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表参道・原宿の夜、活気が再び その気配を辿る

表参道・原宿の夜、活気が再び その気配を辿る

表参道・原宿のインフォメーションメディア
OMOHARAREAL

夜のオモハラエリアは元気がない。そんなことが言われるようになってからどれくらい経つだろうか?他の記事でも何度か紹介しているが、このエリアもかつては夜を楽しむ若者が集まっていた時代もあった。

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それがなんなのか、というのを本稿で語っていこうと思うがその前に、青山方面では「VENT」、千駄ヶ谷方面では、世界的にも知られる神宮前2丁目の老舗「bonobo」が。その反対、渋谷にほど近い神宮前5丁目・6丁目は「TRUNK (HOTEL)」・「不眠遊戯ライオン」・「ENTER」・ミヤシタパーク「OR」が音楽イベントを頻繁に行なっている。このようなダンスクラブ、DJバーがオモハラエリアのナイトカルチャーの受け皿となっていることは書き記しておきたい。

さて、それでは本題に入ろう。

表参道・原宿の夜を熱くするものとは?

表参道・原宿エリアにはあまり知られていないゴールデンアワーがある。知られていない、というのは主に店舗やギャラリーの顧客、関連のPR、メディアで働いている人に対しての向きが強い催しだからだ。それこそが企業やブランドが行っている「レセプションパーティ(以下:レセプション)」である。

東急プラザ 表参道 「オモカド」5F「LOCUL」で行われた、90年代〜00年代初頭のストリートブランド全盛期“あんとき”を深堀りするウェブメディア「ミミック(MIMIC)」初のフィジカルイベント「あんときマーケット」レセプション。(2024)

レセプションとは、店や企業の「受付」を指すこともあるが、意味としては「歓迎会」や「招宴」を表す言葉で、その名の通り表参道・原宿エリアは特に、アートイベント、新作発表、オープニング、ポップアップショップなどのレセプションが多く開催されている。特に新型コロナが感染症法上の5類に移行した2023年5月からは爆増している印象だ。

どの街にもレセプションはあれど、表参道・原宿という街はその数が圧倒的に集中している。その理由は主に2つ。

ひとつはご存じの通り、この街は見本市的な側面があるためブランドの旗艦店が多く、その周辺には関連するPR会社の本社が置かれていることが多いこと。

もうひとつはアートギャラリーや短期で借りられるポップアップスペースの数も集中していることが挙げられる。

ビッグメゾンやグローバルブランドがポップアップを行うことが多い原宿駅近く、ヨドバシJ6ビル。ここで行われるイベントは規模が大きい。メディア内覧会後のレセプションの様子(「TIME UNLIMITED - カルティエ ウォッチ 時を超える」2023)

新店のオープン、新商品の発売、新しいプロジェクトの発表、アートギャラリーの展覧会。会期スタートとなる週末金曜日の夜ともなればエリア内で複数のレセプションが催されている。編集部が回れる範囲は多くても、3、4軒ほどだが実際にはその2〜3倍以上の数のレセプションが行われている。あまりに多くて回りきれないときは編集部員で分担して回ることも。

我々と同じように他会場で頂いたであろう、ノベルティかなんかのショッパーをいくつか持っている人を見かけることもしばしば。他のレセプション会場で会った人と、また違う場所で顔を合わせたり、それが友人や知人ならばそこから連れ立って回遊したりする。

規模は違うが同時多発的に行われるレセプションを回るのは、かつての「VOGUE FASHION’S NIGHT OUT」(通称「FNO」)を彷彿とさせる(取材や記事に関連した場所、関係性がある場所を回るというのがFNOとの違いだろう)。

 VOGUE FASHION'S NIGHT OUTの様子。さながらお祭りのような熱気を写真から感じる(2016 編集部撮影)

“見本市”の街で繰り広げられる、ボーダーレスな社交場

こういったレセプションパーティが行われる会場はたいていどこも盛り上がっている。当然といえば当然で、レセプション自体がそのブランドや、お店の威信をかけてアクセルを踏みまくっている状態。

少々大袈裟かもしれないが、人を呼び、お披露目とおもてなしの場でスベってしまっては沽券(こけん)にかかわることになる。したがってそこには珠玉のコンテンツが用意され、お祭りのように退屈することはない。

