ADVERTISING

「100年続くためのスローなものづくり」 革靴職人が作るウェアに通ずる美学とは

Brass shoe co. 松浦稔

Image by: Brass shoe co.

Brass shoe co. 松浦稔

Image by: Brass shoe co.

Brass shoe co. 松浦稔

Image by: Brass shoe co.

 シューリペア&カスタムショップとして2007年に創業し、オリジナルシューズブランド「クリンチ(CLINCH)」も手掛ける「ブラス シュー カンパニー(Brass shoe co.)」。時代と逆行するような「スローなものづくり」を貫き、セールスやPRをほぼ行わないが、日本国内だけでなく海外のファンを多く抱えている。そんな同店のオーナーで革靴職人の松浦稔が、アウターウェアブランド「マイヤー アンド ウェルチ(Meyer & Welch, Ltd)」を立ち上げた。同氏の靴作りの哲学を中心に、ウェア製作に込めた想いを聞いた。

ADVERTISING

 ブラス シュー カンパニーは、世田谷・代田にひっそりと佇むシューリペア&カスタムショップ。革と同じく、錆びることなく経年変化を楽しめる素材として、真鍮(ブラス)のネーミングに行き着いたという。松浦氏は、「靴は履き込むことで足になじみ、時を経ることで、その人だけの魅力的なプロダクトへと育つポテンシャルを秘めています。傷みや劣化で手放す人は多いですが、手入れやリペアで『100年続くプロダクト』にできるんです。僕らの手仕事が、永く残るものを現代から『手渡す』手立てになればと思っています」と理念を語る。

 同店ではオールソール交換からアッパー縫いまで、修理の全工程を自社で実施。クラフトマンシップを追求し、一足のリペアには3〜4ヶ月を要する。高品質なサービスは口コミで広まり、国内外から注文が途絶えない状態だという。

 2012年には、シューリペア&カスタムの経験から得たノウハウを落とし込んだオリジナルシューズブランドとして、クリンチをスタート。松浦氏は「リペア事業と同じで、自分たちの手を通過したものが100年後も残り、その時代の職人たちのリペアを受け、さらにその先につながる靴が作りたかったんです」と立ち上げを振り返る。クリンチの製造は、機械では再現できない抑揚のある形状を生み、フィット感を叶えるハンドソーンウェルテッド製法を採用。そのほか手作業と機械を駆使した多くの工程を必要とする。非効率な方法であえて製造するのは、「美しさの理にかなった製法を遺したいから」だという。「現代の技術を否定するつもりは全くありません。効率重視の時代の流れで淘汰されてしまったけれど、履き心地や品質を担保してくれる製法は沢山あるんです。そうした技術を別軸の美学として、プロダクトとともに後世に残したいんです」と説明する。

 一足約20万円と安くはない値段でもコアなファンが増え、2023年に実施したオーダー会は2日間で400足の注文が入った。また、リペア・オリジナルブランドともに、売上の海外比率が半数以上を占めることも特徴だ。松浦氏は「靴業界の中でもニッチなことをしている自覚はありますが、SNSの普及で興味のある人たちが見つけ出してくれたのかなと思っています」と分析する。

ポップアップでは「クリンチ」のシューズを数量限定で販売

 こうした熱量の高いファンに向け、2023年からInstagramのサブスクリプション機能を通じたメンバープログラムを開始。松浦氏のものづくりやブランドに対する考え、今後の構想といったステートメントのほか、日々の作業報告として工房での作業写真などを毎日投稿している。「売上よりも取り組みの意義や面白さに共感してもらえたら」という想いでスタートし、月額600円で、現在は300人近くの登録者を抱えている。

