NY女性デザイナーが先導するリアルモード

 女性による女性のためのモード----。世界4大コレクションのうち、現代女性のリアルなスタイリングに最も近いとされるのがニューヨークコレクションだ。毎年、4大コレクションの先陣を切って開催され、新シーズンのトレンドを先導するコレクションと位置付けられている。本当に着られる服を提案する傾向がNYで際立っている理由の1つに挙げられるのが、女性デザイナーの厚み。パリやミラノ、ロンドンにも女性デザイナーはいるが、NYは人数が飛び抜けて多い。(文・写真:ファッションジャーナリスト 宮田理江

alice + olivia 2013-14秋冬NYコレクション (c)Rie Miyata
alice + olivia 2013-14秋冬NYコレクション (c)Rie Miyata
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 大御所・ベテラン級から中堅、新鋭まで幅広い世代にわたって、女性デザイナーがNYを発表の場に選んでいる。世代順に追ってみると、途絶えることなく、現在にまで受け継がれていることが分かる。例えば、大御所クラスにはアメリカファッション協議会(CFDA)会長のDiane von Furstenberg(ダイアン・フォン・ファステンバーグ)氏や、レッドカーペット常連のドレスメーカー、Carolina Herrera(キャロリーナ・ヘレラ)氏、ウエディングドレスの巨匠、Vera Wang(ヴェラ・ウォン)氏らが名を連ねる。Betsey Johnson(ベッツィ・ジョンソン)氏の足跡はNYファッションの伝説の一部となっている。


 その次の世代に当たる、デビューから20年を超えるようなベテラン級の頼もしさはNYコレクションを特別な存在にしている。働く女性の装いに革新をもたらしたDonna Karan(ダナ・キャラン)氏をはじめ、エスニックやヴィンテージを軸に独自の作品世界を紡ぎ続けるAnna Sui(アナ・スイ)氏、スイートテイストの大人アレンジを得意とするCynthia Rowley(シンシア・ローリー)氏らはNYの独特なポジションを築き上げてきた。1980年代に一世を風靡したNorma Kamali(ノーマ・カマリ)氏も近年、復活を果たした。


 この世代の華々しいキャリアは、後に続くジェネレーションに道を開いた。90年代にNYコレクションでデビューした中堅クラスの充実ぶりはこの先もNYがリアルスタイリングの発信地であり続けることを確信させる。90年代デビュー組のNanette Lepore(ナネット レポー)氏やJill Stuart(ジル・スチュアート)氏はオン・オフをまたぐNY流の融通自在なコーディネートを加速。「Jill Stuart」は日本でも人気が高く、携帯電話やホテルとのコラボレーションも相次いでいる。Catherine Malandrino(キャサリン・マランドリーノ)氏はフランスからNYへ渡って、豊富な経験に裏打ちされたヨーロピアンエッセンスをNYモードに注ぎ込んだ。

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Catherine Malandrino Black Label 2013-14年秋冬NYコレクション (c)Rie Miyata


 2000年代に入っても「alice + olivia(アリス アンド オリビア)」や「ZERO+MARIA CORNEJO(ゼロ マリア コルネホ)」などのデビューが続いた。Stacey Bendet(ステイシー・ベンデット)氏が手がける「alice + olivia」は12年秋冬シーズンから日本にも本格上陸。NYで毎回、プレゼンテーション形式で発表されるコレクションは注目度が高く、日本でも今後展開が広がりそうだ。


 バッグや革小物などから始まったブランドが多い点は、働く女性が多く、バッグに求めるニーズが多様なNYらしさを感じさせる。「kate spade NEW YORK(ケイト・スペード ニューヨーク)」は日本でもバッグから人気に火がついた。「土曜日のワクワク感を毎日に」をコンセプトとした新ライフスタイルブランド「KATE SPADE SATURDAY(ケイト・スペード サタデー)」は2013年3月、世界初のフラッグシップストアを東京・原宿に構えた。「REBECCA MINKOFF(レベッカ ミンコフ)」も12年3月、世界で初めての直営路面店を東京・銀座に開店し、日本での支持の広がりを見せている。

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デザイナーRebecca Minkoff (c)Fashionsnap.com


 1つのトーンでまとめ上げてしまわず、異なるテイストを重ね合わせ、自分好みに味付けするミックススタイリングを軸に据えたブランドが多い点もNYの特質と言える。テーラードとストリート、マスキュリンとフェミニンといった相反する要素を融合させるアプローチの「Karen Walker(カレン ウォーカー)」は、ミックスコーディネートの震源地となったNYを象徴するような存在。ハイカジュアルなデザインはおしゃれ高感度人を引き寄せている。着こなしのムードメーカーになってくれるアイウエアも人気が高い。


