【パリの寄り道】サン・ルイ島 アイスクリーム屋の歴史

Berthillon(ベルティヨン) Image by Kaoru URATA
Berthillon(ベルティヨン)
Image by: Kaoru URATA

 9月に入り、残暑厳しい中、初秋を待ち望むか、夏の延長をもう少し堪能したいか、気持ちは様々であろう。セーヌ川沿いが、砂浜となるイベント「パリ・プラージュ」も終わり、新学期が始まる頃、気を引きしめなくてはいけないと思いながら、ついつい寄り道をしていたい。どうも、いつもの癖が抜けないようだ。(取材・文・写真:Kaoru URATA)


 ガイドブックにも必ず、記されているパリのアイスクリーム屋は、サン・ルイ島に集中する。絶好のロケーションとも言えるサン・ルイ島へは、ノートルダム寺院を見学した後、歩いていると無意識のうちに到着してしまう。軒並み、カフェ、レストラン、そしてアイスを看板を目にするから、「アイスクリーム」街であることは直感的に感じるだろう。店が集中していると、どこのアイスクリームが美味しいのか、迷ってしまう。

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 しかし、よく観察してみると、Berthillon(ベルティヨン)という名前が頻繁に見受けられる。

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 それもそのはず、ベルティヨンが存在しなければ、今日の散歩はなかったかもしれない。現在、5代目のベルティヨン家は、初代が、カフェ・ホテルを経営しており、「自家製アイスクリーム」をつくるようになり、それが一躍有名になったことが発端にある。牛乳、卵や生クリームといった原材料へのこだわりも然り、エキゾチックな味覚や果実だけのシャーベットなど、アイディアを膨らませていった。1954年に創業して以来、現在では、直売と並行に、飲食業会にも卸売りをする。パリ市内と近郊の140店舗のカフェ、レストラン、高級食材店などでも試食し、購入できる。

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 こうして、サン・ルイ島のカフェやレストランは、ベルティヨンのアイスクリームで客を魅了しているのかもしれない。大半の店先には、路面でアイスクリームだけを販売するコーナーを設けており、天気が良い日は、日夜、行列ができている。ベルティヨン本家は、7月末から9月初旬まで夏期休業をとれる身分である。こうした点も、フランスらしくていいかもしれない。むろん、その期間に設備工事をしているようだが、本家の在庫を全て他で販売しているのだから、左団扇の商いであることは間違いないだろう。

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 そんなことをあれこれと考えていると、「さあ、次のお客さん」と声を掛けられ、どのフレーバーにしようかと、まだ決定できずにいる。季節の果物のシャーベットか、定番のビターチョコレートかバニラにしようかと取捨選択に迫られる。

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 ノートルダム寺院をバックに、セーヌ川の流れを見つめるのも、橋柵につながれた「縁結び」錠の数と恋愛について想いふけるのも、大道芸人や音楽家のパフォーマンスを見るのも、やっぱり、ベルティヨンのアイスクリームが伴奏してくれるからいいのだと、今日もうなづいてしまう。

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■ベルティヨン
 http://www.berthillon.fr




(取材・文・写真:Kaoru URATA)


浦田 薫 - パリ在住ジャーナリスト -

kaoru_urata_m02.jpg建築とデザインに情熱を抱き、好奇心の旺盛さに寄り道が多い筆者は、多国籍文化の中で生活する、東京生まれのパリ育ち。デザインコンサルタント、企画プロデュース、翻訳・通訳も並行にしながら、異なる文化や言語の渦中で観察を続ける日々を過ごす。本サイトでは、環境に応じて人間が役割を与えて誕生する、空間、もの、出来事について読者と意見を交換していきたいと思う。

【連載】パリの寄り道
第1回 蚤の市とフィリップ・スタルクのカフェ
第2回 塩味ゴーフルは夏の味 マドレーヌ広場のカフェへ
第3回 ヴェルサイユ散歩その1〜モニュメント・カフェ編〜
第4回 ヴェルサイユ散歩その2〜香りの中庭 編〜

第5回 フランス人が好む牡蠣と夕日を求めてル・サン・バルトへ
第6回 プロヴァンス夏の風物詩 ラベンダーのカーペット

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