【ISSEY MIYAKEのプロセス】デザイナー宮前義之 -アイデアの種から2013年春夏コレクションまで-

ISSEY MIYAKE デザイナー宮前義之
ISSEY MIYAKE デザイナー宮前義之
 「ISSEY MIYAKE(イッセイ ミヤケ)」のデザイナーに就任して3シーズン目の2013年春夏コレクションを発表したデザイナー宮前義之。「色にチャレンジしたい」という思いからスタートしたという今シーズンのテーマは「Flapping Colors -羽ばたく色-」。自然界から発想のきっかけを貰うという宮前に、今シーズンのテーマと「ISSEY MIYAKE」の核でもある服作りのプロセスや思いを聞いた。
 


ーデザイナーに就任して3シーズン目のコレクションで「色」というテーマを選んだ経緯は?
 「ISSEY MIYAKE」にとって「色」は、常に大切な要素です。最初に手がけた2012年春夏コレクション「BLOOM SKIN -ブルーム・スキン-」は、肌に近いヌードカラーや花のような柔らかい発色を使って表現しました。

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 次の2012-13年秋冬コレクション「Mineral Miracle -ミネラル・ミラクル-」では、鉱物から色を抽出したり、土のような色を使用しています。どちらかというと素材の質感を大切にして、敢えて色を抑えたシーズンですね。その反動もあるかもしれませんが、次は強い色の表現をやってみたい、と思いました。

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ー2013年春夏コレクション「Flapping Colors -羽ばたく色-」のインスピレーションは?
 色の面白さを表現するために、今シーズンも自然界からヒントを貰いました。自分の好きなものや概念は限られていますが、新しいものを探す時に、自然から学ぶことが多くあります。今回、色という視点で惹かれたのが鳥の羽根の美しさでした。色は探求すればするほど奥が深く、光の加減やコントラストによって表情を変え、また掛け合わせによっても様々な発見があります。美しい鳥に出会うように、予期しない色に出会う。そんな面白さを見いだしたコレクションです。


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2013年春夏コレクションの招待状は横尾忠則がデザイン


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ー糸から研究開発しているという「ISSEY MIYAKE」ですが、今シーズン取り組んだテクニックやアプローチについて教えてください。
 プリーツをはじめ、織り、染色、プリント、刺繍など、これまでも利用してきた手法を、新たな考え方で取り組みました。テキスタイルの表と裏の両面からプリントをして色を重ねたり、テキスタイルを重ねて色移り(移染)させたり、これまではタブーとされてきたことにも挑戦しています。多くの色を使っているように見えるかもしれませんが、使用している色はたった5色なんです。

 フォルムについては、膨らませたり引っ張ったり実験的な試みをしていますが、元は長方形の布やニットだったり。発想の転換による表現方法や視点を変えたアプローチによって、可能性が広がりました。


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両面に転写プリントを施した「W COLOR PRESS」


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色移り(移染)を利用した「TRANSFER T」


ー前回のコレクションで発表した「スチーム・ストレッチ」のデモンストレーションが印象的でした。今シーズンはさらに進化させたそうですが、そのプロセスは?
 植物に例えるなら、服作りは常にアイデアという種まきからはじまります。熱によって立体的に成型するストレッチ素材「スチーム・ストレッチ」の種まきは、およそ10年前でした。


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 「ISSEY MIYAKE」の服作りの手順としては、まず糸を探し、様々な織りを試しながらテキスタイルを作っていきます。コットン、リネン、シルクの混率は?単糸か双糸か?織り方は?といった具合で、組み合わせは無数。料理で言えば材料の組み合わせを変え、レシピを組み立てる感覚に近いですね。


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異なる糸や織りを試した多数のテキスタイルサンプル


 異なる素材を一枚の布で組み合わせた「スチーム・ストレッチ」の進化版については、何度も試行錯誤を繰り返して200近くのテキスタイルサンプルを作りました。頭の中だけでレシピは仕上がらないので、仕込みから吟味まで職人と対話しながら行っていきます。製品化されるのはごくわずかでも、全てのレシピがデータとして蓄積されているので、アイデア次第で今後さらに進化させることができるのです。


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試行錯誤を経て製品化された「スチーム・ストレッチ」進化版


ー「ISSEY MIYAKE」が取り組み続けているという日本の産地との関係は?
 全国各地の産地と「ISSEY MIYAKE」の関係は深く、服作りの理念は創業者の三宅一生から約40年に渡って受け継がれてきました。僕は、三宅一生と「ISSEY MIYAKE」の3代目デザイナー藤原大の下、「A-POC(エイポック)」で学んだことが多くあります。「A-POC」の特徴は一本の糸から一体成型で服を作りだすという特殊な製法で、これは古くからある織機と最先端テクノロジーを結びつけています。服作りにおける川上から川下までを一体化する画期的な取り組みですが、この研究開発も工場との連携があって生まれました。


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宮前義之が多くを学んだという2012年春夏コレクションのバックステージ


 しかし、僕が最初のコレクションを制作する時に全国各地を巡って、実際に目で見て確かめたのは産地の厳しい現状でした。一から取り組むのには時間がかかりますが、共に新しいものを作るということは意味があります。デザイナーの仕事は、机の上でデザインするだけではないということです。そしてクリエイティブとビジネスの両立も重要。幾多のデザイナーが挑戦してきた課題だと思いますが、チームと共に一歩ずつ前進しています。


ーデザイナー就任から1年が経ちました。改めて服作りに対する考えを教えてください。
 大きな仕事を動かすプレッシャーや重みは常に感じています。1年を経て改めて思うのは、「服作りの現場から発信したい」ということ。生産者の顔がラベルに書かれた野菜のように、ルーツがわかると安心しますよね。種が実を結び、レシピを試して料理となり、パリのコレクションというプレートの上で、音楽や空間演出というソースをかけて仕上げる。全ての服には背景があって、そのプロセスにはいくつもの感動があります。それを「着る人にまで届けたい」という思いは、ここ1年でより強くなりました。「ISSEY MIYAKE」が創業時から受け継いできた理念でもありますが、新しいものを提供し感動を与えるのが僕らの役目。丁寧な服作りを通じて、伝えて続けていきたいと思っています。


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■宮前 義之(Yoshiyuki Miyamae)
 1976年生まれ。文化服装学院アパレルデザ イン科を卒業後、2001年に三宅デザイン事務所に入社。 A-POC(エイポック) の企画チームに参加し、2006年から「ISSEY MIYAKE(イッセイ ミヤケ)の企画チームに加わる。2011年に「ISSEY MIYAKE」4代目デザイナーに就任。


■ISSEY MIYAKEのプロセス
【映像・画像】2013年春夏コレクションの全貌
【現場に潜入】映像で紐解く服作りの裏側

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