吉沢亮＆黒川想矢 「グルーヴ コレクション」撮影アフタートーク
一回り以上の年齢差で、同じ人物の過去と未来を演じるという役者ならではの縁で結ばれた二人。撮影を通じて、自分自身の過去と未来に目を向け、お互いへの想いが交錯する。「人生の旅」をテーマに語り合う二人は、決して多弁ではないものの、誠実に向き合い、穏やかに会話を繰り広げた。
──撮影お疲れ様でした！共演作の公開後、舞台挨拶や映画祭などで会う機会は多かったと思います。普段は二人でどんな話をしていますか？
吉沢：実は二人だけで一緒にいる時間は、そこまで多くないんです。
黒川：映画の撮影中は同じシーンは無かったですが、歌舞伎のお稽古の合宿でご一緒させていただきました。僕からは、色々聞きたいなぁと考えすぎてしまって、結局すごくくだらないことを聞いてしまったりします。
吉沢：そうなんだ（笑）。でも本当に日常的な穏やかな会話ですよ。「学校どうなの？」とか。自分の学生時代と全然違うから、「マジで？」みたいなこともあって、現代を勉強させてもらっています。
──一回り以上歳が離れているお二人ですが、お互いから学んだことはありますか？
吉沢：すでに黒川くんは本当に素晴らしい俳優さんですから、僕からは特にないよね？
黒川：恐縮すぎます......。直接、何かを質問したりするのではなくて、見たり、聞いたりして、吸収することだらけでした。勝手にずっと見てました（笑）。
吉沢：そうだったの？
黒川：韓国での舞台挨拶で「人間の一番美しい姿、美しい場面はどんなところか」という質問があって、その時の吉沢さんの回答をすごく覚えているんです。「無心で、心がそこにない、何も考えていないような意識の下で、何かしている時が美しい」と話していて。すべてを理解できたわけではないんですが、その言葉が、すっと入ってきて、素敵だなと思いました。
吉沢：ありがとうございます（笑）。そんなに聞かれてたと思うと、小っ恥ずかしいですね。海外の質疑応答は日本と違った角度や深さの質問があるので、「おっとそうきたか」と緊張しますけど、それが楽しくもあるんです。
黒川：吉沢さんのそういう対応を見て、聞いて、「あ、自分は何も考えられてないんだな、演技する時に」って思ったんです。そんなふうに考えられるようになりたいなと。
吉沢：ちゃんと回答した甲斐があって良かったです。黒川くんはすごく誠実な人間だなって思うんです。それこそ、韓国の舞台挨拶や授賞式*の時もそうでした。僕もなんて言ったらいいか分からないのですが、簡単な言葉で説明しようとせずに、自分の中にある言葉を探しながら伝えようとしてるんだなと。大人だって難しいテーマや内容であっても、きちんと向き合って、対応しているっていうのが、素敵だなと思いました。僕もそんな姿勢を見習いたいです。
*第30回釜山国際映画祭
*第17回TAMA映画賞 吉沢は最優秀男優賞を受賞、黒川は最優秀新進男優賞を受賞した
──今年は特に映画祭や舞台挨拶での移動も多かったのではないでしょうか。ロケや旅先に「これだけはもって行く物」のような、こだわりはありますか？
吉沢：こだわりが本当に無くて、荷物は少ない方かもしれません。海外での仕事でも、財布とパスポートに、Tシャツとパンツと靴下の替えがあれば十分だと思うタイプ。だから、リモワみたいに軽いスーツケースの方が扱いやすくて好きです。そういえば、スマホのケースもリモワを使っています。
黒川：身軽に移動できるのも、かっこいいなって思いました。僕は真逆で、身近なものを何でも詰め込んじゃうんです。枕とか、時計とか、シャンプーとか日常的なものを持って行きます。あとは、絶対に使わないのに学校の教科書とかも。落ち着くためにと言うと良く聞こえるかもしれないんですが、さっと移動できるようになりたいです。
吉沢：日常と変わらずにいるためのものって考えたら、シャンプーは僕も持って行く時ありますね。
──撮影では自分の“未来”や“過去”について、言葉を紡いでいただきました。今のお互いに言葉をかけるとしたら？
*吉沢のデビューは15歳、現在31歳。黒川のデビューは5歳、現在16歳。二人は15歳差
吉沢：黒川くんはもうベテランなので、今のままで素晴らしいです。そのまんまで、いい大人になってください、と思います。感性も、自分の言葉で表現しようとする姿勢も、もちろんお芝居もいいものをすでに持っているじゃないですか。そのまま、伸び伸びと成長したら、すごい俳優になるんだろうなと思います。
