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繊維商社もブランディングが必要な時代 オウンドメディアを立ち上げたタキヒヨーの挑戦

Video by: FASHIONSNAP

 1751年(宝暦元年)に創業し、270年以上の歴史を持つ繊維商社のタキヒヨーが2024年1月、サステナブルの情報発信を行うオウンドメディア「_ for good(ブランク フォー グッド)」を立ち上げた。発案者はサステナブルPRチームの森康智氏。プラットフォーム上では、タキヒヨーの名前をほとんど出さず、「一緒に考える」というコンセプトのもとサステナブルに知見のない新入社員をはじめ、職人やデザイナー、学生などさまざまな立場のゲストの視点を交えた情報を発信している。BtoBビジネスを軸にする繊維商社が、売り上げに直結しないオウンドメディアを運営するに至った背景とは。森氏と取締役執行役員でサステナブルセクションリーダーを務める土屋旅人氏に話を聞いた。

タキヒヨー株式会社 取締役執行役員 スタッフ副担当 兼 グローバルブランドマネージャー 兼 サステナブルセクションリーダー

土屋 旅人

Tabito Tsutiya

1979年生まれ、東京都出身。中央大学卒業後2002年にタキヒヨー入社。テキスタイル部門で営業の経験を積み、イタリア・ミラノで3年間の研修・駐在生活を送る。帰国後はテキスタイルの輸出入に携わり、事業の拡大に貢献した。2019年3月に貿易部長、2022年3月に執行役員を経て2023年5月取締役執行役員に就任。2025年3月より現職。

タキヒヨー株式会社 サステナブルPRチーム所属

森 康智

Yasutomo Mori

1989年生まれ、福岡県出身。東京大学大学院修了後2014年にタキヒヨー入社。広報・IR、採用などの業務に携わりコーポレートコミュニケーションの知見を深める。現在は2025年3月新設のサステナブルPRチームにて、広報やキャリアコンサルティングの視点を活かし、企業価値向上を目指した共創的取り組みや情報発信、オウンドメディア「__ for good」の企画・運営などを担当。

◆ オウンドメディアが必要だった3つの理由

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 タキヒヨーは、企画・デザインから生産、物流に至るまで自社で行う一貫体制を備え、安定的な収益を確保してきた。しかし、業界内での知名度は高いものの、一般に向けたPR活動には消極的だったという。そんな同社がオウンドメディアを立ち上げたのには3つの理由がある。

 1つ目は「40年ぶりの業績悪化」だ。同社は、ファストファッションやEコマースの台頭、百貨店の店舗や国内アパレルブランドの閉鎖など衣料品業界を取り巻く環境の変化により、2017年に40年ぶりの赤字を計上。それを受け、持続的成長に向けた「Revitalaize Plan(黒字体質復活計画)」を発表し、グループ経営資源の連結により既存卸売ビジネス(BtoB)の強靭化を目標に掲げた。

 そうした会社の転換期にあたり、サステナブル関連のテキスタイルの輸出入に長年従事し、サステナブルセクションの責任者に就任した土屋氏と、採用と広報・IRを兼任してきた森氏が、外部に向けた発信の必要性について認識が一致したことからオウンドメディア開設に至った。森氏は「我々の事業形態上、PRマーケティングは通常の営業活動では溢れ落ちてしまうところがある。IRや採用における広報の勉強をしていくなかで『知られていないのは存在していないのと同じ』という提言を知り、本当にその通りだと感じた。業界内だけではなく、社外に知ってもらうには特別な施策を取る必要があった」と振り返る。

Image by: FASHIONSNAP

 2つ目は「インナーブランディングの強化」だ。タキヒヨーは「ものづくりによって課題を解決する会社」という共通認識を持ち、ものづくりを原理原則から理解した上で顧客に対して問題解決を行うというフィロソフィーを掲げている。その中でも素材開発に重きを置き、創業当初からテキスタイルを取り扱い、紡績機を保有するなどして差別化を図ってきた。欧米ブランドがサステナビリティについての意識を高め始めた10年ほど前から、取引先の小売業者に海外取引の際に話題に上がったことを共有したりと、社外に向けてものづくりに関する知見を共有する取り組みを行い、評価を得てきた実績がある。しかし、社内のほとんどがその活動を知らなかったという。森氏はその状況を受け、「オウンドメディアでサステナブルに関わる取り組みや対話を発信することで、会社の本質的な部分に目を向けるきっかけができ、社内のエンゲージメントが高まることでインナーブランディングに繋がる筋が見えた」と話している。

