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米スーパーマーケット「クローガー」 次期CEOに元ウォルマートUSトップのグレッグ・フォランを起用

クローガーが起死回生をかけて出店を加速させる大型フォーマット「クローガー・マーケットプレイス」。食品だけでなく衣料品や雑貨も扱う12万平方フィート級の巨大店舗は、まさに新CEOの古巣・ウォルマートの戦略そのものだ。

クローガーが起死回生をかけて出店を加速させる大型フォーマット「クローガー・マーケットプレイス」。食品だけでなく衣料品や雑貨も扱う12万平方フィート級の巨大店舗は、まさに新CEOの古巣・ウォルマートの戦略そのものだ。

クローガーが起死回生をかけて出店を加速させる大型フォーマット「クローガー・マーケットプレイス」。食品だけでなく衣料品や雑貨も扱う12万平方フィート級の巨大店舗は、まさに新CEOの古巣・ウォルマートの戦略そのものだ。

在米28年のアメリカン流通コンサルタント
激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

クローガー、次期CEOに「ウォルマート中興の祖」グレッグ・フォラン氏を起用へ!迷走する巨象は復活できるのか?

アメリカ小売業界に激震が走った。全米最大のスーパーマーケットチェーンであるクローガーが、ついに次期CEOを決定したというニュースだ。

その人物こそ、かつてウォルマートの米国事業を鮮やかに再生させた立役者、グレッグ・フォラン(Greg Foran)氏である。

2024年にアルバートソンズとの200億ドル(約3兆円)規模の合併計画が破談となり、さらには前CEOのロドニー・マクマレン氏が倫理規定違反疑惑で突如退任するなど、ここのところ「お家騒動」と「戦略迷走」が続いていたクローガー。

業界の誰もが「次は誰が火中の栗を拾うのか」と固唾をのんで見守っていたが、まさか最大のライバルであるウォルマートの元トップを招へいするとは、誰が予想できただろうか。

これは単なる人事ニュースではない。クローガーがなりふり構わず「ウォルマート流」を取り入れ、生存競争に勝ち残ろうとする強烈な意志表示にほかならない。

今回は、ウォルマート・ウォッチャーの視点から、この驚きの人事とクローガーの最新の台所事情、そして今後のアメリカ食品小売業界の展望について深掘りしていきたい。

「クリーン、ファスト、フレンドリー」の男、グレッグ・フォランとは何者か

まず、今回白羽の矢が立ったグレッグ・フォラン氏について解説しておこう。彼はニュージーランド出身で、直近まではニュージーランド航空(Air New Zealand)のCEOを務めていた人物だ。

しかし、われわれアメリカ小売業界の人間にとって、彼の名は「ウォルマート米国事業(Walmart U.S.)を救った男」として刻まれている。

2014年から2019年にかけてウォルマート米国部門のCEOを務めたフォラン氏は、当時アマゾンの台頭や店舗の荒廃に苦しんでいたウォルマートに対し、徹底的な「基本への回帰」を断行した。

彼が掲げたスローガンは「クリーン、ファスト、フレンドリー(Clean, Fast, Friendly)」

汚れた床を磨き上げ、欠品をなくし、生鮮食品の鮮度を劇的に改善した。彼は会議室にこもるのではなく、毎週のように社用機で全米の店舗を飛び回り、現場の肉や野菜の品質を自らの目でチェックし、店長たちに矢継ぎ早に質問を浴びせる「現場主義」を貫いたことで知られる。

彼の在任中、ウォルマートは既存店売上高で20四半期連続のプラス成長を記録し、現在の「無敵のウォルマート」の基礎を築き上げた。

つまり、彼は現在のクローガーが喉から手が出るほど欲している「店舗運営の規律」と「生鮮食品の競争力強化」を成し遂げた実績を持つ、まさにうってつけの人物なのだ

ウォルマートを去った後は航空業界へ転身し、コロナ禍という未曾有の危機の中で航空会社の舵取りを担ったが、今回、古巣のライバルであるクローガーのトップとして、再びアメリカ小売の最前線に舞い戻ることになる。

