直接つながり、うれしい暮らしを共創していきたい。
そんな構想を描いたところから、このプロジェクトは始まり、発足から約1年をかけた昨年12月、生活者と直接つながる双方向デジタルプラットフォーム「My Kao」がスタートしました。
堀 現在はここを入り口に、ビューティ専門サイト「Kao Beauty Brands Play Park」の運用をしていますが、今後はビューティに限らず、花王の強みを活かした、さまざまな専門サイトを増やして進化させていく予定です。
── トップ画面がとてもかわいらしく、親しみやすい雰囲気です。どのような思いが込められているのでしょうか?
堀 花王の商品ランナップは洗剤、化粧品、おむつ、さらにはペット用品までと幅広く、ターゲットを絞り込むことはしていません。そのため、トップ画面はどなたにも受け入れていただけるような、多様性を感じさせるものにしました。
また、このプラットフォームを一緒に作っていくことで、生活者のみなさんがどうなっていくのか…ということを想像し、「まいにち いい顔」でいていただきたい、いい笑顔で過ごしてもらいたい、という願いを込めて。笑顔が溢れるイラストをトップ画面に採用しました。
「My Kao」のビューティ専門サイト「Kao Beauty Brands Play Park」
── サイト内には、どのようなコンテンツがあるのでしょうか?
堀 4つの共通キーワード「知る」「体験する」「買う」「創る」をもとにコンテンツ作りをしています。
「知る」は研究やものづくりに基づく知見、エビデンスをもとに、科学的な視点で暮らしに役立つ情報を届けていきます。コンテンツでいうと『きれいのレシピ』になります。メイク方法や悩みについて、花王ならではのエビデンスをもとに科学的な視点で情報提供しています。
「体験する」は、オンライン上にお悩みを投稿するとプロのアドバイザーから返答がもらえる「プロに聞く」と、花王独自のモニタリング技術やAIを活用した肌測定「肌レコ」があります。
「買う」は、現在では、花王の一部の化粧品を取り扱う公式オンラインショップ「My Kao Mall」です。今まで個別のブランドごとのダイレクトショップはあったのですが、花王全体をひとまとめにしたショップはありませんでした。
知って、体験して、気になるものがあればその場でお買い求めいただけますし、GPS機能でお近くの販売店舗を表示することもできるので、実際にお手に取ってご覧いただくこともできます。
「創る」に関しては2024年をめどに展開予定です。ご期待ください。
各コンテンツから得たデータを活用し、新しい商品やサービスに生かしていくことも視野に入れています。
正しく肌を知って楽しく続けられる「Kao Beauty Brands Play Park」内の肌測定「肌レコ」とは?
── それでは続いて「肌レコ」について教えてください。
手島 「Kao Beauty Brands Play Park」内には、『きれいのレシピ』『プロに聞く』『肌レコ』という3つのコンテンツがあります。一度だけではなく、定期的に来訪してもらいたいという思いから開発したのが、肌測定サービス『肌レコ』です。
ご使用のスキンケアアイテムや肌悩みなどについての簡単な問診を行い(スマホ上で回答するのみ)、スマホで顔画像を撮るだけで、早ければ10秒くらいで肌年齢が入った13項目の測定結果が出てきます。
手島 会員登録なしでも測定はできますが、「My Kao ID」に登録してログイン測定すると、測定結果を日別に記録できたり、同年代(5歳刻み)の平均値との比較結果も出てきます。例えば「同年代の平均より『うるおい』は高いけど、『ハリ』は低い」など、自分の強みと弱点を詳細まで把握することができます。
── 他社の測定サービスと比べた際の特長はありますか?
手島 従来の肌測定は、1度お使いいただくだけで終わってしまい、リピートに繋がらないというのが開発者たちの悩みでした。
そこで“正しく肌を知って、楽しく続ける”をコンセプトに、続けてもらうための仕掛けを考えました。1つめは、「4週間レコーディング機能」の搭載です。
肌レコで測定可能な12項目(肌年齢を除く)の中から、自分が集中的に見ていきたい項目を1つ選んで測定を行うと、数値の推移をグラフ化して表示します。目標スコアを事前に決めておき、そのスコアに対しての遷移が一目で可視化できるのが特徴です。
手島 2つめは、ログイン時や肌測定を行った際に付与される「肌レコマイル」機能です。一定数貯めると、花王の商品サンプルや商品詰め合わせなどが当たる抽選券と交換できます。
肌スコアで高スコアを出した時やSNSでのシェアなど、肌レコ内でのアクションに応じて「バッジ」も付与し、バッジを集めるとマイルに変換できるといったオプションも盛り込んでいます。
また、測定した方へのおすすめアイテムの自動レコメンド機能は、あえて入れていません。ご希望の方には、美容のプロによる無料オンラインカウンセリングをご利用いただき、実際に肌レコで測定したデータをもとに、いくつかのおすすめアイテムをご提案します。
── 「肌レコ」の開発から完成までの経緯を教えてください。
手島 「Kao Beauty Brands Play Park」内にお客様を呼び込むことができるキーコンテンツを作りたいという視点ももちろんありましたが、実は、花王の中には商品開発の度に調査をしてきた、AIによる測定技術というのがたくさん存在しています。
それらを眠らせておくのはもったいない、もっと一般のお客様にも気軽に使ってもらいたい、という研究開発側の視点もありました。
それが「Kirei肌AI技術」と「ハリAI解析技術」です。この技術自体はもともと新商品評価等の開発用途で使用されていた技術なのですが、今回は研究所と連携し、お客様のスマホ端末でもしっかり算出できるような技術にまで落とし込み、「肌レコ」に搭載しています。
「肌レコ」での測定により蓄積されたデータをもとに、AI自体のアップデートを行うことはもちろん、データの解析を通じて、今後は商品開発に役立てることも考えています。
サービスを使ってもらうことで、より良いAIや商品開発につながる“いい循環”を作ることができるのは、自社サービスならではの強みだと考えています。
── 「肌レコ」の使用上の注意点はありますか?
手島 光の影響を大きく受けますので、なるべく一定の環境(同じ場所と時間帯)で撮っていただくことを推奨しています。メイクをしていても測定はできますが、正しい数値を知るためにはノーメイクの状態で撮っていただくことを推奨しています。
── サービス開始から2ヶ月が経過しましたがどのような手応えを感じていますか?
手島 「肌レコ」への訪問数は約2ヶ月で延べ15万回程度と、ありがたいことに当初の予想を超えて多くの方にご利用いただいています。リピーターも多く、なかには毎日測定に訪れる方もいらっしゃいます。
アクセスされる時間帯については、制作側では起床ついでに朝に測定されることを想定していたのですが、実際は21〜22時が一番多い傾向にあります。
仕事から帰ってきて、お風呂上がりにメイクオフをして、おやすみ前の少しだけ時間ができるリラックスタイムに肌測定をしていらっしゃるのではないでしょうか。
── 今後、さらなる新サービスのご予定などあれば教えてください。
手島 今回は、「Kao Beauty Brands Play Park」内のコンテンツとしてビューティ領域の肌測定ツールを開発しましたが、今後は花王内の他カテゴリでもコンテンツを開発していく予定です。たとえば、自社のAI技術を使って内臓脂肪をモニタリングしたり、歩行状態をチェックしたりするなど、体験の幅をこれからどんどん増やしていきたいと思っています。さらには、お客様一人ひとりのライフスタイルや好みに合わせてメールやLINEでのお知らせ配信を行うなど、パーソナライズ化した情報をご提供できるように進めております。お楽しみにお待ちください。
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【Fashion Tech News】の過去記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング