「逆物流」が経営を圧迫 返品コストとどう向き合うか

ワークショップ研修で実際に体験するアマゾン・フレッシュの返品カウンター。ネットで買った商品を、梱包も説明も不要でその場で返品・返金。食品スーパーの出来不出来ではなく、ここが“EC時代の返品拠点”として設計されていることに、日本のチェーン幹部は言葉を失う。

ワークショップ研修で実際に体験するアマゾン・フレッシュの返品カウンター。ネットで買った商品を、梱包も説明も不要でその場で返品・返金。食品スーパーの出来不出来ではなく、ここが“EC時代の返品拠点”として設計されていることに、日本のチェーン幹部は言葉を失う。

ワークショップ研修で実際に体験するアマゾン・フレッシュの返品カウンター。ネットで買った商品を、梱包も説明も不要でその場で返品・返金。食品スーパーの出来不出来ではなく、ここが“EC時代の返品拠点”として設計されていることに、日本のチェーン幹部は言葉を失う。

返品有料化が進む2025年、アメリカ小売が直面する「逆物流」という経営課題
025年のホリデーシーズンを迎え、アメリカ小売業界では返品を巡る環境が大きく変わりつつある。
かつて「無料返品」は顧客満足の象徴であり、競争上の前提条件であった。しかし現在、その前提は静かに、しかし確実に崩れ始めている。
最新の推計では、年間の小売売上高のうち約15.8パーセントが返品され、その総額は約8,499億ドル(約127兆円)に達する見通しである。
返品率自体は前年から微減しているものの、配送費、人件費、再在庫化、値引き販売、廃棄処理まで含めた逆物流(リバース・ロジスティクス)コストの重みは、依然として経営を圧迫する巨大な負担となっている。
この現実を前に、多くの小売業者がついに「無料返品」という聖域に手を入れ始めた。
返品手数料は例外から標準へ
現在、アメリカの小売業者の約72パーセントが、何らかの形で返品手数料を導入しているとされる。
数年前までは電化製品や高額商品のみが対象であったが、今や衣料品、化粧品、オフプライス小売にまで対象は拡大している。
ベストバイでは、開封済みのドローンやカメラ、レンズなどに15パーセントの再在庫手数料を設定し、アクティベーションが必要な商品にはホリデー期間中であっても45ドル(約6,750円)を課している。
コールズも不良品を除き15パーセントの手数料を設定し、送料や追加料金の返金は行わない方針を明確にした。
メーシーズは、ロイヤルティ会員でない顧客に対し、オンライン返品時に9.99ドル(約1,500円)を返金額から差し引く。
TJマックスやマーシャルズでは郵送返品に11.99ドル(約1,800円)を設定し、JCペニーでは郵送返品に8ドル(約1,200円)を課す一方、家具などの大型商品では15パーセントから20パーセントの手数料に加え、85ドル(約12,750円)の引き取り費用が発生する場合もある。
これらに共通する狙いは明確である。店舗への持ち込みを促進し、ラストマイル配送と逆物流コストを抑制することだ。
ワードロービングとブラケッティングという現代的返品圧力
返品厳格化の背景には、単なるコスト問題だけでなく、消費行動そのものの変化がある。特に象徴的なのが、「ワードロービング(wardrobing)」と「ブラケティング(bracketing)」である。
ワードロービングとは、イベントや撮影など一時的な使用を前提に商品を購入し、使用後に返品する行為を指す。タグが残り、形式上は未使用と見なされるケースも多く、線引きが極めて難しい。
一方、ブラケッティングは、サイズや色違いの商品を複数購入し、試着後に不要な分を返品する購買スタイルである。
自宅を試着室のように使うこの行動は、オンライン購入が主流となった現代では合理性を持つが、物流負荷は甚大だ。
若年層、特にZ世代ではこの傾向が顕著で、同世代の約半数がブラケッティングを経験しているとも言われる。
小売側にとっては、正当な比較行動と、過剰な濫用行為をどう見分けるかが極めて難しい課題となっている。
不正対策と顧客体験のジレンマ
小売業者の約93パーセントが、返品詐欺や悪用を深刻な経営リスクと捉えている。すり替え、空箱返品、使用済み商品の返却など、手口は年々巧妙化している。
その一方で、返品体験は顧客にとって「不満」や「失望」から始まるネガティブな接点でもある。この瞬間の対応次第で、顧客は再来店するファンにも、二度と戻らない離反者にもなる。
返品は単なる事務処理ではなく、ブランドロイヤルティを左右する感情的な分岐点なのである。
この矛盾を解消するため、アメリカ小売はAIを活用した返品管理へと急速に舵を切っている。
AIが可能にする「許す」と「絞る」の同時運用
AIは、過去の購入履歴、返品頻度、配送先、決済パターンなどを総合的に分析し、返品リスクをスコア化する。
低リスク顧客には即時返金や手間のない返品体験を提供し、高リスクと判断された場合のみ検品後返金や店舗持ち込みを求める。
アパレルでは画像認識により着用痕やタグ状態を判別し、家電ではシリアル番号の追跡で不自然な循環を検知する。
こうした仕組みにより、一律の厳格化ではなく、顧客ごとに最適化された返品体験が可能になりつつある。
これは、ブラケッティングを全面的に排除するのではなく、許容範囲を見極めながら逆物流の滞留を防ぐ設計でもある。
返品はコストではなく設計対象である
2025年のアメリカ小売が示しているのは、返品を「やむを得ない損失」として扱う時代の終焉だ。返品は販売、在庫、価格、リコマースと連動する経営設計の一部になった。
購入前の情報提供やサイズ推薦を強化し、「そもそも返品が起きにくい」環境を整える。
発生した返品は迅速に再販・再流通へ回し、逆物流をもう一つの在庫入口として活用する。その全体をAIで制御することで、返品は損失から価値創出のレバーへと変わる。
一律無料の時代は終わった。しかし、無慈悲な制限の時代でもない。
顧客行動に応じて「許す」と「絞る」を使い分けられる小売だけが、2025年以降の競争でロイヤルティと収益性を同時に手にすることができるのである。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です!
2025年の米国小売では返品が「無料の常識」ではなく、手数料や条件でコントロールされる経営領域に変わりつつあります。
返品総額が巨大になり、不正返品やブラケッティング、ワードロービングが逆物流(リバース・ロジスティクス)コストを押し上げているからです。
そんな中で当社の研修では、ウォルマートのネットスーパーをあえて体験し、さらに“返品”まで実験します。
iPadで生鮮品を注文し、カーブサイド・ピックアップで受け取り、最後にアプリで返品処理をする。
すると「返品完了」「返品する必要はありません」と表示され、商品を返さずに返金されるケースがある。日本人はここで必ず固まります。
これは、空港の保安検査が全員同じ列では回らないのと同じです。低リスク客はスルー、高リスク客は追加チェック。
ウォルマートはAIと運用で“許す返品”と“絞る返品”を出し分け、週客数1.4億人の返品処理という怪物級オペレーションを成立させているわけです。
ただし、研修で返金が早すぎると、参加者の目が「DXすごい」から「これ、毎日やったら生活費いりませんね?」に変わるのが悩みどころです(笑)。
最終更新日:
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