ニットを着るのが待ち遠しい季節になってきた。肌寒い季節に身に纏うニットは、オーダーメイドのものを取り入れてみるのもいいかもしれない。
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Haut tricot(オートリコ)は丸々縫製不要で一着のニットを編み出す、「ホールガーメントテクノロジー」を導入し、完全受注生産を行っているD2Cニットブランド。テクノロジーによりサプライチェーンをカットすることで、注文から2週間でオーダーメイドできるのが特徴だ。
今回はHaut tricotを手がける株式会社ドゥフォワイエの高田健太さんに話を聞いた。
PROFILE|プロフィール
高田 健太(たかだ けんた)
株式会社 ドゥフォワイエ 代表
ニット事業部(オーダーニットブランド Haut tricot)
責任者
テクノロジーで今までにないブランドづくりができる
──はじめに、オーダーニットブランドを立ち上げた背景について教えてください。
私は岡山にあるアパレル小売業、株式会社ドゥフォワイエの3代目になります。オーダーニットという業態に至った経緯としては、ホールガーメントテクノロジーの採用によって、自社で一貫してものづくりが行えるようになったことが理由です。アパレル業界は分業が進んでいるため、ものづくりは商社さんに相談せざるをえず、OEMによって、タグだけ違うような服が溢れすぎているのではとも感じていました。テクノロジーによって、既存の洋服づくりやサプライチェーンに頼ることなく、今までとは一線を画したブランドづくり作りができるのではと考えました。
フランチャイズチェーンやセレクトショップ形態で、メーカー様から仕入れて売るこれまでのビジネスモデルだけでは、モノや情報の流動性が高まっている時代に存続が厳しくなってくると考え、自社でのものづくりを志向しました。また、DX化で生産性を高めることで、労働集約的で生産性が低いアパレル業界の、労働環境や給与面といった課題にアプローチできると考えました。
──Haut tricotは、新しい形のものづくりを行うオーダーニットブランドとして、どのようなコンセプトを持っていますか?
「洋服の選び方を根本から変える」をコンセプトとしています。ファッション業界は、「計画的陳腐化(新作をどんどん投入することで消費を促すマーケティング手法)」を使って、高度な分業化と大量生産大量廃棄を前提としたビジネスモデルを作り上げてきたと思います。しかし毎シーズントレンドを追い続けることに疲れてきた人が増えてきていると感じています。既存のアパレルブランドとは根本的に違うやり方で、注文を受けた必要な分だけ作る、自分にあった色やサイズのものを長く着ていただけるようなものづくりをしたいと考えています。
──ホールガーメントテクノロジーを導入することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか?
企画、デザイン、織り、裁断、縫製といった分業が不要で、洋服づくりをまとめて自社で行うことができるため、短い納期での完全受注生産が可能になりました。受注から2週間程度で発送できます。また、中間業者を通さないことによって、原価を安く抑えています。最高級の素材を使用しているにも関わらず、既製品と同程度か少し安いくらいの価格でご案内できています。生産プロセスはオーダーいただいてから、(1)ニッティングデータの作成、(2)編み立て、(3)洗い、風合い出し、(4)仕上げ、タグ付けをすべて内製で行っています。
──ECサイトにニットデザインシミュレーターを導入したのは世界初とのことですが、このシミュレーターが顧客にもたらす利点とは?
受注生産において一番の課題となる、「どんな感じに仕上がるのかがわからない」という点をできる限り改善します。またシミュレーションからオーダーまでシームレスな購買体験を提供します。また、サンプル生産が不要なため廃棄が出ないことや、スピード感を持って商品展開を行うことができる点もメリットですね。
──ECサイトへ導入するにあたり、苦労したのはどんなところになりますか?
Shopifyのプラットフォーム上でカスタムオーダーが可能なサービスが少なく、海外アプリをプラグインするのに苦労しました。また、バーチャルのサンプリングやカラーデザインに対して、デザインとカラーの数だけ工程が発生するので、効率化が課題だと考えています。オンラインだとどうしてもサイズ感や生地感が表現しづらいことも課題です。スマホでの採寸も試しましたが、まだ精度的に実用段階にはないと判断し、サイズレコメンドシステムを導入しています。
──製品の特徴として、4,000通り以上のパターンから選べるカスタムボーダーニットがありますが、このカスタマイズオプションはどのような要素に焦点を当てていますか?
33色展開のカラーバリエーションの強みを生かして、非常に多いパターンの中から、その人だけの「デザイン」「配色」「シルエット」を選べます。「ボーダーニット」というシンプルな定番アイテムですが、ボーダーの太さや配色によって、顧客様が自分らしさや美意識を自由に表現してほしいと考えています。
──Haut tricotには米国産の海島綿が使われています。どのような特徴がありますか?
シルクと間違われるほど光沢があるにも関わらず、コットンであるため手洗いが可能で扱いやすい点を重視しました。自社でまとめて仕入れて染色しているため、最高級素材でも価格を抑えて提供することができます。厳選した素材を継続して使用していく上で糸として在庫を持つにあたり、春夏はこれだけで十分と言えるくらいの素材だと考えています。
──ホールガーメントシステムがもたらす新たなビジネスモデル、製品の特徴について教えてください。
ホールガーメントを採用することによって、縫い合わせなどの工程を省きます。それにより分業が不要になり、すべて自社でものづくりを完結させられ、商社や中間業者というサプライチェーンをカットすることで、高品質かつ低価格な商品を両立しています。また通常の洋服と違って縫い目がないため、非常に着心地がよいという感想をいただくことが多いです。
ポスト資本主義的なビジネスモデル
──Haut tricotの環境問題への取り組み方について教えてください。
ただリサイクル素材で大量生産して、余ったらセールで売り切るのではなく、完全受注生産で必要な分だけ作ることが究極的にサステナブルであることだと考えています。「5つのR」で言うと、「Reduce」ですね。また洋服生産量の半分が廃棄されていると言われる現代において、完全受注生産を通じて、大量生産や衣料廃棄について考えてもらうことが、人々の意識を変えることにつながると思っています。
──最後に、今後の活動についても教えてください。
テクノロジーを使ってデジタル時代の、アパレルブランドを作っていくに当たって、具体的にはスマホでの採寸や、VR、AI、3Dサンプリングのさらなる活用を考えています。大量生産を前提としないポスト資本主義的なビジネスモデルで、人々の意識や常識を変えるきっかけを作ることが目標です。
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