米ホームセンター・ロウズがペロペロキャンディで仕掛ける、“未来の顧客”囲い込み作戦

住宅価格や金利の高騰で持ち家購入が遠のく中、「ミニバケツ」などのSNS映え商品やイベントでZ世代やミレニアル世代の取り込みに注力するロウズ。

住宅価格や金利の高騰で持ち家購入が遠のく中、「ミニバケツ」などのSNS映え商品やイベントでZ世代やミレニアル世代の取り込みに注力するロウズ。

住宅価格や金利の高騰で持ち家購入が遠のく中、「ミニバケツ」などのSNS映え商品やイベントでZ世代やミレニアル世代の取り込みに注力するロウズ。

住宅不況にロリポップで対抗?ロウズが仕掛ける「未来の家主」囲い込み戦略の全貌
アメリカの住宅市場が歴史的な停滞局面を迎える中、ホームセンター業界第2位のロウズが驚くべき戦略転換を図っている。
高金利と住宅価格の高騰により、本来であれば住宅購入の主力層となるべきミレニアル世代やZ世代が市場から締め出されている現状に対し、ロウズは「住宅を持たない顧客」や「その子供たち」をターゲットにした大胆なマーケティングを展開し始めたのだ。
持ち家層の高齢化とDIY市場の変容
全米リアルター協会(NAR)の衝撃的なデータによると、現在のアメリカにおける初回住宅購入者の年齢中央値は40歳という過去最高齢に達している。
かつてのように30代でマイホームを持ち、リノベーションにお金をかけるというライフステージの定説は崩れ去った。
住宅ローンの金利上昇と物件価格の高騰により、多くのアメリカ人が住宅購入を先送りせざるを得ない状況にある。
パンデミック期間中に特需に沸いたホームインプルーブメント(住宅改修)市場だが、その後の売上は減少傾向にある。
ロウズの今年度の総売上高見通しは860億ドル(約12兆9000億円)と、前年の837億ドル(約12兆5550億円)からは増加するものの、パンデミック以前の4年間の水準を下回ると予測されている。
さらに、既存店売上高は前年横ばいとなる見通しだ。
この「冬の時代」において、業界の二大巨頭であるホームデポとロウズは、対照的な生存戦略を採用しつつある。
プロ偏重のホームデポ、DIY回帰のロウズ
競合のホームデポは、より確実な収益源である「プロ顧客(建設業者、工務店)」への依存度を高めている。ホームデポの売上の約半分はプロ顧客によるものだ。
彼らは2024年に、造園や屋根材のプロ向け販売を行うSRSディストリビューション(SRS Distribution)を同社史上最大となる182億5000万ドル(約2兆7375億円)で買収するなど、BtoB領域の強化に巨額の投資を行っている。
一方、ロウズは伝統的にDIY顧客への依存度が高く、売上の約70%を一般消費者が占めている。
プロ顧客の取り込みも進めてはいるが、ロウズが選んだ次なる一手は、彼らの強みである「一般消費者(DIY層)」との関係性を、住宅購入の有無にかかわらず根本から再構築することだった。
小売アナリスト、チャック・グロム(Chuck Grom)氏は、住宅市場の環境が改善の兆しを見せる中、このDIYへの注力がロウズにとって有利に働く可能性があると指摘している。
消費者は高い借入コストを「ニューノーマル(新常態)」として受け入れ始めており、家具の売上が回復傾向にあるなど、少しずつではあるがDIYプロジェクトへの意欲を取り戻しつつあるからだ。
「ロリポップ」が象徴するファミリー層の誘引
ロウズの新たな戦略において象徴的なアイテムが「ロリポップ(棒付きキャンディ)」だ。今月からロウズは店舗で子供たちに無料のロリポップを配布し始めた。
これは単なる子供だましではない。「子供に行きたいと言わせる店」になることで、親を店舗に連れ出し、滞在時間を延ばし、ついで買いを誘発するための計算された戦術である。
ロウズの最高マーケティング責任者(CMO)であるジェン・ウィルソン(Jen Wilson)氏は、市場調査から得られた意外な知見として、「親(特にミレニアル世代)が買い物をする場所を決める際、子供の影響力が極めて大きい」という点を挙げている。
この洞察に基づき、ロウズはキッズクラブ(Kids Club)プログラムを刷新した。
3歳から10歳を対象とした無料の工作ワークショップを拡充し、貯金箱や巣箱作りなどのDIY体験を提供している。
ニュージャージー州の店舗で開催されたワークショップでは、3歳の子供たちがロウズの象徴である赤いエプロンのミニチュア版を身に着け、ハンマーを振るう姿が見られた。
参加した親たちは、これを「決まったプレイデート(遊びの約束)」として歓迎しており、イベント終了後には店内を散策し、買い物を楽しむという行動パターンが定着しつつある。
Z世代とミレニアル世代に向けた「バズる」商品開発
ロウズが狙うのはファミリー層だけではない。住宅購入を先延ばしにしているZ世代や若いミレニアル世代を取り込むため、彼らが好むSNSでの拡散を意識した商品開発にも力を入れている。
ロウズのマーチャンダイジングとマーケティングチームは、今後12ヶ月間のトレンド予測に基づき、四半期ごとに3~5アイテムの「バズりそうな商品」を投入する計画を立てている。
その第1弾として発売されたのが、明るいピンク色の「ミニバケツ(Lowe's mini bucket 0.4-quart BPA-Free Food-Grade Plastic Mini bucket Lid Included)」や、様々な色で展開されるプライベートブランド「コバルト(Kobalt)」の「ミニ工具箱(Kobalt Portable Mini Toolbox)」だ。これらは本来の工具用途ではなく、メイク道具の整理や学校用品の収納に使えるとして、TikTokなどのソーシャルメディア上で話題となった。