南青山5丁目「ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン フラッグシップストア」リニューアルのレセプションパーティでは、スタッフによる万全の体制で看板商品のフラワーボックスの制作体験ができるワークショップが展開されていた。(2023)

そしてPR、アパレル、キュレーター、作家、クリエイティブにまつわる、感度の高いさまざまな人たちが表参道・原宿の街の中からはもちろん、外からも大勢が集まってくる。

レセプションにて、インフルエンサーがその場でアップサイクル体験をするARC'TERYXのワークショップは大盛況(「ARC’TERYX MUSEUM」2024)

表参道・原宿は最先端のショップ、ブランドが連なるエリアでもあるだけに、普段表参道・原宿にいない、他のエリアからも人が大勢集まるため、他エリアの人たちと交流できる希少な機会とも個人的には捉えている。

ミヤシタパーク・SAI「BOLMETEUS(ボルメテウス)」(2024)

さて、ここまで書いて、レセプションなんてインフルエンサー、メディア、関係者しか行けないんでしょ?と思う人が多いかもしれない。確かに招待制の、クローズドなレセプションもあるのも事実。お目当てのレセプションにどうしても行きたいなら、知恵を絞ったりコネを作ったりするしかない。

が、しかし、ここは一流のクリエイティブな感性が集まる“見本市”の街。意外に思うかもしれないが誰にでも門戸を開いているブランドや店舗、ギャラリーは多い。レセプションの情報をキャッチできるか、フィジカルでその場に行けるか、といった点である程度選別されているとも言えるが、その気取らなさに逆にゆとりを感じて“らしい”というか、表参道・原宿の企業、ブランド、ギャラリーの懐の深さは一味違う。

2023年までの10年間、表参道に店を構えていたBOOKMARCは体感的にはほぼ毎週と言っていいほど、レセプションを行なっていた。しかもトークイベントなど限定的な催し以外はそのほとんどがエントランスフリー。クロージングパーティにはたくさんの人が詰めかけた。(2023)

そしてレセプションはただ集まってどんちゃんやっているだけではなく、ホストとゲスト、あるいはゲスト同士の交流の場として機能している側面がある。

ホスト側にとってはおもてなしの場になるため、パーティ形式でケータリングが振る舞われたり、ドリンクやフードが大抵用意されていて、ありがたいことに無料で配布してくれることが多い。これもひとつのコミュニケーションの潤滑油というわけ。

ギャラリーなら作品やアーティストを、ショップやブランドであれば新しいプロダクト、プロジェクト、ブランディングをより深く伝えた上で、SNSなどでの情報発信をしてもらうことを目的のひとつに、双方向のコミュニケーションの場を創造しているのだ。

表参道・原宿にあるビームス系列の店舗でおそらくいちばんレセプションを行っていると思われるのはビームスT 原宿。アーティストを招聘してのアートショーが頻繁に開催されており、レセプション時は随一の盛り上がりを見せる。グループ展「CANDY CRUSH」(2024)

ちょっと寄り道&お祭り感 大人の道草には価値がある

情報の多さとして、間違いなくレセプションに足を運んで得られるものは多い。それは本来の展示や商品についてを知ることはもとより、その周りに集積されているいわゆる“寄り道”的な情報にも価値がある。

LOVUS galleryで行われたアーティスト兼アニメーター、ジェロン・ブラクストン(Jeron Braxton)個展「DOPAMINE」 (2024)。レセプションでは故・Virgil Abloh手がけるLouis Vuittonと仕事をともにした経歴もある本人を囲み、和やかな雰囲気。

例えば、フードケータリングから行きたかったお店、知らなかったお店について知ることができるし、そこで会う人から違う場所、違うブランドの情報を得られることもある。ゲスト側にとっては、集まる人との情報交換やホスト側との関係値を構築する貴重な機会。レセプションを介すことで会費制の名刺交換会や異業種交流会とは違う、肩の力を抜いたコミュニケーションができるのも魅力だ。

システマチックでない分、自分で動かなきゃ何にも起きないけれど一夜限りのお祭り的なイベント性、前夜祭的な特殊な温度感が背中を押してくれるはず。

さらにそこには、共通目的や好みが近しい人たちが集まっている。ポジティブなコミュニケーションが取りやすい要因だ。 楽しむことを前提としていると、人ってモチベーションが上がるもの。しばしば、ひとつの会場で話し込んでしまうこともある。

