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実験からインフラへ ロボタクシーが変えるアメリカ都市と消費行動

在米28年のアメリカン流通コンサルタント
激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

運転席に人はいない。だが、走行は極めて静かで正確だ。ウェイモのロボタクシー車内から見えるこの日常風景こそが、自動運転が「実験」ではなく「都市インフラ」に移行した現実である。経営判断に必要なのは、この無人の運転席を自分の目で確認する体験だ。

ロボタクシー元年2025年、アメリカ都市交通は次のフェーズへ

2025年は、アメリカの都市交通においてロボタクシーが実験段階を脱し、実用インフラへと踏み出した年として記憶されるだろう。

サンフランシスコ、フェニックス、ロサンゼルスといった主要都市では、完全自動運転による移動が日常風景となりつつある。

単なるモビリティの進化ではない。これは小売、物流、都市設計、そして消費行動そのものを変える構造変化である。

この分野を牽引しているのが、アルファベット傘下のウェイモ(Waymo)である。ロボタクシーはもはや未来の話ではなく、現場で使われ、評価され、改善されるサービスへと進化した。

ウェイモが示した「商用自動運転」の現実解

ウェイモは2025年時点で、完全無人の有償乗車回数が累計1000万回を超えたと公表している。

毎週数十万回規模で乗車が発生しており、自動運転が「技術デモ」ではなく「都市サービス」として機能していることを示している。

現在の主戦場はサンフランシスコ・ベイエリア、フェニックス、ロサンゼルスである。専用アプリから呼び出された車両が無人で到着し、乗客を目的地まで運ぶ。

この一連の体験は、従来のライドシェアとほぼ変わらない。違いは、そこに人間のドライバーがいないという一点だけである。

さらに象徴的なのが、高速道路での無人走行を含む乗客輸送を開始した点だ。これにより移動可能距離と利便性は飛躍的に高まり、ロボタクシーは都市内の短距離移動にとどまらない存在となった。

流通DXワークショップでウェイモに乗る意味

当社が実施する流通DXワークショップでは、研修参加者に実際にウェイモのロボタクシーへ乗車してもらっている。

これは単なる話題づくりではない。自動運転を「知識」ではなく「体感」として理解することが最大の狙いである。

無人の車両が到着し、ドアが開き、誰もいない運転席を横目に走り出す。

その静けさ、判断の正確さ、周囲環境への反応速度は、動画や資料では決して伝わらない。参加者からは「怖い」という反応よりも、「思った以上に普通」「もう運転手がいないことを忘れる」という声が多く聞かれる。

この体験は、レジなし店舗やスマホ決済と同じ構造を持つ。最初の心理的ハードルを越えた瞬間、不可逆的に価値観が更新される。

小売DXにおいて最も重要なのは、技術よりも利用者の意識変化であることを、ウェイモははっきりと示している。

ズークスとテスラが示す異なるアプローチ

ウェイモを追う存在として注目されるのが、アマゾン傘下のズークス(Zoox)である。ズークスはハンドルやペダルを持たない専用車両を開発し、対面座席という独自設計を採用している。

ラスベガスなどで一般向け試験運行を進めており、物流企業アマゾンらしい長期視点のモビリティ投資と言える。

一方、テスラはカメラ主体という異なる技術思想でロボタクシーを展開している。ただし現時点では安全監視員付きの運行が中心で、完全無人という点ではウェイモに及ばない。

ロボタクシーを語る際、テスラの話題性は大きいが、実用段階に到達しているのは明らかにウェイモである。

小売とロボタクシーが交差する地点

ロボタクシーの本質は移動ではない。重要なのは、人とモノが「いつ」「どこで」「どう接点を持つか」を再設計できる点である。

無人移動が前提となれば、配送、来店、クリック&コレクト、ダークストアの立地戦略まで連動して変わる。

ウォルマート、アマゾン、クローガーといった巨大流通企業が自動運転技術を注視する理由はここにある。

ラストワンマイルの効率化だけでなく、都市生活者の行動半径そのものを再定義できるからだ。

ロボタクシーは未来ではなく「現在進行形」

かつて自動運転は「10年後の話」と言われてきた。しかし2025年のアメリカでは、すでに無人車両が日常的に人を運んでいる。

完璧ではないが、十分に使えるレベルに達した技術は、一気に社会へ浸透する

流通DXを考える上で重要なのは、ロボタクシーを交通の話として終わらせないことである。

これはスマホファースト、アプリファーストの次に来る「無人前提社会」の入口であり、そこで勝ち残る企業は、変化を早く体感し、現場で理解した企業である。

ウェイモに乗るという体験は、その最前線に立つための最短ルートなのだ。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です!

流通視察と聞くと、いまだに多いのが、店舗をぐるっと回って売り場写真を撮り、店長に定番質問をして、商品構成比をグラフにまとめて、あとで発表して満足するスタイルです。

例えるなら、相手が戦闘機で上空を飛んでいるのに、こちらは竹やりを持って地上で構えているようなものです。

もちろん基礎体力としての店舗視察は重要ですが、それだけで2025年のアメリカ流通を語るのは、正直かなり厳しい時代になっています。

一方、当社の流通DXワークショップは、ネットスーパー実習で実際にスマホから注文し、さらにウェイモのロボタクシーに乗車して「無人が前提の社会」を体感します。

これは空中戦です。

誰もいない運転席、静かに判断するAI、到着まで何も起こらない体験。この感覚は、資料や写真では絶対に理解できません。

自動運転もネットスーパーも、知識ではなく「身体感覚」を変えるものだからです。

竹やりで敵機の音を分析するか、実際に空を飛んで操縦席から景色を見るか。どちらが次の戦いに勝てるかは明らかです。

もっとも、ロボタクシーに乗った後、あまりに快適で「もう自分で運転したくない」と言い出す方が続出するのが、唯一の想定外の副作用ですが。

最終更新日:

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