さらに、春の繁忙期には香り付きキャンドルやトートバッグ、ホリデーシーズンにはペットをテーマにしたアドベントカレンダーなど、従来的なホームセンターの枠を超えた「衝動買い」を誘う手頃な商品を投入していく。
CMOのウィルソン氏は、「これらは手頃な価格の衝動買いアイテムであり、本来ならロウズのことを考えもしない消費者にブランドを紹介する絶好の方法だ」と語る。
住宅を買えない若年層に対し、まずは雑貨や小物から接点を作り、ブランドへの親近感を醸成しようという狙いだ。
インフルエンサー活用とロイヤルティプログラムの進化
この若年層向け戦略を加速させるため、ロウズはデジタル領域での施策も強化している。昨年6月には「クリエイターネットワーク」を立ち上げ、インフルエンサーが自身のDIYプロジェクトや購入品を投稿することを推奨している。
さらに、YouTube界の巨星であるミスタービースト(MrBeast)と提携し、彼の選んだお気に入り商品を販売する特設ページ「ミスタービースト・ストアフロント(MrBeast Storefront)」をウェブサイト上に開設した。
また、2年前に開始し、すでに3000万人以上の会員を抱えるロイヤルティプログラム「マイ・ロウズ・リワード(My Lowe's Rewards)」も、この新戦略の中核を担っている。
特筆すべきは、キッズクラブのワークショップへの参加登録をこのロイヤルティプログラム経由に一本化した点だ。
子供たちがプロジェクトを完了すると、親のアカウントに「デジタルバッジ」が付与される仕組みを導入した。
さらに、洗剤や電球といった日用品の購入でもポイントが貯まる「マイ・ロウズ・マネー(MyLowe's Money)」というインセンティブを用意し、大型のDIYプロジェクトがない時期でも、日常的な買い物のために店舗やアプリを訪れる動機作りを行っている。
顧客マーケティングおよびロイヤルティ担当副社長のアマンダ・ベイリー(Amanda Bailey)氏は、「伝統的なロイヤルティプログラムは取引への報酬に過ぎなかったが、我々は顧客の人生の様々なフェーズや瞬間にどう関われるかを考えている」と述べている。
今後は、より高い年齢層の子供やティーンエイジャー向けに、より複雑なプロジェクトを追加する計画もあるという。
待ち受ける競争と長期的な視点
もちろん、この戦略に死角がないわけではない。
ロウズやホームデポが狙う限られたパイを巡っては、地域のハードウェア店やエースハードウェア(Ace Hardware)のような専門店に加え、ウォルマートやアマゾンといった巨大な小売業者も同じカテゴリーの商品を扱っており、激しい競争が繰り広げられている。
先のグロム氏は、若年層のロイヤルティを獲得するための取り組みは重要であるものの、「即座に業績を大きく動かすものではない」と冷静に見ている。
「住宅の回転率(ターンオーバー)という逆風は、彼らにとって依然として厳しい」からだ。
しかし、株価は市場の期待を反映して動き始めている。過去6ヶ月間でロウズの株価は約22%上昇しており、同時期に約4%の上昇にとどまったホームデポを大きく上回っている。
これは、投資家たちがロウズのDIY顧客へのアプローチと、住宅市場の緩やかな回復シナリオに期待を寄せている証左と言えるだろう。
顧客のライフサイクルそのものを耕す
ロウズの戦略転換は、単なる若返り策ではない。
「家を買う時が来たら店に来てくれ」と待つのではなく、「家を買う前から関係を築き、家を買った後も(そしてその子供たちの代まで)離さない」という、顧客のライフサイクル全体に入り込むための壮大な種まきである。
プロ向け市場を固めるホームデポに対し、エンターテインメント性や家族の体験、そしてSNS映えする衝動買いアイテムで一般消費者の心をつかもうとするロウズ。
住宅市場の凍結が解けたとき、どちらの戦略がより大きな実を結ぶのか。
ロリポップを舐めながら育った「ロウズ・キッズ」たちが住宅購入適齢期を迎える頃、アメリカの小売業界の勢力図はまた違ったものになっているかもしれない。
住宅価格の高騰で持ち家購入が遠のく中、ロウズが若年層(Gen Zやミレニアル世代)を店舗に呼び込むために仕掛けた「SNS映え戦略」が興味深いですね 。
特にTikTokなどのSNSでバズっているのが、明るいピンク色の「ミニバケツ」や、カラフルなPB「コバルト(Kobalt)」の「ミニ工具箱」です 。
本来、工具箱といえば油まみれのレンチが入っているものですが、インフルエンサーたちの動画では全く違います。
これらは「究極のコスメオーガナイザー」や「映えるデスク小物入れ」として紹介され、メイクブラシや文房具が可愛らしく収納されているのです 。
無骨なホームセンターの商品を、Z世代が「kawaii(カワイイ)」雑貨として再定義した形ですね。
Lowe'sとしては、安価な衝動買いアイテムを餌に、将来の住宅購入層との接点を作ろうと必死です 。いわば、高級車を買う前にキーホルダーだけ先に買ってもらうような作戦でしょうか。
一方で、店舗では子供向けにペロペロキャンディを配り、貯金箱作り体験も強化していますが 、大人が小さなピンクのバケツに夢中になっている姿を見ると、もはや店全体が大人も子供も混ざった「巨大なままごと会場」に見えてきてしまいます(笑)。
最終更新日:
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ】の過去記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング

ディプティック「オルフェオン」がアイテム拡充 オー ド トワレなど発売