コロナ禍を経て、人と人とが対面して交流することの重要性を再確認した今。レセプションには以前にも増して活気が満ち溢れている気がする。

クリエイティブかつ、トレンドを纏い、ファッショナブルで、先進的でアーティスティック。さまざまな業種や人が集まり、マーブル模様を描く街だからこそ、レセプションを開くことにさらなる価値が高まる。そんなエリアの象徴的な要素をグッとコンパクトに凝縮したレセプションが、同時多発的に行われているというのは、他の街ではなかなか類を見ないのではないか。

招待事前登録制で行われたプラダ青山店の田名網敬一の個展「PARAVENTI: KEIICHI TANAAMI」(2023)のレセプション。青山の街の眺望も素晴らしい、普段とは違うパーティ仕様のフロアにて。

そして大概のレセプションは、18時、19時頃からスタートし大体が21時、22時までには終わる。どんなに遅くとも終電までに終了するレセプションが多く、比較的行きやすい時間に設定されているのが特徴。始発までのオールナイトイベントほどハードルが高くないというのも、多様な人たちが集まる要因だろう。

近隣に文教地区があることで夜間、音楽イベントを行えるエリアや店舗の営業形態は限られてしまっている。そういった制限がある反面、深くない時間に商業地区で行われるレセプションはパフォーマンスを発揮する。そのためレセプションがエリアで集中して行われているケースが多く、見つけたら入れるかどうか聞いて立ち寄ってみれば何か新しい出会いがあるかもしれない。

NOAH × Stacks Bookstore オープニングレセプション(2023)ちなみに筆者の原宿最初のレセプション体験は2017年「NOAH CLUBHOUSE」グランドオープンのレセプションだった。忘れられない思い出。

路上の延長線上で人を繋ぐ その受け皿の発展に期待

街ではインバウンドも増え、街中での路上飲みが問題となっている昨今(実際に問題なのはそのあとのゴミだったりする)。渋谷駅周辺では平時でも、路上飲みが禁止される条例が2024年10月1日から施行されることが取り沙汰されている。表参道・原宿、神宮前エリアも同じ渋谷区なので他人事ではない。

オフィスからの帰り道、集まって路上で飲んでいる若者、観光客はある種、オモハラエリアの日常的な光景となっている。全肯定はしがたいが彼、彼女たちだって、好んで路上で酒を飲んでいるわけではないだろう。夜、酒を片手に語りたいとき、人恋しいときに、ちょうど良い場所。たまたまそこが路上なのである。

そもそもやっている店が少ないのだから、なんでも取り締まって排除することだけが解決なのかは疑問ではあり、ローカルメディアとして考えなければいけない課題のひとつだと思う。 

表参道 BOOKMARCクロージングパーティ。向かいのラルフローレン 表参道の雰囲気もあいまって、海外に来たような雰囲気だった。

そんな事情を鑑みると、先述したとおり、早い時間に終わるレセプションのあと、気軽に行ける場所が増えれば、街を回遊することに繋がる。レセプションによってはクラブに場所を移してアフターパーティが行われることも多い。そこまでの中の時間がぽっかり空いてしまっているところに、いくつか受け皿としての場所(飲食店やバーなど)がもっと発展すれば、オモハラエリアの夜の復活へのポジティブな要素になり得る。

きっとリスペクトすべきオモハラの先人たちも、店の軒先や路上の他愛もないワンシーンから大きな文化のムーブメントを生み出してきたに違いない。個人的にはいつだってカルチャーは街の中、路上から生まれるものであると信じている。 すでにそれは始まっているかもしれないが、今後、表参道・原宿で路上の延長線上、店や企業と路上を繋ぐ浮島として、レセプションがさらに機能していくのでは。そんな可能性を大いに感じる。

表参道 BOOKMARCのクロージングパーティにて高木完氏によるDJ(2023)。

最後に、レセプションに行く際は、相応のルールやマナーを守るのは大前提。くれぐれも、事前申し込み制や関係者招待制のクローズドなレセプションに突然行ったりなど、不躾な態度をとらないよう肝に銘じなければならない。自戒を込めてもいるが、ホストやその場で出会った人たちへの愛とリスペクトを忘れず、魅力的な表参道・原宿の夜の街で各々の交流を楽しんでほしい。

アーティスト・矢入幸一氏の過去最大規模個展『Koichi Yairi 24,♯1』レセプション(2024)。親交のあるギャラリストやアーティスト同士が一堂に会している光景もならでは。

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