Image by: FASHIONSNAP

 そして3つ目は「サステナブル情報の発信強化」だ。同社はものづくりの知見を活かし、サステナブルなサプライチェーンの構築に注力をしてきたが、業界全体として川上に近いほど外部への発信に慣れておらず、国際認証など専門性の高い分野では学者肌の発信が多くなりがちで一般層に課題意識や取り組みの内容が伝わりにくいという問題意識を抱えていた。土屋氏は「僕自身、1年に何度も海外出張をしていたときは機内で本ばかり読んでいたので専門的な情報にもついていくことができましたが、役職に就いて日本にいることが多くなった今、動画コンテンツなどを目にする機会が増え、『1分だけでも見てくれたら良い』という余白を持たせた表現をしないと伝わらないという気づきがあった」と話す。また、森氏は社内の情報をまとめる中で、「タキヒヨーのスタイルとして、開発にしろ営業にしろ表面的な合理性を超えた遊びの部分を大事にしているため、“余白を大切にする会社”と言っていただくことが多い。その姿勢でコンテンツを発信することでより多くの人にわかりやすい伝え方ができると考えた」とし、同社が得意とする“余白を持たせた伝え方”を軸にしたサステナブルコンテンツの発信を決定したという。

◆ 宣伝はせず、正解の押し付けもしない。一緒に考える姿勢でコンテンツを配信

「_ for good」サイトトップページ

 「_ for good」は、土屋氏と森氏を含めた3人の少人数体制で運営し、タキヒヨーの強みであるものづくりや、サステナブルな知見を「一緒に考える」という姿勢を軸に発信。「発信においては利益を意識しすぎると非常にポジショントークになったり、反感を買ったりする傾向があるなと感覚的にわかっていたため、立ち上げ時には会社に絶対に閲覧数を目標に設定しないと伝えており、軸をぶらさずに運営することを意識した」と森氏。加えて、「一緒に考える、または一緒に取り組むというのをコンセプトにしているので、僕らが偉そうに教えたり、宣伝したりするつもりは無いという意味で活動や記事内では社名を前面には押し出さないようにしています」と続ける。

 一見、強気の策に思えるが、「情報に強みを持つ“中身のある会社だからこそできること”を深めたい」とし、コンテンツ制作においても「自社の課題解決の視点を活かして“いかに俯瞰して状況を捉えられるか”を意識した」という。森氏は「タキヒヨーは経営哲学の1つとして『客六自四』を掲げている。短期的に10の利益を取りきろうとせずに一緒にやっていくことでお互いが成長し、お客様に得をしてもらい、それが大きくなることで自社の拡大に繋がればいいという考え方を大切にしたい。今後も、余白を大切にするカルチャーをしっかり落とし込んだコンテンツを発信していきたい」と話す。


「_ for good」内のコラム記事

 「_ for good」を開設して約1年半が経ち、現在は繊維産業に従事するさまざまな職種の人とのウェビナーや、学生との取り組みも実施している。タキヒヨーの採用面接でも「_ for good」の話題が出るなど認知の拡大は進んでいるが、引き続き少人数体制での運営を続ける予定。森氏は「我々はメディア事業が軸ではないため、メディア運営をやりたいという人を採用して発信者を増やすよりも、実務をやるなかで仲間を見つけた方がブランディングに合う」と説明。土屋氏も、「繊維産業はどこを切り取っても面白いので、サステナブルの必要性に触れながらもまずそこの部分を汲み取ってもらえるような発信を続けていきたい。自社の利益については、回り回って我々の力量が伝わり、賛同してくれる企業さんが出てきてくれればいい」と締め括った。

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