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存続の危機だったワタリウム美術館が“次世代型クラファン”立ち上げ、第1弾には杉本博司が参画

Video by: FASHIONSNAP

 ワタリウム美術館が、“文化的遺産”の保護、修復、運営の支援を目的とした新プロジェクト「オライザ(Oriza)」を始動した。同プロジェクトは、連携したアーティストと制作したマルチプル(量産品)作品を国内外のコレクターに販売し、得た資金をさまざまな文化施設などの修復や運営に活用する取り組み。メディア向けに開催された発表会には、同館の和多利恵津子館長と和多利浩一CEO、同プロジェクトの発起人である袴田浩友、第1弾コラボレーションアーティストである現代アーティストの杉本博司が登壇した。

“存続の危機”にあったワタリウム美術館

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 ワタリウム美術館は、1990年に私立美術館として開館。現代アートを中心に、建築や音楽、禅の思想など、国内外の幅広いジャンルの芸術を紹介する場として、現在までに通算約120の展覧会を開催してきた。初代館長である和多利志津子氏は、1972年から1988年まで同館の前身となる「ギャルリー・ワタリ」を運営。アンディー・ウォーホル(Andy Warhol)やキース・ヘリング(Keith Haring)、ドナルド・ジャッド(Donald Judd)、ソル・ルウィット(Sol Lewitt)といった世界の現代アーティストを日本でいち早く紹介したことでも知られる。

 芸術祭や東京の街を舞台にした展覧会など、さまざまな挑戦的な企画を展開してきたワタリウム美術館は、一方で長年の資金難に悩まされてきたという。「自由に活動すればするほど、国からの支援などを得ることが難しく、このままでは続けていけない、と感じていました」と和多利恵津子館長。日本では国が指定した国宝、重要文化財を保護するだけでも年間数百億円の予算が生じており、それ以外の潜在的文化財は存続の危機に直面していることから、こうした状況を打破し、同館をはじめとした資金繰りの難しい私設の文化的施設などを支援する目的で同プロジェクトを立ち上げた。

左から:杉本博司、和多利恵津子館長

Image by: FASHIONSNAP

BASE出身の仕掛け人が目指す「次世代のクラファン」

 オライザのコンセプトは「文化を耕して、未来へ紡ぐ」。プロジェクト名は「稲」を意味するラテン語の「Oryza」に由来し、縄文・弥生時代から受け継がれてきた稲作から着想。日本のアートや文化財を未来へ“耕し、紡いでいく”ことができるエコシステム創出を目指す。

 同プロジェクトでは、マルチプルとして制作した作品の代金に、各プロジェクトごとに設定された最低金額以上の任意の「支援金」を上乗せして支払う支援者に作品を販売。国内のECやクラウドファウンディングサービスでは海外からの決算に制限が掛かる場合が多いが、オライザではクリプト決済(暗号資産を活用した決済システム)を導入することで、国外の支援者ともシームレスなやり取りを実現する。同プロジェクトの発起人である袴田は、ネットショップ作成サービスを提供する「ベイス(BASE)」の創業メンバー。独立後は「文化財 × ブロックチェーン」というビジネスモデルを提唱してきた。同氏によると、国内で展開されている既存のクラウドファウンディングサービスでは、同一対象への支援が2回目以降集まりにくいというデータがあり、継続的な支援を集めることが難しかったという。一方でオライザは、サブスクリプション機能など副次的なコンテンツを用意することで、持続性のある「次世代型クラウドファウンディング」を目指す。

袴田浩友

Image by: FASHIONSNAP

 このほか、将来的には、ブロックチェーンの活用によって誰がどこにどれ程の額を寄付したのか検証できるシステムの構築を計画。プロジェクト外でも、自分が支援したい文化的遺産に寄付できるようなプラットフォーム化を目指すという。袴田は「現在の資本主義の基本原則である『お金を払って対価を得る』という経済観を変えていきたい。文化や公益のために個人が自ら進んで支援し、社会全体で文化を支えていく。そしてその貢献が社会的に賞賛される価値観を醸成したい」と話した。

 なお、対象となる「文化的遺産」とは同プロジェクトによる造語。「文化財」という言葉は国によって定められた国宝や重要文化財、有形登録文化財などを指すが、同館のように私設で文化を発信している施設や、今後価値が見出されていくことが考えられる建物や芸能、文化資源を含め幅広く保護していきたいという考えから、「文化的遺産」という表現を採用しているという。また、文化財に該当するものに関しても、地震等の自然災害による被害で国の制度による補償が及ばないケースなどについては同プロジェクトの対象とする考えだ。

第1弾は杉本博司 × ワタリウム美術館

 オライザプロジェクトの第1弾には、現代アーティストの杉本博司が協力。同氏の代表作のひとつである「建築シリーズ」の限定エディションとして、建築家のマリオ・ボッタ(Mario Botta)が設計したワタリウム美術館の建築を撮り下ろした新作「WATARIUM ART MUSEUM 2025」を抽選販売する。25点限定で制作された同作には、杉本の直筆サインが加えられ、桐箱に同梱される。本体価格は6000USD(約87万円)で、開館35周年を迎え老朽化が進むワタリウム美術館への支援として別途700USD(約10万円)以上の支援金を支払うことを購入条件に設定している。抽選の応募受付期間は5月26日から31日で、当選発表は6月7日頃。

WATARIUM ART MUSEUM 2025

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 杉本自身も、古典演劇から現代演劇までの伝承・普及、古美術品等の保存・公開、現代美術の振興発展への寄与を目的として「小田原文化財団」 およびその活動拠点「小田原文化財団 江之浦測候所」を立ち上げ、文化継承に携わっている。同氏は「現代社会では、アートは金融商品になってしまいました。しかし本来アートは、消費的な様式から離れ独立していなければならない」とコメント。「私の時代は世の中が面白くないからこそアートが楽しいという感覚で、ある意味で社会に反逆的なことをしながらアートが生まれてました。でも今はマーケットリサーチをしてアートを作るアーティストがいるような、とんでもない世の中です。それでもアートの火は灯していかなくてはならないし、ひとつの発信源だったワタリウムが存亡の危機にあるということで、私も何か作品を作って恩返ししたいと思った」と話した。

杉本博司

Image by: FASHIONSNAP

 今後は、年に2〜3回の頻度での新作販売を目指し、第2回は年内の発表を予定している。第2弾以降は、ワタリウム美術館と同様に私設で文化発信を行う他施設と国内現代アーティストのコラボレーションを計画。プロジェクトの考えに賛同した杉本は今回無償で制作に協力したが、第2弾以降のコラボアーティストに支払われる謝礼や販売する作品数、購入に必要な支援金や支援者に還元されるサービスも都度アップデートしていくという。

最終更新日:

◾️オライザ 第1弾 杉本博司 × ワタリウム美術館
申し込み受付期間:2025年5月26日(月)〜6月4日(水)
抽選発表:2025年6月7日(金)頃
公式サイト

FASHIONSNAP 編集記者

橋本知佳子

Chikako Hashimoto

東京都出身。映画「下妻物語」、雑誌「装苑」「Zipper」の影響でファッションやものづくりに関心を持ち、美術大学でテキスタイルを専攻。大手印刷会社の企画職を経て、2023年に株式会社レコオーランドに入社。若手クリエイターの発掘、トレンド発信などのコンテンツ制作に携わる。

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