有限会社やまぎんの子会社である株式会社BIOTECHWORKS-H2が、廃棄物のほとんどを再生可能エネルギーに変換し、サーキュラーエコノミーの実現を試みる「バイオテックワークスエイチツー」事業に取り組んでいる。
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同社は、その第1弾プロジェクトとして、今年4月から商品回収時のCO2削減量を、商品販売前から可視化する「環境貢献度の表示サービス “REBORN” by BIOTECHWORKS-H2」をスタートすると発表した。
そこで今回、同社の代表を務める西川明秀さんに、「バイオテックワークスエイチツー」事業の概要や、環境貢献度の表示サービス、今後の展開などについて伺った。
「グレーゾーンのないサーキュラーエコノミー」を目指す
はじめに、貴社の概要について教えてください。
有限会社やまぎんは、2000年創業でアパレルのODM・OEM、生地開発などを手掛けている会社です。そのなかで、SDGsという言葉がない2012年からリサイクル素材に取り組み、リサイクルコットンやリサイクルナイロンの開発も行っています。
2023年には同社が開発した「ZERO-TEX」を使用した「ZERO-TEX Bi-Colour Over-Shirt」がヨーロッパ最大級のスポーツウェアの展示会ISPOで「ISPO Textrends Award Top Products」を受賞しました。
こうした取り組みと並行して、子会社である弊社バイオテックワークスでは、グレーゾーンのないサーキュラーエコノミーを目指しています。ヨーロッパではグリーンウォッシュの規制強化をはじめ、表面的ではないサステナビリティの推進に注目が集まっています。そうした流れを踏まえて、私も本当の意味でのカーボンニュートラルを構築したいと考えました。
具体的には、廃棄衣料品を水素にして、それを再生可能エネルギーにするプロジェクトに取り組んでいます。将来的には、衣料品だけでなく、廃棄物すべてを再生可能エネルギーに変えて、燃料として活用していくことを目指しています。
「燃やさず」に廃棄衣料品を水素化
廃棄衣料品を水素化するのは、具体的にどのような仕組みになっているのでしょうか。
まずは企業や個人から廃棄衣料品を集めて、私たちの倉庫に送っていただきます。その後、私たちは廃棄衣料品の量を正しく計測して、水素化したうえで、再生可能エネルギーに変換します。さらにこの回収によってCO2削減がどれだけできたかを数値化します。そして、このデータをエビデンスとしてきちんと提供するというのが、一連のサイクルとなります。
廃棄衣料品を水素化するプラントの仕組みですが、特徴は「燃やさない」点にあります。現在の廃棄物処理の課題として、燃やしてしまうことでCO2を大量に排出していることが挙げられます。そこで、弊社のプラントは「次世代のガス化」処理を行うことで、燃やす場合と比べてCO2を約80%削減することができます。また、衣服のボタンなど、付属品もそのままプラントで処理できます。
さらに、排出されたCO2に関しても、すべて回収して販売できます。このように、ゴミを出さずにサーキュラーエコノミーを実現させ、リジェネレーション(再生)を実現することが、私たちのプロジェクトです。
現在、アメリカのプラント企業と契約し、カリフォルニアで高さ15メートルほどのプロトタイプのプラントを使用し概念実証を行っております。そして、今年の末から来年にかけてマレーシアで本格的なプラントの建設を予定しています。日本でも、2026年の稼働を目指しています。
「環境貢献度の表示サービス REBORN」をスタート
プラントの稼働に先駆けて、4月から実施予定の「環境貢献度の表示サービス」について教えてください。
アパレル製品の販売前に、商品回収後のCO2削減量を見える化するサービスになります。具体的には、製品のラベルにQRコードをつけ、それを読み取っていただくことで、私たちの専用サイトでCO2削減量を確認できるという仕組みです。ここで見える化されるCO2削減量は、弊社のプラントで処理した場合を想定した数値となり、各製品の素材をもとに計算するシステムとなっています。ラベルとしてQRコードをつけるだけなので、販売側は既存の製品すべて、あるいは一部商品のみに付与するなど、柔軟な対応が可能です。これにより、販売側は具体的な削減量を購入者側に示すことができます。
「環境貢献度の表示サービス」を導入するアパレル企業は、実際に廃棄衣料品の回収もセットで行う形で運用が始まるのでしょうか。
2パターンを想定しています。ひとつは、QRコードを単体で導入するパターンです。こちらは回収までは行いません。アパレル販売企業様とともに回収プロジェクトを推進して参ります。もうひとつは、おっしゃられた通りにQRコードを付与するだけでなく、回収までをセットで行うパターンです。具体的には、ユニフォームメーカー、またはユニフォームを採用しているアパレル企業が導入予定です。ユニフォームを扱う企業は、自社製品の回収が他の廃棄衣料品に比べて容易であることから、取り組みやすいと考えています。やはり回収までセットで導入いただくことが理想ですし、その環境を作ることも私たちの仕事であると考えています。
廃棄衣料品を回収しやすくするために、どのようなことに取り組む予定ですか。
現在、廃棄衣料品の回収というと、販売店舗やイベントスペースなどに回収ボックスが設置されているケースが多いと思います。そのため、個人を中心にもっと簡単に回収に協力できるように、ショッピングモールの駐車場などに設置しようと動いています。近い将来は、駅や空港にも設置したいと考えています。
今後の「バイオテックワークスエイチツー」事業について教えてください。
私たちは、廃棄衣料品を無駄にせず、再生エネルギー化することを「商業ベース」で運営することを目指しています。
それはつまり、環境に優しい事業であるとともに、人にとっても優しい事業であるということです。
どれだけ環境に良い取り組みであっても、個人や企業がそこで負担を感じてしまっては、持続しません。そして、利益もなければ事業は継続できません。みんなが簡単に参加できて、いかに手間がかからないようにするか、その仕組みを実現したいですね。
その意味で、最終的には自治体に参加してもらうことも視野に入れています。回収について、個人が一番楽なのは家庭ゴミと同じように出せることですよね。そこで回収された衣料廃棄品を私たちが選別をして、どの企業が販売したのか、CO2削減にどれだけ貢献しているのかを数値化できるようにしたいと考えています。
「バイオテックワークスエイチツー」というプロジェクトを通して、「廃棄物から水素へ、水素から再生可能エネルギーへ」という循環を生み出していきたいですね。
PROFILE|プロフィール
西川 明秀(にしかわ あきひで)
有限会社やまぎん 代表取締役
株式会社BIOTECHWORKS-H2 代表取締役
BIOTECHWORKS-H2 INC. CEO & Founder
Aki-Nishikawa-Consulting合同会社 CEO
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