 そして、今回立ち上げたマイヤー アンド ウェルチでも、これまでのものづくりの精神を踏襲。「Any weather, No glum mood(どんな天気でも、心地よく)」をコンセプトに、ファッション性・機能性・耐久性を等しく重視したコート、帽子、傘、鞄を揃える。デザイン面では服の普遍的な理論を備えた古着のディテールを参考にし、機能面では全商品に防水コーティングではなく高密度な防水生地を採用することで、防水機能の持続性を実現。また、松浦氏の日々の作業や移動を踏まえ、パスポートが入るポケットを配した。耐久性ではシューリペアでの経験から、壊れやすい金具などのパーツを極力排除し、「Less is more(少ない方がより豊か)」の美学を落とし込んだ。なお、アパレルのデザインは、「ビソウン(BISOWN)」を手掛ける中出由佳氏を迎え、松浦氏の構想を各アイテムに反映している。

 ミニマルなデザインに統一した背景にも、革靴職人で培った考えが息づく。「リペアもクリンチも王道を否定するのではなく、自分たちが残したい物を愚直に作り続けているだけなんです。ファッションの移り変わるトレンドを楽しむために、『動かないもの』も必要なんじゃないかと。年齢や時代によって個人のワードローブが移り変わっても、流行を楽しむ余白としてマイヤー アンド ウェルチのようなミニマルなアイテムを長く使ってもらえたら嬉しいです」と想いを語った。

 価格帯はコートが10万5400〜14万5000円、帽子が2万3000円、傘が4万7000円、鞄が3万2000〜6万2000円。傘は150年以上の歴史を持つイギリスの老舗「フォックス アンブレラズ(FOX UMBRELLAS)」と、革手袋は同じくイギリスの高級手袋ブランド「デンツ(DENTS)」とそれぞれコラボ。松浦氏の職人としてのクラフトマンシップに共鳴して実現した。

Image by: FASHIONSNAP

 唯一の販路として、まずは「センス・オブ・ヒューモア(SENSE OF HUMOUR)」での長期ポップアップを4月30日まで開催。常設の卸先やEC販売は未定で、ラインナップについても無理に増やす考えはないという。「靴と同様で、『修理しながら長く使う』ことが前提。物を増やして、沢山売るビジネスとは真逆ですね。焦らずに、必要としてくれる、然るべき場所と巡り合えたら売ろうと思うし、本当に必要で納得いく物ができたら新しいものを作る。僕らの思想に共感してくれる、必要としてくれる人たちに、少しずつ広まってもらうくらいがちょうどいいです」と理念を貫く。

 また、ブラス シュー カンパニーでの直近の目標は、クリンチのオーダー分の製造を夏頃までに完了することとし、以降は地方や海外のショーケースへの訪問を予定。松浦氏は「まずはオーダーを待ってくださっている方には本当に感謝しています」と述べ、「分かりにくいことをしている自覚はあるので、直接見ていただいたり、ファンの方の声を聞きに行きたいと考えています。急がずに、どんな形であれ、ものづくりは一生続けたいです」と真摯に語った。

最終更新日:

■マイヤー アンド ウェルチ:ポップアップ
開催期間:2026年1月23日(金)〜4月30日(木) ※商品がなくなり次第終了の可能性あり
営業時間:月曜日〜金曜日:11:00〜20:00 土曜日・日曜日:10:00〜19:00
会場:SENSE OF HUMOUR 1階 スペース
所在地:東京都港区南青山5-14-3

Brass shoe co.:公式サイト

FASHIONSNAP 編集記者

平原麻菜実

Manami Hirahara

埼玉県出身。横浜国立大学教育人間科学部人間文化課程卒業後、レコオーランドに入社。国内若手ブランド、国内メーカー、百貨店などの担当を経て、2020年にビューティチームの立ち上げに携わる。ポッドキャストやシューティング、海外コスメレビュー、フレグランス、トップ取材など幅広い観点でファッションとビューティの親和性を探る企画を進行。2025年9月より再びファッションチームに所属。映画、お笑い、ドラマ、K-POP......エンタメ中毒で万年寝不足気味。ラジオはANN派。

ADVERTISING

現在の人気記事

NEWS LETTERニュースレター

人気のお買いモノ記事

公式SNSアカウント