黒川：なんて言ったらいいか分からないくらい、嬉しいです。そうなれるように精進します。僕から吉沢さんに伝えたいこと...たくさんありすぎて難しいですね。
吉沢：特にないってことなんじゃないか？（笑）。
黒川：そういうことではないですよ！多すぎてまとまらないんです......。いつもたくさんの国を飛び回っていらっしゃるし、お忙しいと思うので、体調に気をつけていただいて、健康でいてくださったら、僕からは何も......。
吉沢：ありがとうございます。君もね。
──最後に、役者はさまざまな役に変わり続ける仕事ですが、お二人がこれからの人生で時が経っても変わらずにいたいことを教えていただけますか。
吉沢：お芝居を楽しむ気持ちはなくなって欲しくないと思います。これから何十年やっていくってなった時に、“慣れ”てしまいたくないなと。どんな作品でも毎回、緊張する自分でありたいです。
黒川：僕は、周りの方々が「そのままでいいよ」って言ってくださるのに対して、「そのままじゃダメだ」って思っていたんです。でも、ある人が「変わらないために、変わり続ければいいんだよ」と言ってくださって腑に落ちたんです。そんな気持ちを大切にし続けたいので、だからこそ変わり続けようって、今は思っています。
吉沢：キャッチコピーみたいにいい言葉だね。僕も覚えておきます。
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■吉沢亮
1994年2月1日生まれ、東京都出身。映画「キングダム」の演技が高く評価され、第43回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞などを受賞。NHK連続テレビ小説「なつぞら」、NHK大河ドラマ「青天を衝け」、「東京リベンジャーズ」シリーズ、「ババンババンバンバンパイア」など、NHK作品から漫画原作の実写化まで多岐にわたり出演。TAMA映画賞では第16、17回の2年連続で最優秀男優賞を受賞し、第50回報知映画賞では主演男優賞を受賞。NHK連続テレビ小説「ばけばけ」に錦織友一役で出演中。
■黒川想矢
2009年12月5日生まれ、埼玉県出身。5歳で芸能活動を開始する。2021年のNHK BS時代劇「剣樹抄～光圀公と俺～」で了助役を務め、2023年に公開された映画「怪物」（是枝裕和監督）での麦野湊役が高く評価され、日本アカデミー賞新人俳優賞など多数の賞を受賞。映画「国宝」では、吉沢亮扮する主人公・立花喜久雄の少年時代を演じ、第17回TAMA映画賞で最優秀新進男優賞を受賞。
photography: Osamu Yokonami, film Director: Shunsuke Nakamura, director of photography: Seiya Uehara, 1st assistant camera: Yugo Shinomiya, production team: Kioshi Walter, gaffer: Hajime Ogura, lighting assistant: Chinatsu Takeda, music: “time space” by haruka nakamura, location service: Hiroshi Tsuchida (TOKYU BUS), transportation: Hayato Sato (NASH), (Ryo Yoshizawa)styling: Kentaro Okamoto, hair & make-up: Masanori Kobayashi, (Soya Kurokawa) styling: Masaaki Ida, hair & make-up: Moeka Kanehara | creative director: Hideya Yokoi, text & edit: Manami Hirahara, casting director: Kim Soogyong, producer: Tomoya Sasaki（FASHIONSNAP）
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