 出身地や人種などの面でも、NYコレクションの女性デザイナーは幅が広い。例えば、アジア系女性デザイナーにもNYは門戸を開いてきた。アナ・スイ氏やVIVIENNE TAM(ヴィヴィアン・タム)氏の登場はその後に続いたアジア系デザイナーがNYでキャリアを築くきっかけとなった。スイ氏はコスメティックスや小物類でも人気を集め、ライフスタイル・ブランドの成功例となった。タム氏はノートパソコンのコラボレーションにも取り組み、3月の「Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2013-14A/W」にも初参加した。

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VIVIENNE TAM 2013-14年秋冬東京コレクション (c)Fashionsnap.com


 今を生きる女性の等身大の感覚になじむ提案がNYコレクション参加ブランドへの支持を裏付けてきた。ミッシェル・オバマ米大統領夫人が愛用していることでも有名な「Tracy Reese(トレイシー リース)」もリアルなおしゃれ気分を映す。日本でも東京・表参道ヒルズ内にショップがオープン。大人ガーリーなテイストが支持を集める「Rebecca Taylor(レベッカ・テイラー)」もNYらしいリアル感を示す。2匹の猫をアイコンにした同ブランドは、「Cynthia Rowley」や「Jill Stuart」とともに年齢に縛られないスイート&フェミニンな装いを提案し続けている。


 クリエイター自らがファッションリーダーであるようなデザイナーも多い。Tory Burch(トリー・バーチ)氏は彼女自身のアッパーなライフスタイルや気品が憧憬の視線を集める。お嬢様テイストが際立つ「Milly(ミリー)」のMichelle Smith氏もブランドのアイコン的存在だ。「Banana Republic(バナナ・リパブリック)」とのコラボレーションコレクションは日本でも6月に発売される予定だ。「tibi(ティビ)」はAmy Smilovic氏が世界中を旅して得たインスピレーションに基づく大胆なプリントや鮮やかな色が持ち味となっている。作品とデザイナーを結びつけてとらえやすいのも、デザイナーが女性であるという事実が大きい。


 セレブリティーが手掛けるブランドの多さも、NYコレクションに華やぎを添えている。オルセン姉妹の「The Row(ザ・ロウ)」は彼女たちの好むスタイリングが作品にうまく落とし込まれている。トップスタイリストのRachel Zoe(レイチェル・ゾーイ)氏はハリウッドスターに提供してきたセンスを自らのブランドで表現した。ファッションアイコンとして名高いVictoria Beckham(ヴィクトリア・ベッカム)氏もNYを発表の場に選んだ。女優のChloe Sevigny(クロエ・セヴィニー)はセレクトショップ「Opening Ceremony(オープニングセレモニー)」向けの作品をNYで発表している。

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Cynthia Rowley 2013-14秋冬NYコレクション (c)William Eadon


 自らの肌身感覚でサイズ感や着心地を知る女性デザイナーがウィメンズのデザインを手掛けるのは理にかなっている。女性同士の視線を気にする傾向が強まるなか、同じ女性ならではの意識を共有する作風は、説得力が増す。ライフスタイルやシーンに合った着こなしを理解している女性デザイナーが同性に向けて提案する装いは現実味がある。


 そもそも、着たい服が見付からず、本当に自分が欲しい服を求めてファッションの道に進んだ女性デザイナーが多く、「リアルクローズ」という言葉が広まる前から、「リアル」はNYモードの合い言葉となっている。着ていくシーンやミックスコーディネートのバリエーションに目配りが行き届いている点も、自分スタイルの着こなしが好まれるNYで女性デザイナーが受け入れられる下地となっているようだ。


(文・写真:ファッションジャーナリスト 宮田理江


宮田理江 - ファッションジャーナリスト -

rieface_01_01.jpg 複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスを経験後、ファッションジャーナリストへ。新聞や雑誌、テレビなど数々のメディアでコレクションのリポート、トレンドの解説などを手掛ける。コメント提供や記事執筆のほかに、企業・商品ブランディング、広告、イベント出演、セミナーなどを幅広くこなす。著書にファッション指南書『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』がある(共に学研)。
 http://fashionbible.cocolog-nifty.com/blog/

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