クローガーが直面する「最悪の決算」と戦略の修正

なぜ今、クローガーは外部から、それも最大の競合出身の大物を招く必要があったのか。その答えは、直近の決算発表に見る惨憺たる数字と、行き詰まった成長戦略にある。

2025年12月4日に発表されたクローガーの2025年度第3四半期決算は、衝撃的な内容だった。

売上高こそ339億ドル(約5兆850億円)と前年同期比で微増を確保し、燃料を除く既存店売上高も2.6%増と健闘したものの、最終損益は15億4100万ドル(約2311億円)の巨額赤字に転落したのである。

この赤字の主因は「自動化フルフィルメント・ネットワーク」に関連する26億ドル(約3900億円)もの減損損失を計上したことにある。

これは、クローガーが数年前から巨額を投じて進めてきた、ネットスーパー専用の巨大自動倉庫(CFC)戦略が事実上失敗したことを認めたに等しい。

イギリスのネットスーパー専業オカド(Ocado)と提携し、ロボットが走り回るハイテク倉庫を全米に建設してきたが、建設コストの高騰や想定よりも伸び悩んだ需要、そして店舗出荷型への回帰というトレンドの変化に対応しきれなかったのだ。

アルバートソンズとの合併という「規模の拡大」による成長シナリオが独禁法の壁に阻まれて消滅し、頼みの綱だった「ハイテク物流」も巨額の損失を出して頓挫した。

今のクローガーには、明確な次の成長エンジンが存在しない

だからこそ、奇策やM&Aに頼るのではなく、スーパーマーケットとしての本質的な強さ、つまり「店そのものの魅力」を再生できるフォラン氏の手腕が必要不可欠だったのである。

「マーケットプレイス」フォーマットへの回帰とウォルマート化

フォラン氏の就任を前に、クローガーの現場ではすでに興味深い動きが始まっている。それは、大型店舗フォーマットである「クローガー・マーケットプレイス(Kroger Marketplace)」への回帰だ。

最新の報道によれば、クローガーはインディアナ州、テキサス州、ウェストバージニア州などで、12万平方フィート(約3300坪)級の大型店「マーケットプレイス」の出店を加速させている。

これは通常のスーパーマーケットの倍以上の広さを持ち、食品だけでなく衣料品や家庭用品、雑貨まで幅広く扱う業態だ。勘の良い読者ならお気づきだろう。

これは完全にウォルマート・スーパーセンター(Walmart Supercenter)や、HEB、マイヤー(Meijer)といった競合が展開する「ワンストップ・ショッピング」のフォーマットそのものである

かつてクローガーはこの大型店路線を推し進めた時期もあったが、近年はデジタルトランスフォーメーションや小型店、あるいは特定地域のドミナント化に注力していた。

しかし、インフレ下で消費者が「一度の買い物で全てを済ませたい」「少しでも安いものを買いたい」という傾向を強める中、一般用雑貨(GM)も含めて利益率を確保できる大型店の優位性が見直されているのだ。

一般用雑貨は食品よりも粗利率が高い。食品価格の高騰で薄利に苦しむスーパーにとって、客単価を上げ、利益ミックスを改善できる大型店は魅力的な選択肢となる。

フォラン氏はウォルマート時代、まさにこの「食品と非食品を併売する巨大店舗」の運営効率化で実績を上げており、クローガーがこのタイミングで大型店回帰へ舵を切っていることと、フォラン氏の起用は、見事なまでに符合する

プライベートブランドと価格競争力の強化

フォラン氏に期待されるもう一つの役割は、プライベートブランド(PB)の強化と価格競争力(バリュー)の回復だ。

暫定CEOを務めていたロン・サージェント(Ron Sargent)氏は、コスト削減で浮いた資金を価格投資に回し、紙のクーポンを復活させるなど、なりふり構わぬ販促強化を行ってきた。

