【コラム】今バンコクファッションが熱い〜5組の新世代デザイナーに注目〜

 年間の平均気温が30℃近くあり、リゾート地や観光地としても人気の高いタイの首都、バンコク。最も賑やかなサイアム界隈を歩くと、おしゃれな若者や働く女性を多く見かける。バンコクのファッションシーンが変わり始めたのはこの5年ほどだが、中間所得者層の増加と関税引き下げによる外資の進出を背景に、アジアを代表するファッション先進国へと飛躍しようとしている。


巨大ショッピングセンター「セントラルワールド」

■外資ファストファッションの攻勢に善戦するタイ国内ブランド
 今、バンコクのファッションシーンをリードしているのが、欧米ブランドと国内アパレルブランドだ。外資ではラグジュアリーブランドはもちろん、5年前に1号店をオープンした「ZARA(ザラ)」をはじめ、「FOREVER21(フォーエバー21)」、「TOPSHOP(トップショップ)」、「Bershka(ベルシュカ)」、「GAP(ギャップ)」といったファストファッションが進出。9月には「セントラルワールド」に「UNIQLO(ユニクロ)」がタイ1号店をオープンする予定だ。「バンコク伊勢丹」が入る「セントラルワールド」には多くの外資ブランドが出店し、ファッションに敏感な地元の若者やカップル客らで賑わっている。

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世界の一流ブランドとタイ人デザイナーのブランドが揃う高級ショッピングモール「ゲイソンプラザ」

 欧米ラグジュアリーブランドを集積する高級デパート「サイアム・パラゴン」や「セントラルワールド」にはタイ国内の人気アパレルブランドも数多い。1972年創業の「Jaspal(ジャスパル)」はメンズ、ウィメンズのアパレル、服飾雑貨からインテリア、カフェまで手がける代表的なアパレルメーカー。タイ国内に30店舗、マレーシアに3店舗を持ち、ここ数年2ケタ増で売上げを伸ばす注目企業だ。


欧米ラグジュアリーブランドや国内有力ブランドなどを集積し、2005年にオープンした大型ショッピングモール「サイアム・パラゴン」

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今年5月にシンガポールで開催された第2回「アジア・ファッション・エクスチェンジ」に出品した「GREYHOUND(グレイハウンド)」も1980年創業の老舗ブランド。現在は香港、シンガポール、日本、パリ、モスクワなど海外にも進出し、バンコク市内には14の店舗とカフェ、レストランを展開する。同時期にスタートした「FLYNOW(フライナウ)」はタイデザイナーズブランドのパイオニア。ロンドコレクションでの成功を足かがりに海外で認められ、現在約20カ国で展開する。デザイナーズブランドとしてはその次の世代となる「SENADA(セナダ)」は92年創業で欧米、アジアのセレクトショップでも販売。これらのブランドは、外資の攻勢にもかかわらず、フェミニン&クリーンで品のいいデザインと中間層が手の届く価格帯を武器に、根強い支持を集めている。

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バンコク伊勢丹が入るセントラルワールドにはZARA、FOREVER21、TOPSHOPも出店


■日本のバイヤーも注目するタイの若手デザイナーたち
 とくに活躍が目立つのが、新世代の若手デザイナー達だ。彼らの多くが欧米でファッションを学び、海外での経験を生かして自身のブランドを立ち上げている。ハリウッドセレブ御用達の「Koi Suwannagate(コイ・スワンナゲート)」、「Sretsis(スレトシス)」、「Kloset(クローゼット)」、「Painkiller(ペインキラー)」らがその代表格。ニューヨークコレクションで活躍する「Thakoon(タクーン)」はタイ系アメリカ人だが、タイ人デザイナー達の目標になっているのだろう。日本のデザイナーに比べると、海外進出にも積極的だ。

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デザイナーズブランドの集積フロアを2010年にオープンしたサイアム・センター

 7年前からタイのデザイナーズブランドを日本に導入してきたフォーバレーの政栄良朗さんはタイ人デザイナーのポテンシャルの高さを指摘する。「当時からデザインセンスのレベルが高く、色使いやカッティングなど日本市場にはないおもしろいデザインがあった。いい意味で売れるかどうか気にしていないので個性的なものづくりができている。とくに日本人にとってはサイズ感が近く、新しいブランドを探している日本のセレクトショップバイヤーの間ではかなり注目度が高い」と話す。

 若手デザイナーをサポートする動きも活発だ。2003年にタイ政府が「バンコクファッションシティプロジェクト」を発足して以来、国内外にタイファッションをアピール。デザイン教育にも重点を置き、100名以上の若手デザイナーを育成・支援してきた。2004年にはデザイナーらによる団体も設立。毎年開催される国際見本市「バンコク国際ファッションフェア」では、大御所ブランドとともに若手もショーやブースでコレクションを披露。今年は4月に開催され、「デザイナーズルーム」に50近い新進ブランドが出展した。

 さらに昨年、「サイアム・センター」3階にタイのデザイナーズブランドを集積したフロアを新設。4階には若手ブランドなど20ブランドを揃えるセレクトショップもオープンするなど、トレンドを発信するファッションビルも若手支援に力を入れている。

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4月に開催されたバンコク国際ファッションフェア


 そこでいま注目の若手デザイナーズブランドをクローズアップ。ASEAN諸国のなかでも世界に近いと期待される若手デザイナーたちにブランドの特徴と今後の目標を聞いた。


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