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「映画は自由」 俳優 山本奈衣瑠の“表現者としての姿勢”に迫る

「映画は自由」 俳優 山本奈衣瑠の“表現者としての姿勢”に迫る

クリエイティブプラットフォーム
QUI

台湾出身の新鋭・蘇鈺淳(スー・ユチュン)監督の初長編映画『走れない人の走り方』で、理想の作品をつくるために奔走する映画監督の主人公・キリコを演じた山本奈衣瑠へのインタビュー。

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近年、俳優として目覚ましい活躍を見せ、モデルやクリエイターとしても実績を重ね続ける「表現者」の姿勢に迫った。

監督の選択を信用できる

― QUIでは2022年の映画『猫は逃げた』でも山本さんにお話を伺わせていただいたんですが、なんだか猫に縁がありますよね。本作『走れない人の走り方』でも猫が物語の重要なピースとなっています。

私も思いました。また猫を探してるじゃん。猫逃がしがちじゃんって(笑)。

― 猫は好きですか?

動物は基本的にすべて好きなんですけど、飼っているのはワンちゃんなんです。でも共演は猫ちゃんばっかり。

― 出演の経緯は?

『走れない人の走り方』はもともと監督のスーちゃん(蘇鈺淳(スー・ユチュン)監督)が通っていた、藝大の卒制(東京藝術大学大学院映像研究科の卒業制作作品)で。藝大では前期で短編を撮ってから、卒制で長編を撮るらしいんですね。短編「鏡」のときに初めて連絡が来て一緒にやって、そのあとのもスケジュールが合えばまた一緒にやりたいと言ってくれたんです。蘇監督の考えていることや表現したいことが私も好みだったので、内容はあまり聞いてなかったけど「やるやる」と。

― 最初に短編で声をかけられた理由は、蘇監督に聞きましたか?

連絡をもらったときがちょうど『猫は逃げた』が上映するタイミングだったんですよ。

― じゃあそれを観て?

観たわけじゃなくて、先輩から私を勧められたそうです。しかも今ちょうど映画やってるからいいんじゃない、みたいな。

― わりと感覚的にキャスティングされたようですね。

今回は私も他のキャストを選ぶ段階からずっと関わらせてもらって、オーディションの相手役も全部やったんですが、蘇監督は大半の人が「この人がいいよね」という方じゃない人を選ぶんですよ。最終的に誰かの意見で判断するんじゃなくて、彼女なりの感覚で「この人がいい」「これが正しいと思う」と選択していく。そこを私はすごい信用できるなと思っていて。

― そこはちょっと、山本さん演じるキリコにも通じるものがありますよね。蘇監督はどんな方ですか?

自分のペースを持っている人です。だからこそすべてに意味があって、意志がはっきりしている印象です。現場で迷ったりもするんですけど、表現したときにそれがすごくおもしろくなるから、みんなが「スーのためなら待とう」という空気になる。諦めないところは絶対に諦めないし、マイペースそうに見えてこだわりがめちゃくちゃ強いので、一緒にやっていて不安になることはまったくないですね。

― 監督としての才能を信じられるんですね。

あとは好みが私とすごく似てるのもあるんですよね。

― 気が合う?

そのとおり。単純に気が合います。

なにもない時間が必要

― 蘇監督からは、キリコについてどんな説明がありましたか?

映画監督の役だし、蘇監督自身のことを書いているのかなと思ったんですが、「私と思ってやらないでね」「奈衣瑠がやりたいようにやって」と。あとは私のシーンじゃなくても「このセリフどう?」って相談してきてくれることが多かったです。終盤の喫煙所のシーンも、撮影開始時間が遅れちゃうぐらいギリギリまでセリフの変更を2人で考えたり。

― やっぱりキリコと重なって見えます。キリコは、役のことは役者が考えて監督に気づかせてほしいぐらいの感覚を持っていました。

(役者に対して)「自分でやって」みたいなことを言ってましたよね。

― たしかに役者は監督の操り人形じゃないし、監督自身も役のことがすべてわかっていたら撮る必要がないですよね。それぞれの考えを持ち寄って化学反応を起こしたいという気持ちもあるでしょうし。

そうなんです。たぶん言ったことだけやるというのは、そんなに求めてなくて。脚本と場所は与えるけど、あなたらしくやることこそを大切にする人だから。オーディションでもすごく器用だなあという人でなく、ちゃんとその人らしさがある人を最終的には選んでいました。

― 自分が用意してきたものを打ち破ってくれそうな人を求めている。

そうそう。そこに期待しているんだと感じました。

― そういう現場は毎日ワクワクしそうですね。

1から10までこれ通りに踊ってじゃなくて、曲を流すから自由に踊ってと言ってくれる感じ。私のタイプ的にもそのほうがすごくやりやすくて助かりました。

― キリコにシンパシーを感じる部分はありましたか?

こだわりが強すぎて、迷いすぎて、やりたいことがありすぎて、結局期限に間に合わないところはめちゃくちゃ似ていると思います。

― 本当に自分がつくりたい理想と、予算やスケジュールなどの現実がマッチしない部分って、ものづくりではよくあることですよね。本作においても主題のひとつですが、山本さんはその理想と現実のギャップに、どう折り合いをつけていますか?