クローガーのPB「アワー・ブランズ(Our Brands)」は依然として強力な武器であり、第3四半期の粗利率改善にも寄与している。

しかし、ウォルマートやコストコ、そして猛烈な勢いで店舗数を増やしているアルディ(Aldi)との価格競争は激化する一方だ。

特にアルディの攻勢は凄まじい。彼らは徹底的なローコスト運営で、ナショナルブランドを置かずに圧倒的な安さを実現している。

これに対抗するには、クローガーも既存のオペレーションを根本から見直し、無駄を削ぎ落とさなければならない。

フォラン氏はウォルマート時代、店舗の在庫管理を適正化し、バックルームの在庫を減らすことで作業効率を高め、それを原資に価格を下げるという「好循環」を作り出した

このノウハウを、労働組合が強く、オペレーションが複雑化しているクローガーの組織に移植できるかが、勝負の分かれ目となるだろう。

次なる戦場:デジタルとリアルの融合

クローガーの第3四半期決算で唯一の明るい材料だったのが、eコマース売上の17%増という数字だ。

巨大自動倉庫戦略は見直しを迫られたが、カーブサイド・ピックアッ)やインスタカート、ウーバーイーツ、ドアダッシュといった外部プラットフォームとの連携によるデリバリー需要は依然として旺盛だ。

フォラン氏は「デジタルの信奉者」というよりは「リアルの守護者」というイメージが強いが、ウォルマート時代にはeコマース部門と連携し、店舗をネット注文の出荷拠点として活用する体制整備にも尽力した。

クローガーが目指す「シームレスな買い物体験」において、店舗オペレーションの最高責任者としての彼の知見は、デジタル戦略を絵に描いた餅に終わらせないために不可欠だ。

特に注目すべきは、彼が航空会社CEOとしての経験をどう活かすかだ。

航空業界は、ダイナミックプライシング、ロイヤリティプログラム、そして極限のオペレーション管理が求められる世界だ。

クローガーも高度なデータ分析会社「84.51°」を傘下に持ち、パーソナライゼーションには定評がある。

航空業界で培った「顧客体験(CX)」と「効率性」のバランス感覚が、スーパーマーケットという薄利多売のビジネスにどのような化学反応をもたらすか、非常に興味深い

クローガーは「第二のウォルマート」になれるか

グレッグ・フォラン氏のCEO就任は、クローガーにとって起死回生の一手となる可能性が高い。しかし、道のりは険しい。

合併失敗による戦略の不在、巨額の減損処理による財務へのダメージ、そして絶対王者ウォルマートやディスカウンターとの消耗戦。これらすべての課題に、彼は就任初日から直面することになる。

もし彼がウォルマートで成し遂げたように、クローガーの40万人の従業員の士気を高め、店舗をピカピカに磨き上げ、生鮮食品の鮮度で他社を圧倒し、大型店「マーケットプレイス」を成功軌道に乗せることができれば、クローガーは再び力強い成長を取り戻すだろう。

皮肉なことに、クローガーが生き残るための最短ルートは、かつての宿敵ウォルマートのやり方を、その元司令官の手によって徹底的に模倣し、進化させることなのかもしれない。

「激しくウォルマートなクローガー」が誕生する日。それはアメリカ小売業界における新たな、そして最も激しい競争の幕開けとなるはずだ

フォラン氏の手腕と、新生クローガーの次の一手に、引き続き注目していきたい。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です!

クローガーが起死回生の一手として急拡大させているのが、12万平方フィート(約3,400坪)級の超大型店「マーケットプレイス」です。

これは単なるスーパーではありません。食品の横にジーンズや家具、玩具まで並ぶ、まさに「ウォルマート・スーパーセンター」のクローガー版コピーといえます。

これまでハイテク自動倉庫に巨額を投じて大火傷を負ったクローガー。デジタルの夢から覚め、泥臭いリアルの「物量作戦」に回帰しました。

食品の薄利を利益率の高い雑貨で補うこのビジネスモデルは、次期CEOグレッグ・フォラン氏が熟知する「必勝パターン」でもあります。

いわば、ライバルの武器をそのまま模倣し、その武器の使い手(元司令官)まで引き抜いてきたわけです。

これは「毒を以て毒を制す」ならぬ「ウォルマート流を以てウォルマートを制す」作戦。なりふり構わぬ姿勢は潔いですが、ここまでくるとアイデンティティが心配になります。

そのうち看板を青色に塗り替えて「今日から社名は『クログマート(Krog-Mart)』です!」なんて言い出しても、私は驚きませんよ(笑)。

最終更新日:

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