■不動産価値の急落でアメリカのショッピングモールが風前に灯火にあるのをご存知だろうか?
ウォール・ストリート・ジャーナル紙が31日に報じたところによると、古いショッピングモールや地方にある価値の低いモールは2016年に比べて不動産価値が70%も暴落している。しかもその多くが債務不履行に陥っているというのだ。
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全米大都市に展開するショッピングセンターをモニターしている不動産調査会社レイス社によると、昨年の第4四半期(10月~12月期)のモール空室率は前期から0.1ポイント上昇し11.2%となった。
11.2%となるモール空室率は前年同期と横ばいとなる。モール空室率はリーマン・ショック後となる2011年第3四半期(7月~9月期)に9.4%を記録。
それ以降は緩慢な回復基調にあったものの、アマゾン・エフェクトでモールの集客が伸び悩み空室率が上昇することになった。
コロナ禍が直撃しモール空室率は2021年の第2四半期、11.5%と過去最高を記録したのだ。そこから徐々に改善する方向に向かっていたのだが、昨年の第3四半期と第4四半期で連続して上昇することになった。
モール需要が急降下しながら、金利が物凄いスピードで上昇しているため借り換えの際、債務不履行になるモールが激増することが予想されているのだ。
前述したアマゾン・エフェクトにより消費者が外出せず買い物するようになったことに加え、パンデミックの影響でオンラインショッピングの需要をさらに押し上げたのだ。
最近指摘されているのが万引きの横行であり、社員の安全性を確保するために(つまり犯罪に巻き込まれ、それを基に訴訟を起こされないようにするため)店舗閉鎖を進めている側面もあるのだ。
ニューヨーク州アルバニー郡ギルダーランド地区にあるクロスゲーツモール(Crossgates Mall)のオーナーが債務不履行に直面し、係争中でもある地方当局に減税を求めているのだ。
1984年にオープンした同モールは現在、1億ドル以上の価値があるものの数年前に比べてほんの一部でしかないのだ。
つまりクロスゲーツモールの不動産価値が異常なほどに下がっているということになる。
小売り業界の不良資産を専門にするニューヨークの業者が最近、シカゴ郊外のルイス・ジュリエット・モール(Louis Juliet Mall)を3,140万ドルで買収した。
以前のオーナーは同モールを債務不履行で手放したのだが、2012年にローンを組んだ際の評価額は1億3,180万ドルだったのだ。
つまり低迷していたルイス・ジュリエット・モールは約10年で評価額が3分の1以下になってしまったのだ。
核テナントは2018年にはシアーズを含め4つもあったが現在はメイシーズとJCペニーだけとなっている。
インディアナ州マンシー地区にあるマンシー・モール(Muncie Mall)は9年前の評価額が7,300万ドルだったのだが今年3月には600万ドルに価値を暴落させているのだ。
オープンから52年が経過しているマンシー・モールも10年弱で資産価値が10分の1以下になる惨憺たるデッドモールになっているのだ。
ニュージャージー州にある110万平方フィート(約3.1万坪)となるスーパーリージョナル・モール(超広域型モール)のウッドブリッジ・センター(Woodbridge Center)も2014年時の資産価値から今年はじめには76%も下落して8,600万ドルの評価額となってしまっている。
こちらも1971年オープンのモールであり、築年数が長いところの下落が顕著になっているのだ。
アメリカのモール価値の下落ときいても多くの日本人にとってはピンとこないかもしれない。しかしそれでも「エッ」と思うような日本人だけでなく世界にも知られているモールがデッドモールになっているのだ。
それはバック・トゥ・ザ・フューチャー・モールとして知られているロサンゼルス郊外のプエンテ・ヒルズ・モール(Puente Hills Mall)だ。
1985年に封切られた映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー(Back to the future)」でストーリー上の重要な出来事で使われたモールだ。
そのシーンとはショッピングモール屋内ではなくモールの広大なパーキング。深夜のショッピングモール「ツイン・パインズ・モール(Twin Pines Mall)」の駐車場で、スポーツタイプの乗用車デロリアン・DMC-12を改造して発明家のドクが開発したタイムマシンの実験を行うシーンだ。
主人公のマーティ・マクフライが過去から戻ってきて「ローン・パイン・モール(Loan Pine Mall)」になったモール駐車場でドクを助けようとするシーンでもある。
ドクがテロリストから銃撃を受け、自分も追いかけられるシーンを目撃するのだ。ここで使われたのがプエンテ・ヒルズ・モールなのだ。
当時の映画ではJCペニーを見かけることができる。ここ5年ほどでシアーズやJCペニー、トイザらス、フォーエバー21など大手テナントが次々に撤退し昨年には同モールからメイシーズが撤退し現在、映画館チェーンのAMCとジムのみになっている。
テナントもわずかでお客もいないためゴーストタウンと化しているのだ。
残念ながら仮に未来に戻れてもモールの将来は明るくない。日本のモールも同じ道を歩むことになるのだ。
トップ画像:1974年にオープンしたプエンテヒルズモール。モール駐車場がバック・トゥ・ザ・フューチャーの撮影場所だ。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。後藤がアメリカに来たのは1985年3月。現地で初めてみた映画がバック・トゥ・ザ・フューチャーでした。当時、映画よりも強く印象に残ったのはアメリカ人のリアクション。隣に座っていた人はバケツのような容器にポップコーンを片手に、ラージサイズ(日本の2倍以上ある)のコーラを飲んでいましたね。映画を見ながら大声でひとりごとを言うのですよ。歌手のヒューイ・ルイスが出てくるシーンがあるのですが"How's going, Huey"とスクリーンに向かって語りかけているのです。大笑いするわ、大声で叫ぶわと映画館にいるとは思えないほど一人で楽しんでいるのです。これが映画館での楽しみ方なのかと軽いカルチャーショックを受けました。内容も無論面白くて今見ても興奮・感動します。1990年代は流通視察でプエンテ・ヒルズ・モールに行く機会が何度かあり、その度に例の駐車場で参加者に説明していました。過去から戻ってきて助ける直前にドクが撃たれショックを受けるシーンの背景もほぼ映画のまま残っています。
バック・トゥ・ザ・フューチャーモールで聖地巡礼ができるのは、もうわずかしかないのかもしれません。それぐらいデッドモールになっているのですよ。
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