「もう終わり」「もういいや」みたいなモードになって、まず1回泣いちゃいます……。でも、「自分がやりたいから始まったんでしょ」って自分に言い聞かせて、とりあえずやるって感じかな。なのでその時は折り合いがついたなんて思えないですよ。作品が世の中に出て何年も経ったときに、どんな味がするのか、どんな匂いを放っているのか、それをどう感じられるかで、やっと本当の折り合いってつけられるものなのかと思います。

― キリコもそうでしたけど、プライベートと仕事の両立も難しいですよね。バランスを考えていますか?

考える前に始まっちゃうから、日常生活の中では仕事とプライベートの境目があんまりないタイプかも。もちろんオフは絶対欲しいし、スケジュール的にバッと頑張って、休みができたら1人で海外に行ったりしています。

― 旅をすることも大切にしている?

大切です。散歩もめっちゃするんですけど、そういうなにもない時間が必要で。私は家も駅からすごく遠くて、そこで頭を空にして歩く時間がないと無理ですね。年末に旅行に行ったときも、行先でずっと散歩して終わりました。

できるだけ間違ったことはしたくない

― 『走れない人の走り方』というタイトルがすごくいいですよね。愛嬌があるし、どんな人も肯定してくれるような。映画を観たあとはとくにしっくりきました。

ストーリーの後半で『走れない人の走り方』というタイトルが出てくるけど、そのタイミングもすごくいいなと思って。キリコなりの走り方なんだって伝わってくるじゃないですか。タイトルは最後に決まったんですけど、かっこつけてない感じもいいですよね。

― 映画づくりをテーマにした映画でしたが、山本さん自身がものづくりで大切にしていることはありますか?

映画に限らず何かを生み出すことで、会ったことのない誰かの選択を良くも悪くも変えてしまう可能性があるし、もしかしたら無自覚にいろんな問題に加担しているのかもしれない。そう考えると、できるだけ間違ったことはしたくないと気をつけてはいます。

― とくに映画というメディアの特徴をどのように捉えていますか?

映画とか音楽って頭じゃなくて身体で理解していくじゃないですか。なので他のメディアに比べて人を動かしてしまうパワーがあるなと思っています。

あと、物語は活字でも伝えることはできるけど、なぜ映像にする必要があるのかも考えます。それでいうと、今作は活字では表現しきれない、映像にしかできない手法を使っているところも魅力的ですね。

映画はフィクションとノンフィクションの間だったり、メディアの中でも自由度が高いものだと思うので、お客さんの時間をいただけるのであればちゃんと豊かなものを届けたいと思っています。

― 山本さん自身は、映画を撮ってみたいとは思わないですか?

今回、蘇監督が(カメオ出演で)出てくるとき、最後にヒューンって画面が黒くなるじゃないですか。

― 画面が黒く塗りつぶされていって、最後に蘇監督の顔の部分だけ丸く残る編集ですね。

そうそうそう。あれを観て「うわ、やられた」と羨ましくて。私は本当にずっと、あのヒューンの中に入るのが夢だったので。あとは『ちびまる子ちゃん』のガーンって顔に出るのにもすごい憧れがあります。映画だと、そういう自分の好きな世界を自分でつくれるわけじゃないですか。今のところ映画を撮りたい気持ちはないですが、自分の理想を自由に形にできるのは楽しそうですよね。

― キャリアを重ねていくうちに、撮りたいとなるかもしれませんね。

そうですね。ヒューンやりたいです(笑)。

Profile _ 山本奈衣瑠(やまもと・ないる)
1993年11月12日生まれ、東京都出身。モデルとしてキャリアをスタート。2022年公開の映画『猫は逃げた』(監督:今泉力哉)で、オーディションにて主演に抜擢される。その他、『追い風』(監督:安楽涼)、『親密な他人』(監督:中村真夕)、『記憶の居所』(監督:常間地裕)など様々な作品に参加。蘇鈺淳監督とは東京藝大映画専攻17期 春期実習作品『鏡』で初めてタッグを組む。今後、映画『ココでのはなし』(監督:こささりょうま)、『夜のまにまに』(監督:磯部鉄平)、『冬物語』(監督:奥野俊作)、『オン・ア・ボート』(監督:Heso)などメインキャストを務めた長・短編映画の公開を多数控えている。その他、自ら編集長を務めるフリーマガジン「EA magazine」を創刊しクリエイターとしても精力的に活動している。

top ¥31,900・Skirt ¥59,400 / AKANE UTSUNOMIYA (03-3410-3599), earrings ¥28,600・ring ¥28,600 / BONEE (EDSTRÖM OFFICE 03-6427-5901), shoes ¥35,200 / Purpred (03-3410-3599)

Information
映画『走れない人の走り方』
2024年4月26日(金)より、テアトル新宿にて二週間限定上映
以降、順次公開
出演:山本奈衣瑠、早織、磯田龍生、BEBE、服部竜三郎、五十嵐諒、荒木知佳、村上由規乃、谷仲恵輔、綾乃彩、福山香温、齊藤由衣、窪瀬環、平吹正名、諏訪敦彦
監督:蘇鈺淳

©2023 東京藝術大学大学院映像研究科

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