アンダーカバー出身 木村優が手掛ける新ブランド「キムラ」がデビュー　音楽とファッションを融合

　デザイナー 木村優が手掛けるファッションブランド「キムラ（KIMRA）」が、2026年春夏シーズンにデビューする。

　木村は1986年大分県生まれ。幼少期は、祖父が営むメンズテーラーを扱う紳士服店で、服に囲まれて育った。大阪のモード学園でファッションについて学び、卒業後はテキスタイルメーカーやアパレルブランドに勤務した後、「アンダーカバー（UNDERCOVER）」に入社。メンズコレクションやアクセサリー類の生産管理などを経験し、10年以上勤めた。

　中学時代から洋楽に傾倒し、自身もバンド活動を始めるほど、音楽やライブシーンから多大な影響を受けたという。「ライブに行く時、家から普段着として出発した服が、会場で着用者を輝かせるような勝負服にもなる。日常と地続きでありながら非日常のイベントであるライブにおけるファッションにずっと興味があった」と、木村は自身にとってのファッションと音楽の結びつきを説明する。

　キムラでは、この音楽カルチャーとファッションの関係性を軸に、新たな視点での提案を模索。観客とプレイヤー双方の思考を取り入れ、“音楽を楽しむためのユニフォーム”を実験的に提案していく。

　デビューコレクションは、1990年代のヨーロッパで隆盛したハードコアテクノカルチャーに焦点を当てた。ガバ（Gabber）やハッケン（Hakken）と呼ばれる激しいダンスミュージックや、これらのカテゴリーをあえてBPM約115に落とし込み、新たなグルーヴを生み出すという実験的な映像作品から着想を得たという。加えて、1980〜1990年代のドイツの若者の間で広がったストリートスタイルもアイデアソースとして挙げた。「当時、手頃な価格でスポーツブランド風のウェアが大量に流通し、グラブシーンや音楽的なスタイルと結びついた。そういう時代独特の空気感を残しながら、現代の感覚でスタイルを提案したかった」（木村）。

　アイテムは、オリジナルのグラフィックを配したTシャツや、バギーシルエットのハーフパンツ、ジャージー素材のパンツ、トラックジャケットとセットアップで着用できるパンツなど、スポーティでベーシックなデザインを基調とした。随所に木村の音楽を媒介とした文化交流的視点や、リアルで着て楽しんでほしいという思いが込められている。

　Tシャツのプリントは、キリル文字でダンスを意味する単語や、クルーのユニフォーム的なテイストを織り込んだ。春先や秋口に重宝するロング丈のライトアウターは、「肌寒い時期、アウターを着て会場についたらクロークに預ける。会場で見せるインナーだけではなく、行き帰りもファッションを楽しんでほしい」というリアルな“ライブ参戦”を意識して誕生した。音楽もファッションも楽しむ場であるライブシーンに向けて小物類も充実。ネックを日差しから守れるパーツ付きのキャップは丸洗いできるようにツバの芯を無くし、肌が触れる“スベリ”は取り外し可能となっている。サングラスには携帯しやすいようにカラビナ付きのポーチが付属。チェーンモチーフのアクセサリーは太さやチェーン違いで数種類揃える。

　カラーパレットはライブシーンで着飾ることを加味し、鮮やかなレッドやブルーなどを取り入れながら、服のクオリティを担保するため素材感も追求。ハーフパンツではオーガニックコットンを採用し、オープンカラーシャツには猛暑でも肌触り良く着用できるインドカディを取り入れた。

　木村にアンダーカバーで得た学びについて聞いてみると、「テクニカルな細かいところは言わずもがなで、姿勢としてデザイナーは誰よりも真面目に、最後まで諦めないことが必要だと学んだ。あれだけのコレクションを発表し続けるには、シンプルに熱意と誠実さが必要なんだと。ブランドを育てる、クリエイションを続けるためのあり方を、背中で見せてもらったと思う」と振り返った。

　次回以降も音楽的な要素は散りばめながら、徐々にジャンルレスなスタイルへと拡張していく。海外展開やショーの実施についても、前向きに計画するという。また、音楽カルチャーとリンクさせたイベントなど、発表形式や発信方法も様々な可能性を模索する意欲を見せた。